児童相談所の一時保護とは?解除までの流れは?【児相経験者が解説】

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一時保護って実際どうなの?どうして保護になったんだろう?この先どうなるの?

こういった思いの方へ。

わたしは社会福祉士・精神保健福祉士で現場経験は10年以上。児童相談所で虐待対応をしてきた経験があります。

一時保護とは、児童相談所が子どもを親から離すことで、親の同意なくすることが多いです。

一時保護は法律によって決められています。これを行政処分と言います。

行政処分は、国が国民に対してすることで、例えば運転免許の取り消しなどがあります。一時保護も行政処分の一つです。

保護者さんからすると、自分の子どもがいきなり連れていかれるのは、拉致・誘拐されるようなものです。それはとてもつらくて怖いことですね。

わたし自身も、保護者さんからそうしたお怒りを受けてきた経験があります。

だから、児童相談所は子どもを離す前に、しっかりとした手順を踏まなければなりません。

今回はこの一時保護のしくみについて、解説していきます。

児童相談所の一時保護とは?【児童福祉司の職務解説】

児童相談所の一時保護判断までの流れ

一時保護するかどうかは、慎重に決められます。その流れはこんな感じです

※今は児童相談所だけで決めますが、今後は家庭裁判所も関わることになります
≫厚生労働省 一時保護等の司法審査に関するワーキンググループ(第4回)資料

一時保護の開始判断にはアセスメントシートが使われる

一時保護の判断は、児童福祉司個人がするものではありませんし、できません。

一時保護するかどうかは、アセスメントシートという表を使って判断します。この表は公開されています。見てみましょう。

この表では、子どもが危険な状況にあるかどうかをチェックします。

でも、情報が足りないこともあります。そういうときは、「不明」と書きます。

正確な情報がないと判断がつきにくいんですね。

情報を集めるために、児童相談所は市町村役場や保健センター、保育園や幼稚園、学校などに連絡します。そして、子どもや親(保護者)と話します。

一時保護開始への司法関与が検討されている

一時保護は、子どもの命や幸せを守るために必要なことです。

でも、一時保護は子どもにとって大きな変化であり、親の権利を制限することでもあります。

だから、一時保護をするかどうかは慎重に判断しなければなりません。しかし、今の制度では、児童相談所が単独で判断できてしまいます。

関係者の意思に反して行う強制的な制度は、通常は裁判所の判断を必要とするが、児童福祉法の一時保護については裁判所の事前事後の許可も不要である。このような強力な行政権限を認めた制度は、諸外国の虐待に関する制度としても珍しく、日本にも類似の制度は見当たらない。
引用元:厚生労働省HP 児童相談所運営指針第5章 一時保護

問題だと思いませんか?例えばイギリス等では、裁判所が一時保護をするかどうかを決めている例があります。
≫参考:アメリカ・イギリス・北欧における 児童虐待対応について

日本でも同じようにすべきだという意見があります。

私はその意見に賛成です。裁判所が判断することで、一時保護が適切かどうかを公平に確認できます。

それに、『児童相談所 vs 親(保護者)』という対立ではなく、子どもの安心と安全を軸にした前向きな話し合いがしやすくなると思います。

ただし、裁判所が判断するまでに時間がかかってしまったら困りますね。子どもが危険な状況にあるときは、すぐに保護しなければなりません。

もし裁判所が判断する前に子どもが亡くなってしまったら、取り返しがつきません。

だから、裁判所が早く正しく判断できるようにしなければなりません。一時保護は難しい問題です。新しい制度がどうなるのか、気になります。

子どもと保護者の同意を得る(例外あり)

一時保護をするときは、子どもや保護者に同意してもらうのが原則です。

でも、とても急いでいるときや、子どもがそのまま家にいる(帰る)と危険なときは、同意がなくても一時保護できます。

一時保護は原則として子どもや保護者の同意を得て行う必要があるが、子どもをそのまま放置することが子どもの福祉を害すると認められる場合には、この限りでない。
引用元:厚生労働省HP 児童相談所運営指針第5章 一時保護

一時保護は何のため?

