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児童相談所の一時保護とは?【児童福祉司の職務解説】

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一時保護って実際どうなん?

児童福祉司視点で解説しましょう。

こんにちは!社会福祉士・精神保健福祉士のぱーぱすです。

今回は、なかなか複雑そうな一時保護について、児童相談所での児童福祉司経験をもとに解説していきます。

児童福祉司はいわゆる「ケースワーカー」です。世間的な児童相談所のイメージ通りの仕事をする立場とも言えます。

保護者と連絡をとったり、家庭訪問をしたり、子どもと面談をしたり、関係機関と連絡したりといった感じですね。

さて、まず一時保護は行政処分です。

行政処分とは、法律の定めにしたがって、行政庁が国民の権利や義務に直接影響を及ぼすことなのですが、一方的に行う特性があります。私たちに身近なのは、運転免許の停止や取消ですね(汗)

なので、行政処分である一時保護にも一方的な特性があります。ゆえに、保護者さんの立場では「拉致」「誘拐」と受け取られることもあります。

自分の身に覚えのないことで子どもが連れていかれたとしたら、どうでしょうか?

保護者さんとしては拉致や誘拐と変わらないわけですね。強烈なストレスや不安でしかありません。これは当然のことだと思います。

児童相談所にとってみても、何の理由もなく、何の権限もなく、人の子どもを特定の場所に連れて行けば、それは確かに拉致であり、誘拐に他ならないでしょう。

だからこそ、しっかりとしたプロセスを経ないといけないわけです。

さて、今回はこの一時保護のしくみについて、概要を解説していきます。ではまいりましょう!

児童相談所の一時保護とは?【児童福祉司の職務解説】

児童相談所の一時保護判断までの流れ

一時保護の判断は慎重に行われます。一時保護の要否の判断までの流れはこのようになっています。

引用元:厚生労働省HP 子ども虐待対応の手引き 図5-1 子ども虐待対応・アセスメントフローチャート

※現在は一時保護の判断は児童相談所が単独で行いますが、ここに司法審査を介入させる動向がありますね。そうなればこのフローチャートも訂正されることでしょう。

一時保護等の司法審査に関するワーキンググループ(第4回) 資料

一時保護の開始判断にはアセスメントシートが使われる

一時保護の判断は、児童福祉司個人がするものではありませんし、できません。

児童相談所はアセスメントシートをつかって、一時保護が必要かどうかを判断していきます。アセスメントシートは一般公開されていまして、こちらです。

緊急受理会議などで、こうしたシートが活用されるわけです。

ただ、見ていただくとわかるのですけど、正確な情報がないと判断がつきにくいんですよね。YESでもNOでもなくて「不明」ということもあるわけです。

なので、児童相談所はこれと同時並行で、正確な情報をあつめるべく市町村役場や保健センター、保育園や幼稚園、学校などに連絡をとります。

もちろん、子ども本人への面接を行いますし、できる限り事前に保護者にも面接をすることになっています。

一時保護開始への司法関与が検討されている

現行では、一時保護開始の判断は児童相談所が単独で行えることになっています。

でも、いかに慎重に判断するといっても、一時保護は子どもに大きな影響を与える可能性があります。それに、保護者への制限でもあります。

関係者の意思に反して行う強制的な制度は、通常は裁判所の判断を必要とするが、児童福祉法の一時保護については裁判所の事前事後の許可も不要である。このような強力な行政権限を認めた制度は、諸外国の虐待に関する制度としても珍しく、日本にも類似の制度は見当たらない。
引用元:厚生労働省HP 児童相談所運営指針第5章 一時保護

児童相談所においてどのように判断されているのか、透明性は必要でしょう。

そこで、厚生労働省の検討会は、裁判所などが一時保護開始の判断を審査する新たな制度を導入すべきと言ってるんですね。

虐待の子の「一時保護」 司法審査の導入を提言 厚労省検討会 | NHKニュース
【NHK】虐待などを受けた子どもを児童相談所の判断で保護者から引き離す「一時保護」について、厚生労働省の検討会は、手続きの透明性を…

