児童相談所って、どんな仕事してるんやろ?
- 「走れ!児童相談所」ってどんな本?おすすめ?
- 児童相談所ってどんな仕事してる?
- 児童福祉司の業務内容を知りたい。
こういった思いの方へ。
- メディアによる児童相談所報道は偏っている
- 児童相談所の概要
- 『走れ!児童相談所』の著者と内容
- 私の読後感
- 児童福祉司を経験して思うこと
私は社会福祉士・精神保健福祉士として働いています。現場では10年超の経験です。児相での児童福祉司経験あり。
児童福祉司経験者による著書「走れ!児童相談所」を読みましたので、レビューなどしてみます。
児童相談所ってなんだ?
メディアによる児童相談所報道は偏っている
テレビなどのメディアがとりあげる児童相談所は、ごく一部でしかありません。
児相について報道されるのは、子どもを守れなかった時や、「一時保護」についての話が多いですね。
ネガティブな部分がクローズアップされます。まあ、メディアとはそうした性質があります。人の関心を惹きつけないと視聴率は取れませんね。
人の関心をひくならポジティブなニュースより、ネガティブなニュースです。
率直に言うと、「児相が子どもを救った!」という話は関心をもたれにくいのでしょう。
それよりも、「無実の子どもが、ひどい親に虐待されて、助けを求めたのに助けてもらえなくて、児童相談所は知っていたのに助けられなかった」というストーリー・報道の方が、人の感情を惹きつけられる。
人間にはネガティブ本能があります。これは著書「FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」で明らかにされていることです。
そうした背景もあってか、「児童相談所です」と聞いた保護者さん・子どもさんは「一時保護される」とか「虐待してると決めつけられてる」と被害的に受け取りやすい傾向です。
これって、子どもにも保護者にも、ためになっていない状況です。
本来は児童相談所はその名の通り相談機関なんですが、保護者さんにしてみると「児童相談所が関わってくる=虐待している親だと思われている」というイメージが強い。「用が済んだら早く縁を切りたい相手」なんですね。
なので、児童相談所は相談機関としてつながりにくい。福祉分野の警察のような存在感になってしまってます。
結果的に保護者は孤立しやすくなるし、その被害を一番受けるのは子どもです。
そもそも児童相談所には他にもさまざまな業務・使命があります。現場の奮闘、はたまた疲弊もあります。
そうした児童相談所・児童福祉司のリアルを知る人が増えることは、子ども・親御さんの利益につながると思います。
児童相談所の概要【厚生労働省の説明】
そもそも児童相談所はどういった機関なのか?
厚生労働省HP(第1章 児童相談所の概要)をざっとまとめました。
- 設置:都道府県+指定都市等が設置
- 根拠法:児童福祉法
- 主目的:子どもの生活の安定・充足、権利擁護
- 市町村と役割分担・連携する
- 家庭等から相談をうける
ふーん・・・まだイメージわかない。
エピソードがあると良いね。
『走れ!児童相談所』は児童福祉司が小説でわかる本
「児童相談所(児童福祉司)のリアルを知りたい」という方にオススメの本が、『走れ! 児童相談所 発達障害、児童虐待、非行と向き合う、新人職員の成長物語』です。
(※人気著書のため、初版は2016年ですが2022年に新装版が出版されました)
著者は元児童福祉司
著者は元児童福祉司で、5年間の経験があったとのこと。
本書を書かれたきっかけは「[インタビュー] 著者・安道理氏」で知ることができます。
少し引用させていただきます。
最近では福祉を志す若者でも児童相談所は敬遠する傾向にあることや、児童相談所の本当の姿が世の中にはまったく知られていないため、子育てに悩んでいる人がいても、気軽に相談に来ないのではないかといったことが話題に上りました。その時、児童相談所を正しく描いた小説でもあれば、随分違うんだろうなっていう意見が出たんです。
引用元:(株)アイエス・エヌHP [インタビュー] 著者・安道理氏
児童相談所のリアルが伝わっていない課題を、著者も感じていたようです。
『走れ!児童相談所』の内容
旧版は1巻・2巻あり。ストーリーは1巻ごとに完結するので、2巻から読んでもOKです。新装版は、まだ1巻だけですね。
1巻の主人公は、福祉に縁のなかった行政職員の青年です。物語のはじまりは、彼が児童相談所に異動してケースワーカーとなった時です。
主人公は熱い心をもっており、周囲の職員へ素朴なギモンをどんどんぶつけていきます。
そうしたやり取りから、読者は児童相談所や児童福祉司のリアルを自然と理解できます。
あくまでストーリー主体ですから、よくある学習マンガのような勉強くささは感じません。
1巻では下記の内容がわかります。
- 児童相談所職員の仕事と心構え
- 福祉専門機関として必要な技術、ノウハウ
- 非行相談への支援
- ネグレクト家庭のエンパワメント
- 発達障害児と保護者の苦悩
- 立入調査の現実と里親制度による被虐待児への支援 など
引用元:『走れ!児童相談所』帯紙
私の読後感
私がこの本を読んだ時期は、障害児入所施設で働いていた頃でした。入所してくる児童は必ず児童相談所を経由していたので、気になって。
本書を読んで、児童相談所の立場を共感的にくみとりやすくなりました。
児童相談所のリアルを知れたからですね。
正直に言うと、私の働いていた施設側では「児童相談所が動いてくれないと・・・」と不満を抱きやすい環境だったのです。
職員同士の話では「児童相談所が〇〇してくれないと〇〇できない」といった具合に語られることが多かったです。
児童相談所はもっている権限の大きさゆえ、学校・施設などから攻撃を受けやすいですね。
でも児童相談所の立場にたってみれば、また違う景色が広がっています。世の中とは往々にしてそういうものですね。
児童相談所には児童相談所の正義があり、努力と苦労がある。本書からそうした現実がわかると、児童相談所だけをこき落とすような言い方はできなくなります。
児童福祉司を経験して思うこと
私は本書を読んだのちに児童福祉司を経験しました。改めて読み返すと、本書の紹介事例は幅広いですね。
きっと、児童相談所のリアルを伝えるべく、全体像がわかるよう工夫されたのでしょう。
例えば事例には、以下のシーンがあります。
- 児童心理司の発達相談場面
- 非行少年の面接
- 継続指導中と思われる家庭への訪問
- 一時保護 など
本当に幅広い。
ただし、実際の児童相談所は、以下のように業務分担されている傾向です。
- 介入班(虐待係)
- 支援班(相談係)
- 心理判定係 など
※介入班と支援班が一緒くたになっている場合もあります。(近年は分けるように推進されています)
なので、実際に児童相談所でケースワーカーとして働く場合は「ここまで幅広く仕事はしないと思うよ」ってことです。
立入調査も紹介されていますが、全国で年間100件前後です。児童相談所によっては年間1件もないことがありますので、けっこう特殊な場面ですよ。(参考:厚生労働省 児童虐待防止対策の状況について)
どうしても小説やマンガで絵になるのは、立入調査や臨検・捜索のような、行政処分をする時なのでしょう。これは致し方ない。「新・ちいさいひと 青葉児童相談所物語」にもそうした傾向はあります。
それでも、本書は脚色しすぎることなく、児童相談所・児童福祉司のリアルが書かれていると感じました。児童福祉司に興味のある方なら読んでおいて損はないと思います。
【新装版 1巻】
【旧版はこちら】
なお、児童福祉司になる方法は「【9ルート】児童福祉司になるには?【経験者がカンタンに解説】」で解説しています。ご興味のある方はチェックしてみてくださいね。
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