ソーシャルワーカー(社会福祉士や精神保健福祉士)として、やりがいをもって働きたい。人も自分も幸せになる仕事がしたいなぁ!
このような思いの方へ。あなたが私と同じ失敗をしないように。私の経験をふまえて、この記事を書くことにしました。
失敗とは、『クライエント(支援対象の人たち)を軽んじる言葉を吐いて、支援対象の人たちを軽んじる仕事をしてしまい、やりがいを失う』ということです。
したがってあなたには、クライエント(支援対象の人たち)を尊重する言葉を使って、クライエントを尊重する人となり、やりがいを得てほしいと思います。
この記事は、激務・過酷といわれる児童相談所で、私が児童福祉司(ケースワーカー)の仕事にやりがいを見出だした経験からいえることでもあります。
仕事では、心に思ったこと、やりきれない思いを吐かざるを得ないときはあると思います。それは、あなたの健康を保つのに大切です。
しかし、日常的にクライエントを軽んじる言葉を使っていると、いつの間にか、あなた自身がそうした人間に変わってしまいますから、言葉は慎重に選んでください。
なお、前回記事で『5つの指南』をしており、今回はその続編のような話です。まだまだ偉そうにいえる立場ではありませんが、約12年の経験をもとにアドバイスしております。
今回も少々、長くなりますが、おつきあいくださいね!
社会福祉士・精神保健福祉士のあなたへ|やりがい迷子にならない言葉選び
私たちは『自分の使う言葉通りの人間』に変わっていく
これからソーシャルワーカー(社会福祉士や精神保健福祉士)になる人は、『自分の使う言葉』を、どうか慎重に選んでください。
自分の使う言葉の通りの人間に変わっていくからです。
例えば、クライエントを笑いものにしていると、そのような関わり方をするようになっていきます。
クライエントは、あなたの働く分野によって違いますね。例えば、
- 児童福祉分野 → 子どものこと
- 障害福祉分野 → 障害のある方のこと
- 医療機関 → 患者さんのこと
このように。かれらのご家族も含むこともあるでしょう。
上記の方々を笑いものにすることは、社会福祉士や精神保健福祉士が最も大切にしなければならない存在を、軽んじることと同義です。
「倫理的にダメ」とか「専門職として良くない」と説きたいのではありません。
私が心配しているのは、あなたが次第に「何をめざして仕事をしているかわからない状態」になり、やりがいを失っていくことです。
たとえ事務所の中でも、職員同士の会話であっても、ご本人が耳にしていなくても・・・
クライエントを馬鹿にする言葉、笑いものにする発言、人格を否定するような言葉は、使わないようにしてほしいのです。
「冗談なら良いんじゃない?」という意見もあるでしょうが、冗談でも悪い影響があります。
なぜなら、私たちの脳はとてもシンプルだからです。私たちは冗談と思って吐いた言葉でも、脳は大マジメに受けとってしまうのです。
アセスメントにおいて「弱みに目をつむれ」という話ではありません。強みだけをみて、弱みに目を向けないことは、見立てを間違い、支援を間違います。事実は正確に見立てていきましょうね。
私たちの脳は「自分の吐いた言葉」をフィルター無しで聞いている
脳は複雑な仕組みに思われますが、とてもシンプルでもあります。だから、「自分の脳は、すべての言葉をフィルター無しで受けとっている」と考えたほうが良いです。
例えば、「アホ」「バカ」という言葉を発すれば、相手のみならず自分も「アホ」「バカ」と耳にします。私たちが発言した言葉は、音となって耳から私たちの脳へと届きますね。
『きこえた言葉から、良い言葉だけうけとり、悪い言葉はうけとらない。』
このようにできれば良いのですが、意識的に選択するのはカンタンではありません。悪い言葉でも脳はしっかり受けとり、インプットします。
だから、自分の吐く言葉には慎重になったほうが良いのです。