一時保護をしたあとは、児童福祉司(ケースワーカー)が保護者に連絡します。

一時保護は、保護者を責めたり罰したりするためではありません。

「あなたがやったのでしょう?」「あなたの子育ては間違っている!」と責めるためではありません。

子どもが安心・安全で幸せになるためです。子どもにとっての危険性の解消が目的であり、「今のままでは子どもが安全とは言えない(わからない)」というのが課題です。

でも、一時保護された保護者さんは、自分の子育てや自分自身がダメだと思ってしまうことがあります。

なので繰り返し目的を伝えて、理解してもらおうと努めることが多いです。

一時保護決定から一時保護解除までの流れ

一時保護所への入所日

子どもが一時保護所に行くときは、こんなことをします。

  • 子どもの体のチェック(服の下も、着替えたりお風呂に入ったりするときに)
  • アレルギーがあるかどうか確認
  • 虐待でケガをしたところがあれば、写真に撮る
  • 性的虐待をされた子で、妊娠や性病の心配があれば、すぐに病院に行く

こういったことは、できればその日のうちにやります。

一時保護所は、子どもの食事や部屋などを準備したり、児童福祉司は色々な人と連絡したりするので、バタバタと忙しくなります。

一時保護の場所は伝える(例外あり)

原則は、児童相談所は子どもがどこにいるかを保護者に教えます。でも、教えないこともあります。

それは、保護者が無理やり子どもを連れて帰ろうとしたり、また虐待したりするかもしれないときや、子どもを守るのに困るようなときです。

このような場合は、法律で児童相談所は教えなくても良いことになっています。

保護者に対し当該児童の住所又は居所を明らかにしたとすれば、当該保護者が当該児童を連れ戻すおそれがある等再び児童虐待が行われるおそれがあり、又は当該児童の保護に支障をきたすと認めるときは、児童相談所長は、当該保護者に対し、当該児童の住所又は居所を明らかにしない
引用元:児童虐待防止法第十二条第三項

一時保護中の勉強はどうなる?

学校と児童相談所が話して、勉強する本などを一時保護所に送ってくれたりします。

多くの場合、一時保護中は学校に行けません

なぜなら、学校に行っている間に連れ去られたり、一時保護所の情報がばれたりする心配があるからです。

一時保護しているからには、児童相談所は責任をもって子どもの安全をしっかりと守らないといけません。

「学校を休んだら困るんじゃない?」と思うかもしれませんが、文部科学省がちゃんと対応指針を出しています。
≫参考:文部科学省 一時保護等が行われている児童生徒の指導要録に係る適切な対応等について

ただし学校に行けないデメリットはあります。

  • 学校の友だちと話したり遊んだりできない
  • 本で勉強するのはできるけど、先生やクラスメートと一緒に勉強するのとは違う
  • 学校に行けば得られたであろう経験を失う

デメリットがあるから一時保護を解除するというわけではありません。

児童相談所・児童福祉司は、対応を急ぐのです。

早く安心して暮らせるようにすること、学校に通えるようにすることを目指します。

保護者との面会はどうなる?

保護者と面会できるかどうかは、児童相談所が決めます。

面会することが、子どもにとって良いことなのか、悪いことなのかが大事です。

子ども虐待対応の手引き 第5章では、具体的に書いてあります。

要点は次のとおりです。

子どもの側 保護者の側
・保護者に対する気持ちや考え
・児童福祉司や心理職員との話し合い
・一時保護所の職員との話し合い
・一時保護所での行動
・家族画や作文などで見られる保護者への気持ち
・児童福祉司と信頼関係があるか
・虐待を認めて、親子関係を直したいと思っているか
・無理やり面会したり引き取ろうとしたりしていないか
・優柔不断・不安定な態度を見せたりしていないか
・酒を飲んだり酔ったりしていないか

「面会するのは当然だろう」と思う人もいるかもしれませんが、そうではありません。

虐待された子どもは、心が不安定だったり怖がったり不安だったりすることが多いです。だから、面会することが本当に良いかどうかをよく考える必要があります。

もちろん、面会できないとなれば、保護者は納得しなかったり怒ったりするでしょう。

面会をダメとする場合、児童相談所は手引きにしたがって理由を説明しなければなりません。

手紙はどうなの?

「面会できなくても、手紙くらいは書けるんじゃない?」ということもあるでしょう。

でも、手紙も面会と同じで、児童相談所が決めます。面会と違って「直接会わない」だけで、保護者から子どもに影響があるからです

保護者が面会を強引に要求したらどうなる?

