部下が発達障害っぽいんやけど、もう面倒見切れんわ・・・。
どうしたらええんや?
部下が変わることを期待するのではなく、任せる仕事や配置を変える。
マネジメントで対処すると変化が起きやすいですね。
こんにちは!社会福祉士・精神保健福祉士のぱーぱすです。現場経験は約10年です。
発達障害っぽい部下への対応で「イライラする」「つい厳しく叱ってしまう」という方。
「でも私も一杯一杯。障がいに配慮する余裕なんてない・・・」「配慮が欲しいのは私の方・・・」という方は多いのではないでしょうか。
社会福祉士や精神保健福祉士は、発達障害のある方を支援する役割があります。私自身、仕事で支援してきた実務経験があります。
発達障害のある人への関わり方の基本は、具体的・視覚的に伝える等です。でも、それで問題は解決できたでしょうか?
この記事はそうした方法ではうまくいかなかった方に向けた内容となっております。
対処法の結論は、適材適所のマネジメントです。ご存知のとおり、適材適所とはその人を才能に適した地位・任務につけることです。
いいかえると、得意な業務をまかせ、苦手な業務をまかせないことです。
うちの職場にはそんな余裕も無いし・・・
業務量は変えず、業務内容だけを変えるのがキホンなんだ。
そもそも発達障害を誤って理解していると、「問題のある部下=発達障害」という安易な捉え方をしてしまいます。
なのでこの記事では、発達障害について説明した後、よくある例をご紹介。そのうえで、どうマネジメントするかをお伝えする内容となっております。
それではまいりましょう!
発達障害の部下の面倒を見切れない!悩みを解決するマネジメント方法
発達障害の特性とは、能力のバラつきにあります。得意・不得意の差が激しいのです。
なので、不得意をまかせてしまうと、悲惨なことになります。その不得意さ加減は、努力や経験ではカンタンに補うことができないほどです。
本人自身どうしようもできないのです。(だから「障がい」なのです)
なので、「甘えるな!」とか「努力と経験で上達しろ!」と頑張って叱咤激励しても、上司たるあなた様の労力むなしく、徒労になってしまいます。
得意な業務を任せて、苦手な業務はなるべく任せないマネジメントすることが大切です。
発達障害の部下によくあること
発達障害の部下によくあるのは、以下のようなことです。
発達障害の部下によくあること
- 期限までに仕事を仕上げられない
- ひんぱんに遅刻する
- ひんぱんに約束を忘れる
- 精神的な不調で休職を繰り返している
- 報告、連絡、相談ができない
- 外部の方にたいして失礼な態度をくりかえしてしまう
- 仕事の優先順位がつけられない
- 指示、指導すると「はい」と返事をするが、言われたことと違ったことをしており、話が通じていない様子
- 忘れ物や紛失が多い
- 電話のとりつぎができない
- 会議でよくうたた寝している
- ルールや規則を杓子定規に守ろうとし、職場や上司の矛盾点を追求する
- 「部長」や「課長」といった役職に敏感で、上下関係を強く意識している
ほんまそやねん。もう面倒見切れんわ・・・。
お気持ちはわかります。発達障害について、まずは知ってみましょう。
発達障害は生まれつき
発達障害のポイントは、先天性です。つまり、発達障害は生まれつきの障害なのです。
最近では大人の発達障害という言葉をよく聞きますね。
よくある誤解は、「大人になってから発達障害を発症した」というもの。
大人の発達障害とは「生まれた時から発達障害の特性があったけど、学生の間はそこまで困ってなかった。けれど、大人になって仕事を始めてからうまくいかないことが出てきて、病院に行ったら発達障害があったと判明した。」ということです。
つまり、環境がかわったので、発達障がいの特性が課題・問題になってしまった人たちが、「大人の発達障害」とよばれるわけです。
環境とは、例えば家・学校・職場、そこでの役割などのことですね。
発達障害はグラデーション
発達障害といっても、人によって度合い・個人差があります。
わかりやすくいうと、発達障害に100段階の点数があったとすれば、「30点」の方もいれば「80点」の方もいるイメージです。
ミスを繰り返している理由は苦手というより「できない」から
発達障害のある方にとっては、ミスを繰り返している業務が「苦手」というレベルではなくて、「できない」レベルのことが多いです。
苦手というと「指導すればできるようになるはずだ!」と思えます。
でも本当は、いくら言われても、いくらやっても、できないのです。
周囲からは努力不足にみえますが、努力ではどうにもならなくて、彼ら自身も困っているのです。
例えば、車いすの方に「階段をのぼれ」なんて命令はしませんよね。できないのは目で見て明らかです。
じつは、発達障害は目で見えない障害なのでわかり辛いですが、実際に起きているのは同じことです。
到底できない業務を任せられて、ミスを繰り返して、劣等感をつのらせてしまっているのです。なので、自己防衛という意味もあって、言い訳をしてしまいやすい。
では、発達障害の方ができないこととは?