私は、司法が関与することには賛成です。ただ、明らかな危険がわかっている時などのように差し迫ったとき、スピーディーに裁判所が判断できるのか気がかりです。

「裁判所が判断するまでは自宅に子どもを返すしかない」となれば、その間に命が奪われてしまいかねません。

間違った判断は有害ですが、スピーディな判断ができないのもまた有害でしょう。

スピーディかつ正確な判断の必要な一時保護。新たな仕組みがどのようになるのか、注目しています。

子どもと保護者の同意を得る(例外あり)

児童相談所の行う一時保護は、子どもからも保護者からも同意を得ることになっています。

これが原則なのですが、例外的に、双方の同意がなくても児童相談所は一時保護できることになっています。例外についてはこちらで明記されています。

一時保護は原則として子どもや保護者の同意を得て行う必要があるが、子どもをそのまま放置することが子どもの福祉を害すると認められる場合には、この限りでない。
引用元:厚生労働省HP 児童相談所運営指針第5章 一時保護

実際、急迫した場面で一時保護をする場合は、子どもは同意しても、保護者の同意まで得るのは相当難しいものです。

なので実態としては、まずは一時保護して子どもの安全を確保してから、児童福祉司が保護者へ連絡することがよくあるのです。

一時保護は何のため?

一時保護は、保護者にたいして「あなたがやったのでしょう?」と断罪するためではなく、「あなたの子育ては間違っている!」と責めるためでもありません。

今のままでは子どもが安全とは言えない」という子どもにとっての危険性の解消が目的なんですね。これが児童相談所や児童福祉司の立場です。

でも、一時保護された保護者さんにとっては、自分の子育てや自分自身を否定されたように感じられる出来事なので、一度言っただけではなかなか伝わらないことが多いです。繰り返しお伝えすることが必要な場合は多いです。

一時保護が決定したらどうなる?

一時保護所への入所日

一部ですが、子どもが一時保護所に入所するときには、このようなことが行われます。

  • 子どもの健康・身体状況チェック(衣類で隠れたところは、着替えや入浴、身体検査や医学診断の時などに)
  • アレルギーの有無確認
  • 虐待状況となる場合は写真などを遺す(ケガなど)
  • 性的虐待を受けた子で、妊娠・性病の疑いがある場合は、産婦人科を早急に受診する。

基本的には、入所する当日に行うことになります。

一時保護になると、一時保護所は食事や部屋の用意などでバタバタしますし、児童福祉司もいろんなところへ調整・調査の連絡をとるのでやはり慌ただしくなります。

一時保護の場所は伝える(例外あり)

原則、児童相談所は一時保護している子どもの場所を保護者に伝えます。けれど、例外的に伝えない場合があります。

保護者に対し当該児童の住所又は居所を明らかにしたとすれば、当該保護者が当該児童を連れ戻すおそれがある等再び児童虐待が行われるおそれがあり、又は当該児童の保護に支障をきたすと認めるときは、児童相談所長は、当該保護者に対し、当該児童の住所又は居所を明らかにしない
児童虐待防止法第十二条第三項より抜粋

つまり、子どもを連れ戻そうと強行的な行動をとられるかもしれないとか、その他特別な理由があるときは、居場所は伝えないことになっています。

一時保護中の勉強はどうなる?

学校と児童福祉司が連絡をとり、教材などを一時保護所に送ってもらったり、直接届けてもらうことがあります。

現状では、原則、一時保護中は登校できないことになっています。

登校中に連れ去られるおそれがあったり、一時保護場所が広まってしまうおそれがあるなど、子どもの安全を児童相談所の責務として守り切れなくなることが考えられます。

「学校欠席が続いたらまずいんじゃないの?」と思いますが、学校出席のとりあつかいについては、文部科学省がちゃんと対応をしめしています。

(別紙1)一時保護等が行われている児童生徒の指導要録に係る適切な対応等について:文部科学省

保護者との面会はどうなる?