逆にいうと、脳のしくみを逆手にとれば、自分を望むようにコントロールしやすくなります。
例えばスポーツ選手は、試合に負けそうなとき「できる、できる、俺なら絶対できる!」と言葉にしたりします。
本当は「できない」と思っていても、「できる、できる」と繰り返し言っていると、本当にできる気がしてくる。そうして、極度のプレッシャーに打ち克ち、結果を出すのです。
元テニスプレーヤーの松岡修造さんが、その代表ですね。
ポジティブな熱血漢というイメージをもたれる松岡さんですが、実はとてもネガティブな人です。ネガティブな考えを打ち消すべく「できる、できる」と繰り返してきた人です。
それは、著書『松岡修造の人生を強く生きる83の言葉』や『ネガティブが人を強くする! 修造流 脳内変換術』などからよくわかります。
ですから、あなたが理想や野望をもっているなら、それを言葉にしつづけることで、達成確率が高まります。
逆に、ネガティブな言葉を発しつづけていたら、ネガティブな考え方をするようになります。
「ダメだ・・・」
「どうせ私なんて」
「うまくいきっこない」
と、言いつづければ見事(?)できなくなっていきます。
ネガティブに捉えてしまう事柄を、ポジティブに捉え直そうとすることを心理学用語でリフレーミングといいます。
リフレーミングとは、物事を見る枠組みを変えて、違う視点で捉えなおし、ポジティブに捉えることです。
例えば、『コップに水が半分入った状態』のとらえ方が有名ですね。
「半分しか入っていない」とみるか「半分も入っている」とみるか。幸せなのは、後者のほうです。
だから、あえて「半分も入っている」と口にしていると、自分の脳がそのように捉えていくわけです。
失敗をしても、
「これは成功への一歩だった」
「行動する人は必ず失敗するから自分は行動ができたのだ」
「これで学びを得ることができた」
とか、ポジティブな意味にリフレーミングすると効果があります。
ムリをしているようにも感じるかもしれませんが、私たちの脳はかようにシンプルにできています。良くも悪くもカンタンにだませるのです。
だから、私たちが使う言葉、私たちの耳にいれる言葉は慎重に選ぶべきです。
私の失敗と後悔 ~やりがい迷子から発見されるまで~
私の失敗をお話します。これは児童福祉の現場で働いていたときのことです。
当時の上司は、支援対象である子どものことを、事務所でバカにしたり笑いものにしたりする人でした。
私もはじめは「何いってんだ、こいつは・・・。ひどい人だな。」と思ってました。
この上司が子どもと話すとき、顔に時々、出ていました。失笑している感じで。
その表情に気づく子どもいれば、気づかない子どもいました。
上司は子どもと話した後、事務所にもどっては子どもの前で見せていた姿とは打って変わり、さらにバカにしたり笑いものにしていました。(あまりにひどく、具体的にかけません)
その上司を諫めることは私には難しく、同調も反対もしないのが精いっぱいでした。
ところが次第に、私の脳は上司のスタンスに侵食されていったようです。
私は、「本人に聞かれてなければ良いか・・・」と思い、上司に同調する言葉を吐くようになりました。
そのような言葉を吐くうちに、私は最も大切にすべき子どもを軽んじるようになりました。
果てに、自分の仕事の意義、目的を見失い、やりがい迷子になったのです。
「いったい、何のために仕事をしているのか?」
「自分の仕事は誰の役にたっているのか?」
「『子どものため』とは言うが、しょせん建前ではないか?」
自分のクライエントは、子どもなのに、子どものことをバカにしている。
当時、関わっていた子どもたちには申し訳がたちません。
私は自分の仕事も軽んじていたのです。
この状態を私が脱せたきっかけは、子どもに真摯に向き合う同僚と支援できたことです。
その同僚と自分を比べ、きつく反省し、自分を取り戻せました。
そして、「二度とやりがいを失うまい」と決意させてくれたのが、著書『科学的な適職』でした。(妻が転職を考えていたので、読んでみた本です)