詳しくみていきましょう。
発達障害の種類
ひとことに発達障害といっても、いろんな種類の発達障害があります。
発達障害は、主に下記3つにまとめられます。
発達障害3類型
- 自閉症スペクトラム障害 (ASD)
- 注意欠陥多動性障害 (ADHD)
- 学習障害 (LD)
自閉症スペクトラム(ASD)の特徴
カンタンにいうと、臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心・やり方・ペースの維持を最優先させたい本能的な志向が強いということです。
注意欠陥多動性障害(ADHD)の特徴
こちらもカンタンにいうならば、不注意で、多動で、衝動性が強いということです。まわりの目からは、「だらしない」とか「いきなりキレる」「おっちょこちょい」と映ることが多いでしょう。
学習障害(LD)の特徴
知的に遅れはないのに、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」のうち、いずれかの習得と使用がとても困難なことです。ハリウッドスターのトム・クルーズにも学習障害があったのは有名な話です。
実は・・・どの発達障害かはっきり診断するのはベテラン医師でも難しいんです。
発達障害の診断はとても難しいです。診断が難しい理由は2つです。
- 障害ごとの特徴が重なり合っていることが多いから
- 診断時期で診断名が違うことがあるから(年齢や環境で目立つ症状が違うため)
発達障害の診断が難しい理由
そんなわけで、例えば「自閉症スペクトラム(ASD)だけど、注意欠陥多動性障害(ADHD)でもある」っていう人がたくさんいるのです。
発達障害と言っても、ひとまとめにはできない理由
ここで注意点を1つ。
いろんな要因が複雑にからみあって失敗が起きるのです
ASDもADHDもLDも、重なり合います。
発達障害には度合いがあります。
性格、生い立ち、経験は人によって違います。
「発達障害がある人は皆同じ」なんてことはなく、個人差があります。
わかりやすく図にするとこんなイメージです。
こうした本人の要素に、環境要因(職場や業務内容)も影響します。
なので、周囲がまずできるのは、環境要因にテコをいれること。マネジメントです。
発達障害の部下のマネジメント方法(ASDとADHD別)
発達障害の部下が能力を発揮できるか、ミスを繰り返してしまうかは、環境次第・任せる業務次第です。つまり、マネジメントがうまくできれば良いということです。
ここからは発達障害でも多い
- 自閉症スペクトラム(ASD)
- 注意欠陥多動性障害(ADHD)
この2タイプにしぼって、どんな業務をまかせると良いかお伝えしていきます。
なお、学習障害(LD)への対応方法は、こちらの記事が参考になります。
www.kaien-lab.com
自閉症スペクトラム(ASD)の部下ができない業務
まずは自閉症スペクトラム(ASD)のほうからです。
部下がミスをしているのは下記のような業務でしょうか?
