
普及啓発って、ほんとに意味あるのかなぁ?
福祉の仕事をしていると、「もっと社会に理解してもらいたい」と感じる場面がたくさんあります。
障害のある人や、支援を必要とする人たちが、少しでも暮らしやすくなるように――。
そのために、イベントを開いたり、講演会を企画したりする。
「普及啓発」の取り組みは、どの分野でも欠かせません。
でも実際のところ、思うように届かないことも多いですね。
せっかく苦労して準備したのに参加者は関係者ばかり。
「これ、本当に意味があるのか?」と感じたことのある人も少なくないはず。
私自身、福祉現場で同じ悩みを何度も抱えてきました。
この記事では、社会福祉士・精神保健福祉士としての経験から、
「普及啓発の目的」と、「これからの伝え方」について考えてみたいと思います。
福祉の啓発って、どうすれば届くのか?

普及啓発は、どの現場にも欠かせない取り組みです。
けれども、実際にどれほど社会に届いているのか――この問いがつきまといます。
福祉の現場では、普及啓発の取り組みとしてイベント開催や研修・講演会がよく行われます。
職業柄、私も開催に関わったり、出向いたりもします。
しかしそこに来られるのは、内輪の方々ばかり。
家族、友人、支援者など・・・関係者ばかりなんです。
そんなとき、私は思うのです。
「ネットで発信する方法も、もっと活かせるのではないか」と。
社会福祉士や精神保健福祉士の仕事は、目の前の支援だけではありません。
その人が暮らしやすい社会をつくるために、地域や一般の人に“正しい理解”を広めることも役割の一つです。
福祉現場の啓発活動の現実
私が精神障害分野で働いていた頃、法人の事業として講演会や地域イベントを開催していました。
参加者に精神疾患や障害のある人たちのことを知ってもらう。
一緒に楽しみ、差別や偏見をなくしていく。
――とても大切な取り組みです。
児童福祉の現場でも、児童養護施設がお祭りを開いて地域に開かれた場をつくることがあります。目的は同じ。
「知ってもらうこと」で差別や誤解を減らすためです。
けれども正直にいうと、効果を実感するのは難しいのが現状です。
理由は明確で、“内輪化”しやすいからです。
「誰に届けたいのか」がずれていないか
たとえば障害福祉のイベントを開いても、来場者の多くは関係者。
職員、家族、支援機関の人たち。
つまり、すでに理解のある人たちなんです。
一番伝えたいのは、まだ障害のことを知らない人たちのはずなのに。
でも、知らない人たちにとってはハードルが高い。
「施設でお祭りやってるらしい」と聞いても、わざわざ足を運ぶきっかけにはなりにくい。
結果、“内輪の祭り”で終わってしまうのが現実です。
情報を「届ける力」も福祉の力
そもそも、開催している情報すら届かない。届いていない。
ここが大きな課題だと思います。
企業がマーケティングで顧客を明確に定め、伝え方を練るのはそのためです。
福祉も同じで、「誰に」「どう伝えるか」を戦略的に考える必要があります。
けれども福祉の現場はどうしても、伝える戦略が後回しになりがちです。
ネット発信は、立派な普及啓発のひとつ

いまはSNSやブログなど、オンラインでの発信が簡単にできる時代です。
X(旧Twitter)やFacebook、Instagramなどは拡散性が高く、関心層に届きやすい。
私自身、このブログでの情報発信をひとつの普及啓発と捉えています。
なぜなら、ネットの世界では反応が数値として“残る”からです。
イベントでも来場者数や滞在時間を把握することはできます。
ただ、そこでどんな理解や気づきが生まれたのかまでは追いにくい。
アンケートをとるのは苦労するうえ、”関係者が気遣ってくれている感想”を読んでも自己満足になりがちです。
一方でネット発信は、アクセス数や滞在時間、クリックの流れなど、
「どんな内容に関心が集まったのか」までカンタンに把握できる。
後から分析し、改善につなげることができるのが大きな違いです。
福祉の現場では、支援の効果を数値で測りにくいことが多いからこそ、
この“手応えを見える化できる場”としてのネット発信は、私にとって貴重な学びのフィールドになっています。
数字で見える「反応」が教えてくれること
たとえば児童福祉司として働いていると、一時保護の判断が正しかったかどうかを「正解」「不正解」で測ることはできません。
現実は一度きりで、比較対象が存在しないからです。
そうした“答えのない支援”の世界にいるからこそ、
反応が数値で見えるネットの世界は、ある意味で新鮮で、手応えを感じやすい場です。
そこに嘘や気遣いはありません。結果がダイレクトに表れる。
この点に、私は何度も救われています。
「諦めずブログ書けよ」と。
「発信」もまた責任を伴う
私のブログでは、社会福祉士や精神保健福祉士、児童福祉司などについて多くの記事を公開しています。
特に児童福祉司や一時保護に関する記事は、多くの読者さんが検索から訪れています。
なかには、実際に児童相談所と関わっている保護者の方もいます。
だからこそ、発信には責任が伴います。
よく読んでいただくということは、影響があるということ。
正しい情報を届ける努力を怠れば、善意のつもりが誤解を広めることにもなりかねません。
「しんどい」を越えて、自分に合った方法で
福祉の啓発は使命でもありますが、自己犠牲だけで続けるものではないと思っています。
自己犠牲が多いことと、成果があることは別問題です。
福祉の世界では、「苦労している=価値がある」という発想に陥りやすい。
「しんどいけど、やっているから尊い」ではなく、
冷静に「時間や労力に見合った効果があるか?」をみる視点ももつこと。
いわゆるコスパやタイパも、普及啓発の効果を高めるうえで大切な視点ではないでしょうか?
費用対効果、時間対効果を厳しくを捉えるのです。
ぶっちゃけ、私は大規模イベントの運営は得意ではありません。
SNS発信も得意ではありません。
だからこそ、自分の好きなやり方――つまりブログを書く(打つ)ことで、社会に伝える方法を選びました。
あなたの得意を、普及啓発の方法に

普及啓発の方法は、人によって千差万別。
話すのが得意な人、絵で伝える人、SNSで発信する人、データで整理する人。
どんな形でも、「誰かの理解を少し深める」行為はすべて啓発です。
向いていない方法に無理して合わせるより、
自分の得意や関心を活かして発信することが、結果的に続く啓発になります。
私のやり方がすべてではありません。
でも、それぞれの方法で“誰かの気づき”を生むことができたら。
それが、福祉におけるこれからの普及啓発の方法だと感じています。
まとめ
この記事でお伝えしたかったのは、次のことです。
- 福祉の啓発は「イベント=正解」ではない
- 伝えたい相手を明確にし、届く方法を考えよう
- ネット発信も立派な普及啓発の手段だが、発信には責任が伴う
- あなたの得意・好きな普及啓発の方法こそ、続けられる形
福祉の普及啓発は、イベントや講演だけではありません。
「どう伝えるか」を考えること自体が、すでに啓発の一歩。
自分に合った方法で続けていくことが、社会を少しずつ変えていきます。
未熟な者が偉そうなことを申してきましたが、どうかご勘弁ください。
ともにやっていきましょう。それではまた!
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