
双極性感情障害と双極性障害って、何が違うんや?

双極性感情障害=双極性障害=躁うつ病だ。すべて同じ疾患。

そうなんや!
・・・でもなんで違う名前があるん?
こんにちは!社会福祉士・精神保健福祉士のぱーぱすです。
「双極性感情障害」「躁うつ病」「双極性障害」は精神疾患です。同じ疾患なのに診断名が違ったりすると、ややこしいですよね。
精神障がいのある方への支援では、診断は支援へのかけ橋です。「精神科の診断はあてにならない」という精神科の先生もおられますが、何の手掛かりもなしに支援をくみたてるのも難しいと感じます。
診断を盲信するわけにもいきませんけど、双極性感情障害(躁うつ病)と双極性障害という診断名が、それぞれ何を意味するのかは、大切な手掛かりです。
そういうわけで、双極性感情障害や双極性障害についても「何が違うんだ?」って思って調べたわけです。同じようにお困りの方がいるかもしれないと思い、記事にしました。
結論ですが、双極性感情障害と双極性障害は、躁うつ病のことです。分類名が違うだけです。ICD-10では極性感情障害(躁うつ病)、DSM-5では双極性障害と分類されています。
ICDとDSMの成り立ちにふれつつ、分類が混用されている理由をひもといていく記事ですので、
この記事が役立つ方
・ICDとDSMの違いが知りたい方
・双極性感情障害、双極性障害、躁うつ病に違いがあるのか知りたい方
・なぜ違う診断名が業界では混在して広まっているのかギモンをおもちの方
上記のような方に役立つ内容となっております。それではまいりましょう!
ICD-10ってなに?
ICDは世界保健機関のWHOがつくった国際疾病分類です。
ICDは精神疾患をふくめた全ての疾患について、世界共通の分類をしっかり決めるためにつくられました。International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problemsの頭文字をとってICDとよばれています。
そもそも国によって病気の分類が違ったら、どんなことがおこるでしょう?
極端な話ですが、上記のようなことが起こりえるでしょう。
世界共通の疾病分類がなければ、安心して海外へ行ったり、暮らすことができません。世界で協力して、病気を研究することもできません。
だから、世界共通の診断分類が必要だったのです。世界共通の疾患分類の実現をめざすのが、WHOのつくったICDです。
ICDの歴史
ICDには長い歴史があります。ICD誕生きっかけは1900年の第1回国際死因分類会議でした。その会議を機にICDはつくられました。
第1版から第9版までは、10年ごとに更新されてきました。つまり、ICDー10の「10」は、10版目のことです。いわば、ICDのバージョン10です。
2019年5月30日には世界保健総会で、第11版が承認されました。ICD-11は、その和訳と日本での運用が検討されているところです。
現在、日本で主につかわれているのはICD-10です。
ICD-10は日本でどう使われているの?
日本では、厚生労働省(当時の厚生省)がICD-10をつかうことを決めました。厚生労働省によると
現在、我が国では、その後のWHOによるICD-10のままの改正の勧告であるICD-10(2013年版)に準拠した「疾病、傷害及び死因の統計分類」を作成し、統計法に基づく統計調査に使用されるほか、医学的分類として医療機関における診療録の管理等に活用されている。

おれアホやから何かいてるかよくわからんのやけど?

つまりこういうことだ。
①日本はICD-10をつかって病気の統計調査をしています
②日本の医療機関はICD-10をつかって病気を分類したり治療したりしています

ほー。はじめからそう書いてーや。
いじわるやな。

国や行政の文書は「正確な表現」が追求されている。
わかりやすさは後回しってこと。
日本はWHOに加盟しているからICD-10をつかう義務がある
日本はWHOに加盟しています。WHOに加盟している国は、疾患統計の報告にICDをつかわなければいけません。なので、公式な診断や報告、行政での認定などにはICD-10がつかわれています。
そのICD-10では、躁うつ病のことを双極性感情障害と分類しています。
なので、業界内では躁うつ病とか双極性感情障害といった診断名が飛び交うことになっているのです。
DSM-5ってなに?
DSM-5はアメリカ精神医学会がつくった精神疾患の分類と診断基準です。DSMの正式名称はDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersです。
頭文字をとってDSMとよばれています。

ほー。DSMは精神医学会がつくったんか。

そうだ。DSM-5の対象は精神疾患だけ。
ICD-10の対象はすべての疾患。
DSMの歴史
1952年、アメリカ精神医学会はDSMの第1版を出版しました。
当初は統計調査を目的につくられたといわれています。
更新を重ねて、2013年に第5版で最新のDSM-5が登場しました。もちろん「5」は第5版のこと。バージョン5といったところですね。
現在では日本をふくめ、世界中で精神疾患の診断の分類や基準につかわれています。
DSM-5は日本でどう使われているの?
「DSM-5精神疾患の分類と診断の手引」では、DSM-5の使いかたを次のように決めています。
DSM-5の第1の目的は、熟練した臨床家が、症例定式化のための評価の一部として行う診療患者の精神疾患の診断を助けることであり、それが各患者に対応した十分に説明された治療計画につながることになる。
つまりこういうことです。
「DSM-5は、精神科のお医者さんが診断や治療するときの参考に使ってくださいね。」
ということです。実際、日本の精神科のお医者さんはDSM-5を参考にしています。
DSM-5は、精神科の病院や診療所のお医者さんがつかっている分類・診断基準ということですね。
【まとめ】双極性感情障害と双極性障害は呼びかたが違うだけ 混用される原因はICDとDSM
ICDー10の精神疾患の分類名は、DSM-5とだいたい同じです。でも、中にはちがうものがあります。その1つが、双極性感情障害と双極性障害というわけです。
同じ疾患だけど、ICD-10とDSM-5で名前のつけ方が違うだけなんですね。
図でまとめておきます。
疑問が解決できたなら嬉しいです!
なお、今回参考にした書籍は以下の2冊です。精神科の診察室にもよく置かれている本です。
わからない病名・診断名を聞いたとき、くわしく知りたい病名がある時に、手元でサッと調べられるのでもっておかれると便利です。気になるサイズ感も写真付きでご紹介します。
診断基準となれば辞書みたいなサイズ・重さを想像しますが、案外小さくて軽いです。
A4と比べてこのサイズですから、携帯しやすいです。厚みも伝わるでしょうか?
ただし、値段は普通の本より高かったです。
現場では診断や病気についてあいまいな理解のまま話がされたりします。誤解がはびこっていることもあります。でもこの本をもっていれば真偽を調べることができますし、正確な情報をもとに支援ができるので便利です。
以上、「双極性感情障害と双極性障害に違いはあるのか?ICDとDSMがヒント」という話題でした。
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