こんにちは。私は某自治体で働く社会福祉士・精神保健福祉士です。現場経験はおよそ14年で、いちばん長い職歴は児童相談所の児童福祉司です
今回は、ステップファミリーについてお話ししたいと思います。
ステップファミリーとは、男女のいずれかに子どもがいる状態で結婚してできた家族のことを言います。
この言葉には厳密な定義はありませんが、この記事では一般的に使われる意味でステップファミリーという言葉を使います。
最近では、結婚全体の約25%が再婚(夫婦とも再婚又はどちらか一方が再婚)です。
≫参考:結婚と家族をめぐる基礎データ 内閣府男女共同参画局 令和3年5月18日

25%も!?

再婚は全然珍しくない世の中なんですね。
「再婚=ステップファミリー」ではありませんが、かなりの数のステップファミリーが誕生していると推測できます。
ステップファミリーは、特に不思議でもない、もはやよくある家族形態です。
統計的に考えれば、多くの人が無関係ではありません。
あなた自身がステップファミリーでなくても、きょうだいや親戚まで含めるとステップファミリーの方がいるかもしれません。
けれども、一般的に「ステップファミリーはうまくいかない」というイメージがあるようです。
そして、児童相談所でケースワーカーとして対応していても、ステップファミリーは家族としての難易度が高いと感じます。
なぜでしょうか?解説していきますね。
ステップファミリーはうまくいかない?ハードモードの家族関係を解説
ステップファミリーによくある悩み
ステップファミリーは、例えば、こうした悩みや問題を抱えている方が多いです。
ステップファミリーによくある悩み
- 自分の子どもと新しいパートナーの仲が悪い・・・
- 新しいパートナーにいきなり子どもの世話をさせて申し訳ない・・・
- 元のパートナーと子どもの面会を調整するのが辛い・・・
夫婦でしっかり話し合って、固い絆で結ばれていくステップファミリーもあります。
けれど、ステップファミリーはどうしても問題を抱えやすいでしょう。これには理由があります。
ステップファミリーが難しい理由は、この3つの人間関係にある
初婚同士の夫婦であれば、2人の間での課題を1つずつクリアすることからスタートできます。
夫婦2人の間だけでも、これまでの生活歴に違いがあるので、かなりの話し合いや調整が必要です。
時にはケンカだってすることもあるでしょう。でも、それで良いのですね。
段階を踏めますし、子どもを迎えるまでの準備期間があります。(もちろん例外はあるでしょう)
けれど、ステップファミリーは、
ステップファミリーが抱える難しい人間関係3つ
- 新しい夫婦関係
- 新しいパートナーと連れ子の親子関係
- 別れた実親・祖父母と子どもの関係、面会の調整
3つの人間関係が、同時にスタートです。
段階を踏めないだけでなく、同時に複雑な課題を抱えたスタートです。しかも、対応に画一的な正解はありません。
お父さんお母さんとなる人にはストレスがかかりますし、子どもにも影響があります。これは避けられません。
ステップファミリーが抱える課題の具体例
では、具体的にステップファミリーはどんな課題を抱えるのか?
それぞれの立場で例をまとめましたので、参考にしてください。
新しいパートナーと連れ子の関係
- 連れ子は「新しいパートナーに元のパートナーを取られたくない」と感じる
- 新しいパートナーは「親子関係の間に入れないな・・・」と感じる
- 新しいパートナーが連れ子に分け隔てなく接しようと思っても、連れ子の反応がそれぞれ違うので難しい
連れ子の立場
- 扱い方が違うと不平・不満
- 両親が離婚した理由は自分のせいと感じる
- 元の両親の仲直りを期待していたのに、新たなパートナーが出てきて裏切られたと感じる
- 元のパートナーやその家族とはもう会えない、会わない方が良いと思う
- 新しいパートナーと仲良くするのは元のパートナーに悪い気がする
- 新しいパートナーから来た子に自分の親を取られる(拒否感・敵対視)
新しい母親
- 周りから「母性本能があるから大丈夫」と期待されるが、相手の連れ子とうまく行かず孤立して抱え込んでしまう
実の母親
- 自分の子を新しい父親に養ってもらって申し訳ないので、新しい父親が好きなことをできるように気を遣ってしまう(これを連れ子は不満に感じる)
実の父親
- 新しい母親にいきなり子どもの世話をさせて申し訳ないと感じる
実の母親と父親
- 新しいパートナーに悪いので、連れ子と元のパートナーとの面会継続がためらわれる
- 連れ子と新しいのパートナーとの間で葛藤する。どちらかを選ばなければならない気持ちになる。
複雑ですよね。ステップファミリーがうまくいかないのは、自然なことなんです。
初婚同士の夫婦ですら、簡単ではない結婚生活。
ゆえに、ステップファミリーは、条件的には初婚同士より難易度が高く、ハードモードだと言えます。
ちなみに、日本人は血縁関係よりも、結婚制度上の結びつきを重視する傾向があります。
血のつながりはなくても、親が結婚した相手が「お父さん」「お母さん」になる、そうさせようとする傾向があります。
でも、例えばブラジルでは、血縁関係を重視する人たちが多いです。結婚しようが離婚しようが、制度上の関係よりも、血縁上の関係が優先されるように思います。
日本人の考え方がすべてじゃないんですね。ステップファミリーでは自分の常識や考え方を絶対視しない方がうまくいくと思います。
まとめ
「ステップファミリーはうまくいかない」とは言いきれませんが、簡単ではないです。
自分たち大人の欲求で、子どもを振り回さないこと。子どもを第一に考えて、どうしたら良いかを話し合って導き出してほしいです。
児相での経験をもとに言うと、話し合いができない相手であれば、夫婦になるべきではないと思います。きつい言い方かもしれませんが、子どもが被害者になります。
ステップファミリーになることは、子どもにとって良いことだけではなく、負担も大きいです。
夫婦の関係にレベルがあるとすれば、スタートするまでにまずはパートナーとの関係のレベル上げをおすすめします。
今では、ステップファミリーについてはたくさんの本が出版されています。例えば次のような本はおすすめできますので、お役立てくださいね。
- 『ステップファミリーのきほんをまなぶ』 野沢慎司 金剛出版
- 『ステップファミリーのおとなのためのきほん』 ステップファミリー・アソシエーション・オブ・ジャパン SAJ出版部
- 『ステップファミリー 子どもから見た離婚・再婚』 野沢慎司 菊地真理 角川新書
それではまた!
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