「スマホ!スマホ!スマホ!」児童相談所で見た中高生女子の非行・虞犯と依存の現実
児童相談所でケースワーカー(児童福祉司)として働く中で、近年とても強く感じることがあります。
それは「スマホをめぐるトラブル」が、子どもたちの非行・虞犯とセットで登場しているということです。
親が手に負えなくなり、児童相談所へ相談や一時保護を求めるケース。その背景には、スマホの存在が色濃く絡んでいます。
スマホが子どもを熱中させる理由
スマホは子どもをとても熱中させ、依存度が高いツールです。
- 勉強や宿題をしない
- 部活や家事をしなくなる
- 親に感情的に怒る
こうした行動の裏には「スマホに夢中になる脳内メカニズム」があります。
楽しみや快楽をもたらすドーパミンが放出されるため、やめられなくなる。これは酒やタバコ、薬物依存と共通する仕組みです。
依存を指摘されると、多くの子どもは「依存していない」「もっとひどい人がいる」と否定します。
「スマホ依存」はけっこうカジュアルに使われる言葉ですが、厳密な診断とは異なるでしょう。こちらのサイトではセルフチェックできます。あなたはどうでしょうか。
「もしかしたら依存かも」と自覚できる人は変わる可能性がありますが、そうでない人を強制的にコントロールするのは難しいのが現実です。
なぜこのようになるか?アンデシュ・ハンセン氏の「スマホ脳」を読むとよくわかります。
過去にレビューしたこともある良著です。
親子でのスマホトラブル
親がみかねてスマホを取り上げようとすると、子どもは必死に抵抗します。
いちど形成された依存は簡単には崩れず、むしろトラブルが激化することが少なくありません。
- 使用時間を決めても守れない
- 監視は現実的に不可能
- 利用時間を計測するのも困難
結果として、親子関係は悪化してしまうケースも見てきました。
社会全体での取り組みは必要か
愛知県豊明市では「スマートフォン等の適正使用の推進に関する条例案」が示され、余暇での使用を一日2時間以内とする目安を打ち出しました。
賛否を呼んでいますが、現場を見てきた立場としては「賛同できる方法」だと感じています。
例えば、子どもから「持っていないと仲間外れになる」「LINEのグループに入れない」「友達ができない」と言われ、親がやむなく持たせることは多いです。
私は、小学生のうちはキッズケータイにとどめるべきだと思いますが、こうした判断を家庭だけに任せるのには限界があります。
スマホは便利で、生活にもビジネスにも欠かせないものです。
ですが「自由に持たせるかどうか」を各家庭に丸投げする状況は、『親 vs 子ども』の構図をつくり、親子トラブルを増やしていないでしょうか?
女子と男子の違い
スマホをめぐる非行には、男女で違いが見られます。
- 10代女子:SNSを通じた知らない男性との接触、援助交際や家出に発展するケースが多い
- 10代男子:バイク、窃盗、暴力など、従来型の非行が目立つ
もちろん背景には、家庭の課題、愛着形成の問題、学校不適応、性被害歴など複合的な要因があります。
ただ現場の実感として「スマホ×性のトラブル」は圧倒的に女子に多いのです。
私自身の「脱スマホ」体験
ここまで言うのは、私自身もスマホに多くの時間を奪われてきたからです。
スクリーンタイムが一日5時間を超えていたこともあり、自分でもゾッとしました。
そこで私は「スマホをつまらなくする工夫」をしました。
- 白黒画面に設定
- YouTubeなどの娯楽アプリは制限または削除
- 通知は必要最低限に
すると、気持ちがすがすがしくなりました。「手元にあるだけで注意力を奪う」というスマホの特性を実感しました。
子どもからスマホを取り上げても…
しかし、児童相談所で見てきたのは「スマホを強制的に取り上げても解決しない」という現実です。
嘘をつく、目を盗む、別の方法で手に入れる…。
結局、強制すればするほど子どもは巧妙になり、再びスマホを手にしたときには危険な使い方に戻ってしまうのです。
だからこそ「子どもにスマホを持たせることのリスク」を社会全体で共有し、早い段階から考えていく必要があります。
おわりに
「スマホ!スマホ!スマホ!」私の耳に残っているのは、依存的にスマホを求める子どもたちの心の声です。
こんな状況になると知っていれば、誰が子どもにスマホを与えるでしょうか。
子どもにとっても、親にとっても、そして社会にとっても。スマホの依存性・実態をもっと知ってもらいたい。
あなたは、もし自分の子どもにスマホを持たせるとしたら、どう判断しますか?
コメント