児童福祉司って、どんな仕事をしているのか。
そう聞かれたとき、多くの人は「子どもや保護者と面接している時間が長いのでは」と思うかもしれません。
しかし、実際に働いてみると、意外なところに時間が吸い取られている。
これは、私が児童相談所で働く中で感じてきたリアルです。
本記事では、児童福祉司の1日について、“どこに時間が消えていくのか”を、私自身の経験から率直に語ります。
- 移動
- 記録
- 連絡調整
- 会議
- 面接
- 電話対応
これらのバランスは、実にアンバランス。
専門職として心血を注ぐ時間が、いったいどれくらいあるのか。
児童福祉司を目指している方は「そうなんだ」と知り
現場で働く方には「そう、これなんだよ」と共感してもらえたら嬉しいです。

結論:最も長いのは「移動」と「記録」。クライエントと直接関わる時間は実は少ない
児童福祉司の仕事の中で、私が一番時間を使っていると感じるのは、移動と記録です。
その次に多いのが、連絡調整や電話対応。
そして最後に、ようやく当事者への支援(面接・家庭訪問)が来る。
時間が多いランキング
- 移動と記録
- 連絡調整、電話対応
- 面接などの直接対応
この順番です。
もちろん担当件数や地域事情で変わります。
私の働く児童相談所の地域特性はあるでしょう。
とは言え、周囲の児童福祉司に聞くと、同じように感じている人は多い。
そのため、これは“児童福祉司の全国実態にも近い”と考えています。
移動時間の長さ:広域を担当すると顕著
児童相談所は、広いエリアを担当することが多い。
そうなると、移動だけで1日の大きな割合を占めることがあります。
- 朝イチで家庭訪問
- そのまま学校へ調整に向かう
- 午後に再訪問
- 夕方から会議へ移動
こんな1日だと、移動だけで2〜3時間なんて普通です。
自転車、車、電車、いずれにしても時間がかかりすぎる。
正直「どう工夫しても限界がある」というのがリアルです。
パソコンで記録を書く時間:ここも長い

児童福祉司は、相談記録を残すことから逃げられません。
まだまだ自動化が進んでいない現場も多く、手入力が基本。
記録は、単なる“日記”ではなく、
- 目的
- 事実
- 対応
- 見立て
- 今後の計画
などを書く必要があったりします。
優先順位を考えると記録は後回しになりやすい。
でも、後回しにすると記憶が薄れる。
短く書けば良いかというと、子どもの人生がかかった情報なので、割り切れない。
このジレンマはずっとつきまといます。
電話対応・連絡調整:時間が読めず、意外に伸びやすい

電話対応や他機関との連絡も、予想以上に時間を奪います。
面接でも連絡でも、
急いでいる時ほど“なぜか長引く”ことがある。
私の感覚では、理由はこう。
こちらの「急いでる空気」が相手に伝わる。
→ 相手が「ちゃんと伝わっていない」「もっと話さないと伝わらない」と感じる
→ 結果的に話が伸びる
逆に、集中してしっかり聞くと、
結果的に短く終わる。
これは”あるある話”じゃないでしょうか。
面接時間:一番心を使うが、一番長いわけではない
私が最も心血を注ぐ”ライブな時間”は、やはり当事者と直に関わっている時間です。
さまざまな連絡、会議などの調整も、この時に臨む下準備だったりします。
しかし、面接は“量”で言えば決して多くありません。
面接も長くすれば良いものではなく、
お互いの集中力や継続性を考えると、大人であれば1時間程度が目安です。
そして、次のような工夫をすることもあります。
- 最初に「今日は◯時まで」と時間を明示
- 相手が安心して話せる空気をつくる
- 第三者同席は慎重に判断する(内容が変わるため)
「はしご訪問」は効率は良いが、難しさもある
訪問を連続で組む方法は、たしかに移動時間の効率化につながります。
しかし、これにも難点がある。
Aさんの訪問が伸びる
→ Bさんの時間に食い込む
→ 強引に切り上げようとする
→ Aさん、Bさんからの信頼を損なう
だから私は、訪問の間に“余白時間”を多めに入れるようにしています。
ただしこの余白が長すぎると、今度は仕事が進まない。
この調整が本当に難しいです。
音声入力・自動文字起こしにも限界がある
最近は記録の仮入力を音声で行う方法も出てきていますが、
結局は要約と修正の手間が残るので、どこまで効率化できるかは課題がありそうです。
ただ、プライバシーさえ確保できれば、
私は「音声でざっくりメモを残す」のは有効だと思っています。
100%を目指すと時間がいくらあっても足りない
記録も資料作成も、「完璧」を目指すと終わりがありません。
仕事は締め切りいっぱいまで伸びてしまう(パーキンソンの法則)。
児童福祉司は特に、
- 緊急対応
- 臨機応変な判断
- 突発の訪問
これが日常茶飯事。
だからこそ、“100%にしない意識”が必要だと感じています。
全身全霊で走り続けると、すぐに燃え尽きてしまいます。

まとめ:児童福祉司の時間の大半は「見えにくい仕事」
児童福祉司の仕事は、面接など直に関わる時間だけでは成り立っていません。
移動、記録、連絡調整という“見えにくい時間”がとても多い。
しかし、この地味な積み重ねが、子どもや家庭への支援の土台。
これも専門職としての大切な職務です。
雑用的に見える業務も必ずあります。
児童福祉司をはじめ、社会福祉士や精神保健福祉士、ソーシャルワーカーは、
誰がやっても良い仕事を相当担うことがあります。
大事なのは、それらをどう支援の方向性に結びつけるか。
工夫次第で、移動・記録・連絡調整などの時間も、
支援の質を底上げする重要な時間になります。
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