福祉全般

アルコール依存症家族に贈る「回復の法則」25【社会福祉士の書評】

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どうも!社会福祉士・精神保健福祉士のぱーぱすです。

最近、kindleで森岡洋さんの 『アルコール依存症家族に贈る「回復の法則」25』を読みました。

きっかけは問題が繰り返されているご家庭の支援。

アルコール依存症が要因で問題が起きていると思ったからです。

さて、今回は『アルコール依存症家族に贈る「回復の法則」25』の中から私が重要と思った部分を取り上げます。

アルコール依存症家族に贈る「回復の法則」25【社会福祉士の書評】

本書の要点は以下の通りです。

    1. 家族が変われば本人も変わっていく
    2. アルコール依存症は否認の病気
    3. アルコール依存症からの回復には完全断酒しかない(節酒はできない)

以下1つ1つ私の意見も交えながらまとめていきます。

1.家族が変われば本人も変わっていく

森岡洋さんは本書で次のメッセージを繰り返しています。

  • 他人を変えることはできない。自分を変えることはできる。
  • 自分が変われば、相手も変わらざるを得なくなる。

「本人を変えたい」と願う家族や「周りが悪いから俺はお酒を飲むんだ!」と主張する本人へ、自分が変わりましょうと呼びかけます。

家族には飲酒をやめさせる力は無いし、本人を変えようとしても徒労に終わる。回復への道は、本人が自らの意志で飲まない決意をすること。

「あなたは●●だから病院に受診に行った方が良い」と根気よく説明するのも「もうお酒は飲まない」と約束してもらうことも無意味と喝破します。

相手を変えようとするのではなく、自分が変わること

家族が変わればご本人も変わらざるを得ないのだから、そのマインドで行きましょうということですね。

なお、「自分が変わることが大切」という考え方は、アルコール依存症の話に限らず、人生を好転させる原則のように思います。

「あいつが●●してくれないから」といった他者批判だけ繰り返しているケースは、なかなか進展しない。

・・・と、そう言う私は人のせいにばかりしてないか?

支援を通して謙虚な気持ちにさせられました。

2.アルコール依存症は否認の病気

アルコール依存症は自らの問題を認められない否認の病気です。

アルコール依存症の家庭内では、言葉があまり意味をもたないようになります。つまり、嘘が増える。矮小化して表現することもあります。

例えば以下のように。

  1. 飲んでも途中でやめられます。(実際は、一度飲んだらやめられない)
  2. 飲まない日も結構ありますよ。(実際は、飲み過ぎでもう飲めなかった)
  3. 普通にやってますよ?(実際は、夫婦喧嘩が絶えない)

明らかに問題が起きているのに否認されるので、家族や支援者は不可解に感じます。当然、治療につながりにくい。

忘れてならないのは、問題を否定するのは本人の性格問題ではないということ。

アルコール依存症の問題を認めないこと自体が、アルコール依存症の病理なんですね。

これが理解ができると本人に肯定的に関わりやすくなります。「なんでわからないんだ!」と怒る必要は無くなります。

周囲が本人を認め、評価することは、本人のアルコール依存症からの回復を促進します。家族がアルコール依存症を正しく知れば、本人・家族の回復につながる理由はこうした点にもあるのです。

3.完全断酒しかない(節酒はできない)

アルコール依存症は飲酒量をコントロールできなくなる病気です。

したがって、一滴でもお酒を飲むと止められません。飲めるだけ飲み続けてしまいます。「お酒は控えめに」というアドバイスが通じるレベルではないんですね。

ひとたびアルコール依存症になると飲酒量を調節する力が戻ることは無いと言われます。

つまり、節酒はもはや不可能。アルコール依存症からの回復の到達点は完全断酒しかないということです

この事実を認めて実行に移すのは、非常に困難です。

森岡洋さんはアルコール依存症からの回復は一人では諦めた方が良いと言います。自助グループ、AAや断酒会に通い続けることが回復への道なんですね。

支援で関わる場合も、医療受診や断酒会などの自助グループへつなげることが第一目標となるでしょう。

まとめ

現場ケースではお酒の問題で失職したり、夫婦の不仲やDV、子どもへの虐待等が起きていることがよくあります。

「この人はお酒に強い(自称)みたいだから大丈夫」と思っていたら足元をすくわれるかも。もしアルコール依存症なら自己申告はあてにし難い。

既存ケースをアセスメントし直す意味でも、アルコール依存症の知識が使えるポイントは多そうです。

本書は1994年発刊ですが、未だに家族教室でも広く使われています。名著とは廃れないものですね。

単行本だと計127ページ。読みやすい文体でご家族向けなので、アルコール依存症を良く知らない支援者も手に取りやすいと思います。

ちなみに、アルコール依存症かどうかのチェックには世界保健機関(WHO)のAUDITが広く使われています。下記は神奈川県のHPですがサイト上でチェックできるのでリンクを貼っておきます。お試しあれ。

≫アルコール依存症スクリーニングテスト(AUDIT)

なお、インスタグラムに投稿したところ、断酒されている当事者の方からコメントをいただきました。きっとこれまでたくさんのご苦労などがおありだったのではと思い、素直にすごいと感じました。

 

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以上、アルコール依存症家族に贈る「回復の法則」25【社会福祉士の書評】という話題でした!

この記事を書いた人

社会福祉士&精神保健福祉士|働きながらブログ継続3年。月間PV6万。【これまで】大学受験失敗 → 浪人・転向 → 国家資格ダブル合格 → 就職 → パワハラ遭遇 → 転職×2 → 現在|福祉現場で10年以上。地域・医療・行政の3立場を経験。

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