どうも!社会福祉士・精神保健福祉士のぱーぱすです。児童福祉司経験があります。
児童相談所をテーマに扱ったフィクション作品、『新・ちいさいひと 青葉児童相談所物語』の1巻を読んでみました。
本作品の主人公は児童福祉司です。福祉職を主人公とする作品は、医療職や司法職と比べて少ない印象ですから、貴重なマンガと言えるでしょう。
しかも連載が続いている人気作品です。
1巻は児童福祉司が子ども(ちいさいひと)を救うストーリーです。本記事では『新・ちいさいひと 青葉児童相談所物語』の1巻だけをレビューします。
【書評】新・ちいさいひと青葉児童相談所物語1巻【ネタバレあり】
本作は命の危機にある子どもを、正義感ある児童福祉司が救うストーリーです。
本作の輝いている点は、テレビや新聞等のメディアでは悪者(?)扱いな児童相談所・児童福祉司が、ヒーローのように扱われていることでしょう。
しかもストーリーは緊張感を保ちながら、刑事・探偵ドラマのように展開していくので面白いですね。読後感は清々しいでしょう。
・・・と、べた褒めなのですが現場視点でみると「実際にそれをやっちゃったら法的に問題では?」という点も散見されたので列挙します。
現実ではできないこと
まず、三歳児健診に来なかった母子家庭の訪問で、腐臭がして児相職員が居宅の中に入る場面です。
これは法的にはできません。住居侵入罪に問われかねないでしょう。
本作品の別ページではちゃんと解説されていますが、本来は以下のプロセスです。
つまり児相職員が無断で住居に入って良いのは、臨検・捜索(実力行使)のみで、最終手段です。
物語での家庭訪問が臨検・捜索だったならOKですが、そういう文脈では無いように見えました。
他にも「それはやったらアカンやろ」と思ったのは、
- 家庭訪問時に、児相職員が保護者宛の文書をこっそり自分のポケットにおさめる
- 保護者の個人情報を、パートナーに無断で伝える
という場面等。実際にすると窃盗や守秘義務違反になるのではと思いました。結果的にうまく進んでいますが、現実はそうなるとは限りません。
こういった点はやはりフィクションならでは。物語をドラマチックに進めるための演出かな?と思います。
実際は法令に従って動くので時間がかかるし地味です。
という感じかな。興ざめですよね!
児童相談所・児童福祉司にスポットライトを当てた意義ある作品
メディアから批判の的となりやすい児童相談所・児童福祉司。
子どもを救えなかった時は、現場職員も人間ですから相当のダメージを受けます。
社会的なバッシングも相まって休職者が相次ぎ、壊滅的なダメージを受ける現場もあります。
メンタルが要因で休職する人が多いことは、全国の児童相談所が抱える悩みとなっています。
こうした背景もあってか、児童福祉司を目指す人は少ないです。
ネガティブなイメージの付きまとう児童相談所・児童福祉司に、ポジティブなイメージを加えているのが本作品の意義だと思います。
絵になりにくいのが支援現場ですが『子どもの命を救う』という形で児童福祉司にスポットライトを当てています。
作中において私が好きだったのは、電話一本にSOSが込もっている現場の緊張感を描写しているシーンです。
『ちいさいひと』という言葉に込められたメッセージも、「なるほど」と気づきを得ました。
フィクションなので現実の児童福祉司とはズレがありますが、児相職務の尊さを楽しみながら理解できる作品だと思います。
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