他者や社会に貢献し、やりがいを取り戻すコツ
『科学的な適職』で紹介される「仕事で幸福度を決める7つの徳目」は次の通りです。
- 自由 その仕事に裁量権はあるか
- 達成 前に進んでいる感覚を得られるか
- 焦点 自分のモチベーションタイプに合っているか
- 明確 なすべきこと、ビジョン、評価軸は明確か
- 多様 作業内容にバリエーションはあるか
- 仲間 組織内に助けてくれる人がいるか
- 貢献 どれだけ世の中の役に立てるか
7つ目に「貢献」があります。「貢献」は自分の行為が他者や社会の役に立った感覚を得られることであり、仕事の幸福度に影響します。
“仕事の幸福度”と”仕事のやりがい”は、密接な関係です。
つまり、他者や社会に貢献している感覚は「仕事のやりがい」を左右するのです。(給料や年収よりも影響します)
社会福祉士も精神保健福祉士も、「クライエントの利益を最優先」する専門職。他者や社会に貢献する仕事です。
≫参考:社会福祉士の倫理綱領 倫理基準Ⅰ クライエントに対する倫理責任 2.(クライエントの利益の最優先)
ならば、仕事をしていれば自然と「自分の行為が他人の役に立った感覚」を得られるはず・・・。
ほんらいは、そうなのです。
ところが実際には、私のようにやりがい迷子になることがあるはずです。「自分の仕事が誰の役に立っているかわからない」と感じるときは、きっとあるでしょう。
やりがい迷子になったら、自分の胸に手を当てて、「私はクライエントの利益を最優先に仕事しているか?」と考える時である。
これが私の、現時点の結論です。
「結果がわからないから、貢献できているかわからない」という方へ
クライエントの利益を最優先に仕事をすると、やりがいを取り戻せる。
このように私がいうと「クライエントのために仕事をしているけど、結果がわからないし、役に立てた気がしない」と言う方がいるかもしれません。
確かに、「役に立ったかどうか」は時間がたたないとわからない。「支援の成果」なんて、神のみぞ知ることかもしれません。
しかしそれは、支援のゴール(結果)だけを見ているとハマる落とし穴だと思います。
この苦しみを抜け出すコツは、プロセス(過程)を小ゴールとして設定し、「私たち自身がクライエントの利益を最優先とする行動をとる」を達成すること。
すると、貢献(他者や社会の役に立てた感覚)は得やすいと思います。
我々の支援は、結果が数値化されにくい、成果がわかりにくいものです。ゴールだけを追いかけると燃え尽きますから、小さなゴール設定のテクニックは大切ですね。
まとめ
あなたがクライエントのことを軽んじる言葉を口にすればするほど、やりがいも失われていくでしょう。
これはクライエントに不利益だし、あなたの仕事と人生の満足度も下げる行為です。
あなたのやりがいは削られていき、仕事の満足度が減り、果ては「ソーシャルワーカーに私は向いていない」「辞めるしかない」という極端な答えにたどり着いてしまいます。
だから、これからソーシャルワーカー、社会福祉士や精神保健福祉士になる人は、自分が支援する人のことを蔑んだり、バカにしたり、笑いものにしないでいてほしいと思います。
クライエントを尊重した言葉を発し続けることが、やりがい迷子にならないコツです。
心から思えていない時でも、あえて言葉にしてください。すると、あなたはクライエントを尊重する支援者に変わっていけます。
すると、あなたはいきいきと、社会福祉士・精神保健福祉士・ソーシャルワーカーの仕事を続けられるはずです。
日々の言葉の積み重ねで、今の自分はできあがります。だから、自分の使う言葉は慎重に選びましょう。そういう人間に変わっていきますから。
私の失敗があなたの役にたつと幸いです。それでは、また!
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