作業所とは、障害のある方が働くことができる施設のことです。 作業所には、A型とB型の2種類があります。
A型作業所は、一般就労に近い形で働くことができる施設です。 B型作業所は、自分のペースで働くことができる施設です。
A型・B型作業所では、どれくらいの工賃(給料)がもらえるのでしょうか? また、それぞれの作業所での生活はどうなっているのでしょうか?
この記事では、以下のような疑問にお答えします。
この記事の内容
- B型作業所を考えているけど、月いくら稼げるんだろう?
- A型作業所の給料はいくら?
- 作業所のメリット・デメリットは?
- A型・B型作業所の平均工賃(給料)まとめ
- A型・B型作業所の生活、メリット・デメリット
- 工賃(給料)で生活できない時の対処法3つ

私は、社会福祉士・精神保健福祉士です。 作業所で相談員として勤務し、利用者さんの工賃を計算していた経験があります。
こうした経験をもとに解説していきますね。
※この記事では、工賃・賃金・給料はざっくり同じ意味で書いています。わかりやすさ重視のため。
【最新】A型・B型作業所の平均工賃・給料【厚生労働省統計】
結果はこのとおりです。
時間額(時給) | 月額 | |
A型 作業所 | 899円 | 79,625円 |
B型 作業所 | 222円 | 15,776円 |
グラフでは次のようになります。まずは時給から。
A型作業所は雇用契約を結ぶので、最低賃金を保障されます。
B型作業所は雇用契約を結ばないので、最低賃金を保障されません。 その代わり、自分の能力や体調に合わせて働くことができます。
B型作業所の工賃は、以下のように計算されます。
次は給料です。
比較すると大差になってしまいますね・・・。
ただし、実際の時給・給料は作業所によって違います。 利用する前にチェックしておきましょう。
では、各作業所の生活イメージや、メリット・デメリットを解説します。
A型作業所(就労継続支援A型)の平均給料・賃金と生活
A型作業所の平均給料(賃金)は、月額79,625円でした。

月8万円なら生活できるかな?

残念だけど、それぞれの人の状況によるねえ・・・。
月8万円の収入だけでは生活できないことが多いでしょう。
例えば
月8万円の稼ぎで暮らすには
- 他の収入がある(障害年金、同居者の収入など)
- 支出が少なくて済む
- 貯金がある
こうした条件が必要です。
では、A型作業所のメリットとデメリットはどうなっているでしょうか?
A型作業所のメリット・デメリット
A型作業所のメリット
- 週5日ほど勤務するので、一般就労へのステップアップに使いやすい
- B型作業所よりも給料が多い
- 給料以外にも収入(年金など)があれば、生活できる人もいる
- 障害や病気に理解ある(はずの)職員がいる
- 所属意識をもてる
- 仲間とのつながり
- 役割・やりがいをもてる
- 利用期限なし
A型作業所のデメリット
- 週20時間以上働くので、人によってはキツイ
- B型作業所よりも自由に休みにくい
- 利用者さんとの相性が悪いとツライ
- 前年所得(世帯収入)によっては利用料がかかる
利用料については後でまとめます。
B型作業所(就労継続支援B型)の平均給料・工賃と生活
B型作業所の平均給料(賃金)は、月額15,776円でした。