ASDの方ができない業務
- じっくりと対人関係をつくっていく仕事(臨機応変さ・想像力のいる人間関係が困難だから)
- 電話対応(視覚が優位な特性があるから)
- マルチタスク(注意の切り替えが困難だから)
- 他者・他機関・他企業との調整(臨機応変な人間関係が困難だから)
- 変化が激しい業務(臨機応変が困難だから)
- 新しい発想が必要な業務、新規事業など(想像力が求められるから)
- 締切のシビアな業務(自分の関心の優先順位が高くなるから)
自閉症スペクトラムの方ができないのは、「対人関係の調整、周囲のペースに合わせる力、想像力を求められる業務」です。
こうした業務をまかせると、どうしてもミスを繰り返してしまいます。
ミスを繰り返してしまう理由は、自閉症スペクトラムの特性2つが理由です。
・対人関係が苦手
・こだわりが強い
部下は自閉症スペクトラムのタイプの方でしょうか?
もしそうなら、次にご紹介する得意な業務をまかせるとうまくいく可能性が高いです。
自閉症スペクトラム(ASD)の部下ができる業務
ASDの方ができる業務
- マニュアルのある業務(臨機応変が苦手だから)
- 結果の良し悪しが明らかな業務(想像力が乏しいので、目に見えた方がモチベーションになる)
- 1つに集中して行えるシングルタスク業務(自分のペースを維持できるから)
- データや数字に正確さが必要な業務(白黒のはっきりしたデータや数字は得意)
- 本人の関心がある業務(自分の関心を最優先させたい特性だから)
- ルーティン・同じ繰り返しの業務(自分のやり方を維持できるから)
得意な業務であれば、問題なくできたり、うまくいけば段違いな成果をだせます。
「同じ繰り返し」のような、人によってはツライ業務も難なくこなせます。
彼らに合った環境ならば、何の問題もなく数年、数十年安定して仕事を続けられるのです。
健常な人よりも能力の落差が激しいので、得意・不得意がよりハッキリあらわれるということです。
なので、適材適所を徹底することが肝です。
適材適所なのはわかったけどさ。
得意そうな業務がウチの部署に無いんやけど・・・
それなら他部署への異動も考えましょう。そもそも勤め先や業界が合っていない場合もあります。その場合は「なるべく」でも良いので得意業務を任せると良いと思います。
注意欠陥多動性障害(ADHD)の部下ができない業務
次は注意欠陥多動性障害(ADHD)について整理していきます。
まずは苦手な業務からです。
ADHDの方ができない業務
- ケアレスミスが許されない業務(不注意が特性なのでケアレスミスは無くせない)
- 締切のシビアな業務(うっかり忘れてしまうから)
- 秘密をあつかう業務(後先考えず衝動的にしゃべってしまうから)
- ルーティンワークや単純作業(集中力がもたず、じっとしていられないから)
- 危険な業務や集中力の持続が求められる業務(不注意によって事故になる可能性が高いから)
注意欠陥多動性障害(ADHD)の方ができない業務は「集中し続けないといけなくて、地道な業務」といえます。
こうした業務をまかせると、どうしてもミスを繰り返してしまいがちです。
その理由は、特性3つにあります。
注意欠陥多動性障害(ADHD)の特性
- 不注意 物事を忘れる、物をなくす、集中力が続かないetc
- 多動性 どうしても動きまわってしまう、じっとしていられない、順番を待てない等
- 衝動性 思いついたことをそのまま口にする、後先考えず行動する等
といったことです。
部下は注意欠陥多動性障害(ADHD)のタイプの方でしょうか?
