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「利用者さんのために、手伝わない勇気」──ソーシャルワーカーが陥りやすい支援の落とし穴

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利用者さんのためなら何でもするゾ!

ちょっと待って、その支援ほんとに必要?

「利用者さんが困ってるんだから助けなきゃ!」
「喜んでもらえることをするのがいちばん大事!」
「患者さんを助けるのが私の仕事!」

──福祉の現場では、こうした思いで働く人が本当に多いです。
私自身も、現場に入ったばかりの頃はそうでした。

たとえば、「自分で着替えられる利用者さんだけど、頼まれたから手伝ってあげよう」という衝動。
一見、優しさに見えますが、実はこれが落とし穴になります。

筆者:ぱーぱす(社会福祉士・精神保健福祉士)
自治体で働くソーシャルワーカー。児童相談所などでの実務経験をもとに発信。
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手伝いすぎると、何が起きるか

なんでも手伝っていると、次のような結果を招くことがあります。

  • 利用者・患者さんのできることが減る
  • 依存的になってしまう
  • 何でも頼る人になってしまう
  • 断ると暴言や暴力につながることがある
  • 結果として「困った人」をつくってしまう

私たちソーシャルワーカーは、「人の役に立ちたい」「喜んでもらいたい」という思いが人一倍強い職業です。
しかし、その思いのままに動くと、本人の力を奪ってしまうことがあるのです。

「つい手助けしてしまう理由5つ」――理由を知ることが第一歩

では、なぜ私たちは「できること」まで手伝ってしまうのか。
私の経験から、その5つの理由を整理します。

できることの把握が難しいから

そもそも「どこまで本人ができるか」を正確に把握するのは難しいです。
特に、病気や障がいのある方を前にすると、
「助けてあげないと悪い気がする」という心理が働きます。

しかし、適切な支援には知識が不可欠です。
疾患の特性やADL(Activities of Daily Living)など、生活機能の理解が必要です。

とはいえ、それを確実に把握するのは容易ではありません。
結果、判断が難しいまま「全部助ける」方向に動いてしまうのです。

ソーシャルワーカー自身に“欠落感”があるから

「支援者の欠落感」と私は呼んでいます。

多くのソーシャルワーカーは「人の役に立ちたい」という純粋な動機でこの仕事を選びます。
その一方で、「ちゃんと支援できているのか」不安を感じやすい。
すると、助けたり代わりに行動したりすることで、
支援している実感”を得ようとしてしまうのです。

でもそれは、利用者ではなく自分の安心のための支援です。
支援の主語が「私」になってしまう。
ここに気づくことが、プロとしての第一歩だと思います。

代わりにする方が早くてラクだから

支援者が代わりにやってしまえば、たしかに早いです。
たとえば、着替えに5分かかる利用者さん。
手伝えば1分で終わります。

でもその5分を待てるかどうかが問われます。
忙しい現場では、つい「早く終わらせる」ことを優先してしまいがちです。

代わりにするのはラクです。分析も計画もいらない。
ただしそれは、支援者の都合による支援です。
「この支援は、自分のためじゃないか?」
そう自問できるかどうかが分かれ目です。

支援しないと苦情になるかもしれないから

「お願いを断る勇気」が必要な場面もあります。
しかし、断るときには説明責任が伴います。

「信頼してたのに、どうして助けてくれないの?」

こう言われると、たじろぐソーシャルワーカーも多いでしょう。
どれだけ丁寧に説明しても、
「要は、やりたくないんでしょ?」と誤解されることもあります。

特に、過去に“なんでも助けてくれる支援”を受けていた利用者の場合、
「前はしてくれたのに」となり、トラブルや苦情に発展することもあります。
私自身、そうした経験を何度かしてきました。

だからこそ、支援方針をチームで共有することが大切です。

「支援者と被支援者」という関係性が影響している

福祉の現場では、当然「支援する側」「支援される側」という構造があります。
この関係が、“助ける=正しいこと”という思い込みを生みやすいのです。

「支援する仕事なのに、支援しないなんて悪いことでは?」
そんな罪悪感にとらわれる支援者も少なくありません。

でも、本来の支援とは、
“自立を促すこと”であり、“依存を助長すること”ではありません。
「手伝わないことが支援になる」場合もあると知っておくことが大切です。

結論:「手伝わない支援」は、自己覚知から始まる

結局のところ、最も大切なのは自己覚知です。
自分がどんな時に「助けたくなるか」「手を出してしまうか」を知ること。

医師が薬の作用・副作用を理解して使うように、
ソーシャルワーカーも自分の“作用と副作用”を理解する必要があります。

その第一歩として、こちらの記事も参考になるはずです👇

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