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一時保護の不服申立て・審査請求の方法と注意点【児相経験者が解説】

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一時保護とは、児童相談所が虐待などで危険な状態にある子どもを、親から引き離して、一時的に安全な場所で預かることです。

しかし、子どもを一時保護されて、納得がいかない時にできることは何でしょうか?

それは、一時保護の「不服申立て」です。

この記事では、私が児童相談所で児童福祉司をしていた経験をもとに、一時保護の「不服申立て」の方法と注意点を解説します。

一時保護の不服申立て・審査請求の方法と注意点【児相経験者が解説】

一時保護は『行政処分』です

一時保護は、児童相談所長や都道府県知事が決める行政処分です。

行政処分にはいろいろなものがあります。例えば、運転免許についての処分でいうと

 運転免許の行政処分

  • 免許の拒否(免許拒否処分)
  • 免許の保留(免許保留処分)
  • 免許の取消し(免許取消処分)
  • 効力の停止(免許停止処分)
  • 自動車等の運転の禁止(運転禁止処分)

こういったものがあります。

そもそも「処分」とは何でしょうか?政府は次のように説明しています。

ここでいう「処分」とは、法令に基づいて行政に認められた権限(公権力)を、国や地方公共団体が、国民や住民などに対して行使することをいいます。営業許可などの許認可やその取消し、改善命令など特定の作為・不作為を命ずる命令などのほか、人や物を強制的に収容・留置する行為なども含まれます。
引用元:政府広報オンライン 1.「行政不服審査制度」とは?

つまり、一時保護とは、児童相談所(または都道府県知事)が児童福祉法という法令に基づいて、住民に行使する行政処分です。

一時保護に納得できない場合は?

行政処分に納得できない場合は、「不服申立て」という手続きができます

「不服申立て」ができる理由は、一時保護が『行政処分』だからです。このため、行政不服審査法行政事件訴訟法が適用されます。

一時保護決定通知書に書かれていますが、「不服申立て」には、以下2つの方法があります。

行政不服審査
(審査請求)
行政事件訴訟
申立てできる期間 決定があったことを知った日の翌日から3か月以内 決定があったことを知った日の翌日から6か月以内
根拠法 行政不服審査法 行政事件訴訟法

この記事で解説するのは、行政不服審査(審査請求)です。

行政事件訴訟は、高度な専門性が求められますし、一般の人にはハードルが高いです。

しかし行政不服審査(審査請求)であれば、多くの人にとってやりやすいです。実際、行政不服審査(審査請求)は、国内でたくさんされています。

出典:政府広報オンライン 1.「行政不服審査制度」とは? 総務省「平成26年度における行政不服審査法等の施行状況に関する調査結果」

お金に関することが一番多いですね。

行政不服審査(審査請求)の手続きの流れは、総務省のパンフレットでわかります。きっと役立つので、ぜひご一読ください。
≫参考:行政不服審査法パンフレット(詳細版)|総務省

表の読み方

  • 「審査請求人」は、子どもを一時保護された保護者です
  • 「処分庁」は、児童相談所(または都道府県知事)です
  • 「審査庁」は、児童相談所を取りまとめている本庁の課等

ここからは、「行政不服審査(審査請求)」を「不服申立て」と呼んで解説していきますね。

では、「不服申立て」は、いつ・誰が・どこへ・どうやってすれば良いのでしょうか?

具体的に見ていきましょう。

「不服申し立て」できるのは誰?いつまでにするの?

一時保護について、「不服申し立て」ができるのは「審査請求人」である保護者です。親権者ではないことに注意しましょう。

児童福祉法では、親権者と保護者は違います。

この法律で、保護者とは、(中略)、親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護する者をいう。
引用元:児童福祉法 第六条

つまり、児童福祉法で言う「保護者」とは、「親権者」を含んだ意味です。

親権はなくても、現に子どもの面倒をみている人であれば、「不服申立て」できる保護者となりえます

また、「不服申立て」は、一時保護されたことを知ってから3か月以内に行わなければなりません。
≫参考:行政不服審査法第18条第1項

「一時保護されてから」ではなく「知ってから」です。

「不服申し立て」は何をどうすればできるの?

「不服申立て」をするには、「審査請求書」という書類を作って、審査を行う行政機関(審査庁または処分庁)に送ります

行政不服審査法によって、「不服申し立て」は原則として書面審査で進めることになっています。

「審査請求書」の様式に決まりはありませんが、書かないといけない内容は法律で決まっています。

処分についての審査請求書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 審査請求人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 審査請求に係る処分の内容
三 審査請求に係る処分(当該処分について再調査の請求についての決定を経たときは、当該決定)があったことを知った年月日
四 審査請求の趣旨及び理由
五 処分庁の教示の有無及びその内容
六 審査請求の年月日
引用元:行政不服審査法 第19条第2項

「審査請求書」の書式や記入例はインターネットで見つけることができます。

例えば、大阪市のホームページからは、様式例と記載例をダウンロードできます。(公開されていない自治体は多いです)

≫参考:大阪市HP|処分についての審査請求【様式例】(PDF)
≫参考:大阪市HP|審査請求書【記載例】(PDF)

この「審査請求書」を、審査庁宛てに出しましょう。

審査庁は、インターネットで調べることもできますが、一時保護を実行した児童相談所(処分庁)に聞くのが早いです。

「不服申立て」をしたらどうなるの?

「不服申立て」をしたら、審査庁が書類や証拠を調べて、一時保護が適切だったかどうかを判断します。その結果は「裁決」という形で通知されます。

裁決が出るまでに時間がかかることがあります。裁決が出るまでも、一時保護は続けられます。

裁決で「不服申立て」が認められた場合は?却下された場合は?

裁決で「不服申立て」が認められた場合は、一時保護は取り消されます。しかし、その後も児童相談所は、子どもの安心や安全を中心に関与することになります。

裁決で不服申立てが却下された場合は、一時保護は継続されます。その後の対応は、児童相談所と保護者との話し合い等によって決まります。

最後に 一時保護の「不服申立て」には意味があまり無い理由

一時保護とは、危険な状態にある子どもを、行政処分として一時的に安全な場所で保護することです。

一時保護に納得できない場合は、「不服申立て」という手続きで審査請求することができます。

ただし、一時保護の「不服申し立て」には実効性があまり無いです。

なぜなら、一時保護の「不服申し立て」をしても、裁決がでるまで一時保護は継続されるからです。これは、行政事件訴訟を起こす場合も同じです。

一時保護のひとまずの期限は2か月までです。なので実際は、裁決が出るよりも、一時保護解除の方が早くなる可能性があります。

したがって「不服申立て」をするのは自由なのですが、その手間やエネルギーは、一時保護された事由の解消にかけた方が、お子さんを早く取り戻せると考えられます

これは、私の児相での経験からも言えることです。

なお、一時保護の期間は原則2か月までですが、延長もできることになっています。その他、一時保護中に子どもに会えるか等、詳しい話は下記の記事で解説しています。

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