もしそうなら、次にご紹介する得意な業務をまかせるとうまくいく可能性が高いです。
注意欠陥多動性障害(ADHD)の部下ができる業務
ADHDの方ができる業務
- 短期間で終えられる業務(短期間なら集中力がもつから)
- 視覚的に見通しのある業務(落ち着いて取り組みやすいから)
- フットワークの良さが求められる業務(多動性を活かせるから)
- 新しい発想がいる業務(多動性や衝動性による思いつきが活かせるから)
注意欠陥多動性障害(ADHD)の特徴がある人は「活発でフットワークが軽い」という長所があります。
新しいことにためらわず挑戦できたり、既存の枠にとらわれない発想をする力があります。
でも、何の配慮もなければ「おっちょこちょい」や「ついうっかりミス」が繰り返し起きてしまい、短所ばかりが目立ってしまうでしょう。
自閉症スペクトラム(ASD)と同じく、障害の無い人よりも能力のデコボコが激しいので、適・不適が目立つということです。
なので、やはり注意欠陥多動性障害(ADHD)も適材適所を徹底することが大切なのです。
発達障害の部下のマネジメント原則
発達障害の特徴が問題となるかどうかは、環境次第です。発達障害のある方は、得意と不得意の落差がはげしいからです。
なので、うまく働いてもらうキーワードは適材適所です。
具体的には、得意な業務を積極的にまかせ、苦手(できない)業務は他の人に振るか、フォロー覚悟でまかせることと良いでしょう。
今の配置ではできない業務が多いようなら、部署や配置の異動も選択肢にいれましょう。
マネジメントして仕事を減らしたとするやん?そしたら、同じ職場で同じ給料なのに、やってる仕事が少ないこともあるわけで。周りもやってられへんってなるで。
業務量はなるべく変えず、業務内容を周りと交換してみましょう。それでも、明らかにできる仕事量が減ってしまうなら、本人自身も実は相当困っているはず・・・。発達障害と診断がついた方が、本人も職場も助かる可能性もあります。
「発達障害っぽい部下」に通院してもらう方法について
ここで「発達障害っぽい」というのは、「発達障害の診断はついていないが発達障害と思われる方」のことです。発達障害があるかもしれませんし、ないかもしれない方です。
周りだけでなく、発達障害っぽい部下自身も困っているなら、通院してもらうことで職場で配慮しやすくなると思われます。
ただし注意点は、発達障害は服薬すれば治るような障がいではありません。例えば、ADHDの方が集中しやすくなるような薬はあります。
でも、根本的に障がいがなくなるようなものではないのです。
もう1つの注意点は、通院は人に強制されていくものではありませんし、強制することはあってはいけません。
「君は発達障害だろうから、通院した方が良い」なんてことを言うのは、部下を傷つけることですし、ハラスメントになりうるでしょう。
なので、通院を提案するというのは、慎重な判断・対応が必要です。
例えば、通院をすすめやすい時期は、発達障害によるストレスが積み重なった結果、うつ症状があらわれた時でしょう。
うつ症状があらわれると、不眠を伴うことが多いです。うまく寝つけないとか、夜に起きてしまうといったことは、誰しも経験したことがあるでしょう。
なので、不眠については他者や上司と共有しやすいのです。
なかなか眠れないことで、業務にミスがでたり、遅刻が続いてしまったり、様子に異変があるかもしれません。
そういう時であれば、「なかなか眠れないことがあるようだし、一度病院で相談してみてはどうか。」「私も一緒にいけるよ。」と伝えやすいのです。
通院を勧められる理由が不眠であれば、言われた方も傷つきにくく、受け入れやすいのです。
「発達障害っぽい部下」への対応方法をもっと知りたい方へ
発達障害の1つ、自閉症スペクトラムは10人に1人と言われています。(これは障害といえるレベルの人から、障害とはいえない軽いレベルの人までを含みます)
10人の会社なら1人。
100人の会社なら10人。
1000人の会社なら100人です。
「発達障害っぽい部下」の指導や対応に苦慮される方は、世の中にたくさんおられる状況です。そうした悩みに応えた本も出版されるようになりました。
下記の本はさまざまな事例をもとに「上司はどう対応したら良いか」を具体的に指南しているので、この記事の読者様には役立つ本のはずです。
以上、【発達障害の部下】面倒見きれない!特徴と対応を社会福祉士解説という話題でした。
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