例えば、保護者が児童相談所に行って、無理やり子どもに会おうとしたり、ナイフなどで職員をおどしたりすることがあります。

これは、児童相談所長が子どものために必要なことをするのを邪魔する行為です。児童福祉法では、このような行為はだめだと決めています。

② 児童相談所長は、一時保護が行われた児童で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護、教育及び懲戒に関し、その児童の福祉のため必要な措置を採ることができる。ただし、体罰を加えることはできない。
③ 前項の児童の親権を行う者又は未成年後見人は、同項の規定による措置を不当に妨げてはならない。
引用元:児童福祉法 第三十三条の二より抜粋

「強引に面会要求すれば通るわけではない」ということですし、児童相談所としては子ども虐待対応の手引きでしめされているとおり、

強引な面会要求をする保護者との面会は制限するか拒否することになります。強引に迫っても良いことは無いということです。

一時保護の期間は?いつ解除される?

原則、2か月以内となっています。

前二項の規定による一時保護の期間は、当該一時保護を開始した日から二月を超えてはならない。
引用元:児童福祉法第33条第3項

一時保護となった時点で「いつになったら子どもは帰ってきますか?」と気にする保護者の方は多いです。

目安としては2か月以内と言えるわけですが、実際はほんとうにケースバイケースです。

実際、1日だけ一時保護所に泊まって帰る子どももいます。これはほんとうに軽微な場合です。

でも、2か月以内が原則ということは”例外”もあるわけです。

2か月を超えるには一時保護を解除できない何らかの理由があるわけです。一時保護の延長が必要な場合の例としては、以下のようなパターンがあります。

[1]  家庭裁判所に対し審判を申し立てており、決定が直ちに得られそうにない場合。
[2]  施設入所の方向であるが、当面の医療的なケアのために入院あるいは継続した通院が必要であるが、施設へは医療的なケアが必要な状況では入所できず、かつ、保護者のもとにはおいておけない場合。
[3]  既に親権者間等で親権者指定あるいは監護者指定などの調停又は審判が起こされており、その推移を見守っている場合。
[4]  保護者へのカウンセリングが軌道に乗ったとは言い難いものの、若干の時間的余裕があれば保護者の変化が十分期待でき、そうすれば保護者、子どもともに納得した援助が進められる見込みがあり、この時点で家庭裁判所への審判申立てを留保している場合。
[5]  共同親権者の意向が一致せず、まず親権者間の調整が必要で、施設入所、家庭裁判所への審判申立て等の方針が出せない場合。
[6]  子どもは一時保護しているものの、保護者がしばしば行方不明になったり、他府県との転居を繰り返したりするため、その都度連絡が途絶えたり管轄が変わったりする場合。
[7]  共同生活を行っていた特定集団から離れた子どもを一時保護したものの、その集団自体への接近が困難で保護者等の状況が確認できず援助方針が決められない場合。
引用元:子ども虐待対応の手引き 第5章

例えば、親と連絡が取れない場合(ネグレクトのケースに多い)はもっと長くなることもあります。

一時保護が終わったら、子どもは親の元に戻るのか?それとも別の場所に行くことになるのか?

それを決めるために、厚生労働省がチェックリストを作りました。

このチェックリストには、親や子どもの状況を確認するための質問がたくさん書いてあります。例えば、「親は子どものことを大切に思っていますか?」「子どもは親のことを信頼していますか?」などです。

このチェックリストは、児童相談所が使うものです。児童相談所では、援助方針会議という会議を開いて、子どもの今後を話し合います。

この会議では、チェックリストの質問点を考慮しつつ、子どもが親の元に戻るべきかどうかを判断します。

一時保護の解除後は?

一時保護が終わっても、子どもや親にはまだ支援が必要です。

その支援は、児童相談所だけでなく、市町村や学校も行います。

でも、保護者(親)さんは児童相談所が嫌いなことが多いです。児童相談所は強制的に子どもを連れて行ったからです。

「児童相談所は二度と来ないで!」と言われることもあります。

でも、児童相談所は子どものために頑張ります。「お子さんはどうですか?」と電話したり、「家庭訪問します」と言って行ったりします。

児童相談所・児童福祉司の仕事は、『子どもの安心と安全』が一番大切だからです。

保護者(親)に嫌わるのは定め・・・。むしろ嫌われ役を引き受けることもあるんですね。

「いち早く子どもを取り戻したい」というお気持ちの親(保護者)さんは、次の記事をご覧くださいませ。

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