うーん。もっと欲しいなぁ・・・。
A型作業所と同じように、以下のような条件が無いと生活は厳しいでしょう。
B型の稼ぎで暮らすには
- 他の収入がある(障害年金、同居者の収入など)
- 支出が少なくて済む
- 貯金がある
実際には、こうした恵まれた条件が無い方は多く、生活保護を利用する方はよくおられます。
では、B型作業所のメリットとデメリットはどうなっているでしょうか?
B型作業所のメリット・デメリット
B型作業所のメリット
- 自分のペースで利用しやすい(週1日利用の人もいる)
- 体調などで行けない日は休める
- 給料以外にも収入(年金など)があれば、生活できる人もいる
- 障害や病気に理解ある(はずの)職員がいる
- 所属意識をもてる
- 仲間とのつながり
- 役割・やりがいをもてる
- 利用期限なし
B型作業所のデメリット
- A型作業所よりも給料(工賃)は少ない
- 利用者さんと相性が悪いとツライ
- 前年所得(世帯収入)によっては利用料がかかる
一番のデメリットは、工賃額でしょう。工賃だけでは、日々の生活は送れない。
利用者さんの中には、「作業所への交通費が工賃よりも高くつく」ということで、利用日数を減らす方もいました。
作業所の利用料について
A型・B型作業所は「障害福祉サービス」です。 そのため、あなたの前年の世帯所得によっては利用料がかかることがあります。
利用料は4段階に分かれます。
「世帯」というのは、あなた自身と配偶者を意味します。 親やきょうだいは含まれません。
所得の少ない方に優しい制度設計ですね。
注意例は、去年までバリバリ働いていた人が今年から作業所を利用する時です。
実際にあった話ですが、去年の所得によって利用料が決まるので、利用料がかかって辛い方がいます。給料(工賃)よりも、利用料の方が高くついていました。
「早く来年になって欲しい」と思いながら耐えるしかないんですね・・・。
工賃(給料)で生活できない時の対処3つ
A型・B型作業所の給料や工賃だけで生活できる人は少ないと思います。 同居者のサポートを得られると良いですが、そうもいかない方は多いでしょう。
そうした方の対処法は以下3つの方法が考えられます。
- 障害基礎年金・厚生年金を申請する
- 社協で生活福祉資金を借りる
- 生活保護
障害基礎年金・厚生年金を申請する
障害基礎年金・厚生年金とは、障害や病気で働けなくなった場合に国から支給されるお金です。
障害基礎年金は国民年金制度に基づくもので、厚生年金は厚生年金制度に基づくものです。
障害基礎年金・厚生年金を申請する場合、専門的な知識や手続きが必要です。
私もお手伝いしたことはありますが、素人の方が行うにはハードルが高いです。制度の仕組みは複雑ですし、準備物も多いです。
いちから勉強するよりも、早く申請した方がもらえる額が多くなる場合があります。
なので、お金はかかってしまいますが、オススメは社会保険労務士へ頼むことです。
社会保険労務士とは、社会保険や労働保険などの分野に詳しい専門家です。 障害年金の申請代行を行っている社会保険労務士も多くいます。
社会保険労務士に頼むと、以下のようなメリットがあります。
社労士に頼むメリット
- 障害年金の申請に必要な書類や証明書を用意してくれる
- 障害等級の判定基準や申請時期などのポイントを教えてくれる
- 申請書の記入や提出を代行してくれる
- 申請後の手続きや連絡を代行してくれる
- 申請結果に不服があれば、再審査や訴訟を代行してくれる
ただし社会保険労務士に頼むと、以下のような費用がかかります。
社労士に頼む費用(例)
- 着手金:障害年金の申請を開始する際に支払う費用
- 成功報酬:障害年金が支給された際に支払う費用
実際の費用は、各社会保険労務士が決めているので、とりあえず相談してみると良いと思います。
お近くの社会保険労務士は、NPO法人 障害年金支援ネットワークから探せます。こちらは私が実務で紹介することもあります。
社協で生活福祉資金を借りる
「貸付」ですが、次の世帯の方は、社会福祉協議会から生活福祉資金を借りることができます。
社協からお金を借りられる世帯
- 低所得世帯
- 障害者世帯
- 高齢者世帯
利率は、連帯保証人がいれば無利子、連帯保証人がいない場合は年1.5%です。
生活福祉資金は、例えば以下があります。
≫参考:生活福祉資金一覧
- 生活支援費
- 住宅入居費
- 一時生活再建費
- 福祉費
- 緊急小口資金
- 教育支援費 など
「どれが使えるかわからない」という方は、とりあえずお近くの社会福祉協議会に相談してみると良いでしょう。
生活福祉資金は、生活に必要な最低限の費用を補うためのものです。
返済能力や返済計画に応じて借りられる額や期間が決まります。返済方法は、口座振替や窓口払いなどがあります。
生活福祉資金を借りる場合、以下のような書類や証明書が必要です。
- 本人確認書類(運転免許証や健康保険証など)
- 所得証明書(源泉徴収票や確定申告書など)
- 支出証明書(家賃や光熱費の領収書など)
- 連帯保証人(無利子で借りたい場合)
- その他(借りたい目的に応じて必要なもの)
社協で生活福祉資金を借りるメリットは、
社協で生活福祉資金を借りるメリット
- 利息が低いか無利子で借りられる
- 返済期間や方法が柔軟に対応してもらえる
- 社協の職員から相談や支援を受けられる
です。デメリットは、
社協で生活福祉資金を借りるデメリット
- 借りられる額や条件が厳しい場合がある
- 返済しなければならない
です。借りたお金は必ず返さなければなりません。
返済しないと、信用情報に悪影響が出たり、法的手続きに移されたりする可能性があります。 借りたお金は自分のものではなく、返す義務があることを忘れずに利用しましょう。
生活保護を申請する
生活保護とは、国や自治体から最低限度の生活を保障される制度です。 生活保護を受けることで、以下のような支援を受けられます。
- 生活費(食費や家賃など)
- 医療費(医療券で無料で治療や薬を受けられる)
- 教育費(学校給食費や教科書代など)
- その他(介護費や就職支援など)
生活保護のメリット
- 最低限度の生活が保障される
- 医療費や教育費などの支援が受けられる
- その他の福祉サービスや就職支援などの利用がしやすくなる
です。デメリットは、
生活保護のデメリット
- 所得や財産が制限される
- 扶養義務者に連絡される場合がある
- 申請や調査が面倒で時間がかかる
- 申請後も定期的に報告や再調査が必要になる
- 周囲からの偏見や差別に遭う可能性がある
です。
しかし、生活保護って聞くと抵抗感がありませんか?
「生活保護を申請するようになったら人生おしまいだ・・・」「扶養義務者に連絡されるのが嫌」「相談に行っても申請させてもらえそうにない」このように感じるのは自然なことだと思います。
世間では『生活保護が財政を圧迫してる』という論調があったりしますが、おかしな話です。
なぜなら、そもそも日本の生活保護受給率は諸外国と比べてかなり低いからです。

日本弁護士連合会パンフレットより抜粋
また、こんな動画もあります。生活保護のリアルや申請のポイントわかりますね。
要は、生活保護はわたしたちの権利なので堂々と使いましょう!ということです。
まとめ
A型・B型作業所の平均給料・工賃と生活について解説しました。
A型・B型作業所では、以下のような給料・工賃がもらえます。
時間額(時給) | 月額 | |
A型 作業所 | 899円 | 79,625円 |
B型 作業所 | 222円 | 15,776円 |
しかし、これだけでは生活できない人が多いでしょう。 そうした場合は、以下のような対処法があります。
生活できないときの対処法
- 障害基礎年金・厚生年金を申請する(社会保険労務士に頼むと良い)
- 社協で生活福祉資金を借りる(返済義務があることに注意)
- 生活保護を申請する(最低限度の生活が保障される)
作業所で働くことは、障害のある方にとって大切なことです。しかし、それだけでは生活するのに不十分な場合もあります。あなたの状況に応じて、適切な支援を受けましょう。
この記事は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました!
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