面会の可否はケースバイケースです。児童相談所で協議されて決まります。

保護者と面会することが、子どもにとってプラスなのか、マイナスなのかがポイントになります。子ども虐待対応の手引き 第5章では、なかなか具体的に示されています。

面会の適否の判断材料
ア.  子どもの側の判断材料
(ア)  子どもの感情や意思
子どもの保護者に対する感情や意向を確認する。子どもは保護者の虐待行為により恐怖感や拒否感がある。不安解消の認められない時期の面会は時期尚早と判断する。
(イ)  児童福祉司、心理職員による保護者と子どもとの面接内容
(ウ)  一時保護所の児童指導員、保育士と子どもとの面接内容
(エ)  一時保護所における行動観察
掃除、食事、遊び、入浴等は保護者の子どもに対する関わり方を具体的に知る機会となるため、留意して行動観察する。
特に、子どもは保護者との虐待的人間関係を再現するため、一時保護所の職員に対して暴言を吐いたり、反抗的な態度をとったりする場合がある。また、子ども集団では支配・服従の力関係に敏感に反応してトラブルメーカーとなったりする。
(オ)  子どもの描く家族画、作文や日記等の保護者像を参考にする。また、類似した体験を有する子ども同士の会話は自然と本音を漏らすこともある。
イ.  保護者側の判断材料
(ア)  児童福祉司との信頼関係(ラポール)が樹立されており、面会の回数、制限の範囲等を説明して理解が得られる場合はプラス材料となる。
(イ)  保護者自身、虐待行為を認めるとともに、子どもとの関わりに葛藤、不安を訴えており、親子関係を修復したいと児童相談所の指導に応じる場合はプラス材料となる。
(ウ)  保護者が児童福祉司等の説得を受け入れず、強引な面会要求および引取要求のある場合、面会は制限あるいは拒否する。
(エ)  保護者の優柔不断な態度や精神的不安定が認められる場合、子どもの精神的な動揺が大きくなるため、面会は制限する。また、飲酒、酩酊状態の面会は拒否する。

「制限する」「拒否する」等と明確に書かれているのに、個人的には驚きますね。

きっと、「保護者と面会するのは良いに決まってるんじゃないか?」と思う方もいるでしょうけれど、そうとも限らないのが実際です。

虐待された子どもには、精神的な不安定さや怯え、不安などがよく見られるので、慎重に判断することになります。

もちろん、面会すらできないとなれば、保護者にとっては不満や怒りを感じるのが自然なことです。面会を禁止とする場合、児童相談所は手引きをもとに理由説明をすることが大切になります。

手紙ならいい?

「面会ができないなら、せめて手紙だけでもダメなのか?」ということもあります。

手紙の可否も、面会と同じでケースバイケースです。面会とは「直接会うか会わないか」が違うだけで、保護者からなんらかの影響を子どもに与えることになるからです。

保護者が面会を強引に要求したらどうなる?

例えば、保護者が強引に児童相談所に行ったり、刃物などをつかって職員を威嚇するといったことがあります。

これは、児童福祉法第33条の2に定められた、児童相談所長の監護措置を不当に妨げる行為にあたります。「監護」というのはカンタンにいうと、面倒をみることですね。

② 児童相談所長は、一時保護が行われた児童で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護、教育及び懲戒に関し、その児童の福祉のため必要な措置を採ることができる。ただし、体罰を加えることはできない。
③ 前項の児童の親権を行う者又は未成年後見人は、同項の規定による措置を不当に妨げてはならない。
児童福祉法 第三十三条の二より抜粋

「強引に面会要求すれば通るわけではない」ということですし、児童相談所としては子ども虐待対応の手引き 第5章でしめされているとおり、強引な面会要求をする保護者との面会は制限するか拒否することになります。強引に迫っても良いことは無いということです。

一時保護の期間は?いつ解除される?

原則、2か月以内となっています。

前二項の規定による一時保護の期間は、当該一時保護を開始した日から二月を超えてはならない。
児童福祉法第33条第3項より抜粋

一時保護となった時点で「いつになったら子どもは帰ってきますか?」と気にする保護者の方は多いです。目安としては2か月以内と言えるわけですが、実際はほんとうにケースバイケースです。

実際、1日だけ一時保護所に泊まって帰る子どももいます。(これはほんとうに軽微な場合というのがほとんどです)

でも、2か月以内が原則ということは”例外”もあるわけです。2か月を超えるには一時保護を解除できない何らかの理由があるわけです。一時保護の延長が必要な場合の例としては、以下のようなパターンがあります。

[1]  家庭裁判所に対し審判を申し立てており、決定が直ちに得られそうにない場合。
[2]  施設入所の方向であるが、当面の医療的なケアのために入院あるいは継続した通院が必要であるが、施設へは医療的なケアが必要な状況では入所できず、かつ、保護者のもとにはおいておけない場合。
[3]  既に親権者間等で親権者指定あるいは監護者指定などの調停又は審判が起こされており、その推移を見守っている場合。
[4]  保護者へのカウンセリングが軌道に乗ったとは言い難いものの、若干の時間的余裕があれば保護者の変化が十分期待でき、そうすれば保護者、子どもともに納得した援助が進められる見込みがあり、この時点で家庭裁判所への審判申立てを留保している場合。
[5]  共同親権者の意向が一致せず、まず親権者間の調整が必要で、施設入所、家庭裁判所への審判申立て等の方針が出せない場合。
[6]  子どもは一時保護しているものの、保護者がしばしば行方不明になったり、他府県との転居を繰り返したりするため、その都度連絡が途絶えたり管轄が変わったりする場合。
[7]  共同生活を行っていた特定集団から離れた子どもを一時保護したものの、その集団自体への接近が困難で保護者等の状況が確認できず援助方針が決められない場合。
引用元:子ども虐待対応の手引き 第5章

例えば、ネグレクトのケースだと保護者との連絡が途絶えたりしがちで、2か月を超えることが多いのが実感ですね。

また、一時保護を解除して家庭復帰するのが良いかどうかを判断するためのチェックリストを厚生労働省が公開しています。なかなか具体的なチェックリストです。

ただ、この書式が援助方針会議などで使われているかどうかは、児童相談所によると思います。もし使われていない場合でも、児童相談所内で協議のポイントになるのはチェックリストにある項目が基本と言えるでしょう。

一時保護の解除後は?

一時保護を解除したあとも、何らかの支援を行うのが通常です。それは児童相談所かもしれないし、市町村の家庭児童相談室かもしれないし、学校かもしれません。(あるいは全部) このあたりは、各自治体や各ケースによって違いがあるのが現実でしょう。

児童相談所は「一時保護」という強制力を行使した機関なので、たいていは保護者から嫌われていたり、緊張関係が残っていたりします。「もう来ないでください!」「一時保護されたせいで・・・」と言われることもよくあります。

これが児童相談所の使命なのですが、いち個人の心情としてはなんともツラかったりしますね。歓迎されていないところに行きたい人など、そうそういないでしょう。

それでも、「お子さんはどうですか?」と様子伺いに連絡をすることもありますし、定期的に家庭訪問することもあります。

「子どもの安心と安全が最優先」ですから、嫌われても良いし、むしろ積極的に嫌われ役を引き受けることもあるのが児童相談所・児童福祉司の仕事なんですね。

以上、児童相談所の一時保護とは?【児童福祉司の職務解説】という話題でした。

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この記事を書いた人

社会福祉士 / 精神保健福祉士
 
現場歴およそ10年
 
作業所、相談支援事業所、入所施設、児童相談所、精神科デイケアなどを経験。現在も某福祉現場で奮闘!
 
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しゃふくさん

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