
双極性感情障害と双極性障害って、どっちが正しいの?

実は、同じ病気のことなんです。名前が違うだけなんです。
この記事では、こんなことを書いています。
この記事でわかること
- 「双極性感情障害=躁うつ病=双極性障害」ってなぜ?
- ICD-10って何?(歴史や日本での使い方)
- DSM-5って何?(歴史や日本での使い方)
まず結論、「双極性感情障害=躁うつ病=双極性障害」です。
では、どうして名前が違うのか?それは、病気の分類の仕方が違うからなんです。
病気の分類の仕方には、ICDとDSMという2つの方法があります。
これから、詳しく説明していきます。

私は社会福祉士・精神保健福祉士として働いています。現場で10年以上の経験があります。
双極性感情障害と双極性障害の違いは?ICDとDSMが教えてくれる
これらは全部同じ病気のことです。
名前が違うのは、病気の分類の仕方が違うからです。
ICD-10とDSM-5のどっちを使って病気を分類しているかで、名前が変わるんです。
つまり、こういうことです。
次に、ICDとDSMって何かについて見ていきましょう。
ICD-10ってなに?
ICDは世界保健機関(WHO)が作った国際的な病気の分類表です。
正式には「International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems」と言います。頭文字を取ってICDと呼びます。
ICDは、すべての病気について、世界中で同じ分類をするために作られました。

どうしてICDが必要だったの?
国によって病気の分類が違ったら、どんな困ったことが起こるでしょうか?
例えば、私が日本で「双極性感情障害」と診断されたとします。
その後、私はアメリカに引っ越し、病院に行きました。でも「あなたは双極性感情障害ではありません」と言われました。
日本とアメリカでは、双極性感情障害の診断の仕方が違うのです。診察も薬ももらえませんでした。私は治療を受けられず、病気が悪化してしまいました。
・・・こんな話は、実際にあり得ます。
世界中で同じ病気の分類がなければ、海外に行ったり住んだりするのが怖いですよね。世界中で協力して、病気を研究するのも難しいですよね。
だから、世界中で同じ病気の分類をするために、WHOがICDを作ったのです。
ICDの歴史
ICDには長い歴史があります。最初のきっかけは1900年の国際会議でした。その会議でICDが作られました。
第1版から第9版までは、10年ごとに新しくなってきました。つまり、ICDー10の「10」は、10回目のバージョンのことです。
2019年には第11版が出来ました。ICD-11は、日本語に訳したり日本で使えるようにしたりしているところです。
今、日本でよく使われているのはICD-10です。
ICD-10は日本でどう使われているの?
日本では、厚生労働省がICD-10を使うことを決めました。厚生労働省によると
現在、我が国では、その後のWHOによるICD-10のままの改正の勧告であるICD-10(2013年版)に準拠した「疾病、傷害及び死因の統計分類」を作成し、統計法に基づく統計調査に使用されるほか、医学的分類として医療機関における診療録の管理等に活用されている。

難しい言葉が多いね・・・

要するに ①日本はICD-10を使って病気の統計調査をしている ②日本の医療機関はICD-10を使って病気を分類したり治療したりしている ということだね!
日本はWHOに入っているからICD-10を使わなきゃいけない
日本はWHOに入っています。
WHOに入っている国は、病気の統計調査をするときにICDを使わないといけません。
なので、公式な診断や報告、行政での認定などにはICD-10が使われています。
そのICD-10では、躁うつ病のことを双極性感情障害と分類しています。
なので、業界内では躁うつ病とか双極性感情障害という診断名が飛び交うことになっているのです。
DSM-5ってなに?
DSM-5はアメリカ精神医学会が作った精神疾患の分類と診断基準です。
DSMの正式名称はDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersです。
頭文字を取ってDSMと呼ばれています。

へー。DSMは精神医学会が作ったんだ。

そうです。そして、DSM-5の対象は精神疾患だけです。 ICD-10の対象はすべての疾患です。
DSMの歴史
1952年、アメリカ精神医学会はDSMの第1版を出版しました。
当初は統計調査を目的につくられたといわれています。
更新を重ねて、2013年に第5版で最新のDSM-5が登場しました。もちろん「5」は第5版のこと。バージョン5といったところですね。
現在では日本をふくめ、世界中で精神疾患の診断の分類や基準につかわれています。
DSM-5は日本でどう使われているの?
「DSM-5精神疾患の分類と診断の手引」では、DSM-5の使い方を次のように決めています。
DSM-5の第1の目的は、熟練した臨床家が、症例定式化のための評価の一部として行う診療患者の精神疾患の診断を助けることであり、それが各患者に対応した十分に説明された治療計画につながることになる。
つまりこういうことです。
「DSM-5は、精神科のお医者さんが診断や治療するときの参考に使ってくださいね。」
DSM-5は、精神科の病院や診療所のお医者さんが使っている分類・診断基準ということですね。
まとめ
ICD-10の精神疾患の分類名は、DSM-5とだいたい同じです。
でも、中には違うものがあります。その1つが、双極性感情障害と双極性障害というわけです。
同じ病気だけど、ICD-10とDSM-5で名前の付け方が違うだけなんですね。
図でまとめておきます。
なお、今回参考にした本は、下記の2冊です。
精神科の診察室にもよく置かれている本ですね。わからない病名・診断名を聞いたとき、詳しく知りたい病名がある時に、手元でさっと調べられるので便利です。
精神科の診察室にもよく置かれている本ですね。わからない病名・診断名を聞いたとき、くわしく知りたい病名がある時に、手元でサッと調べられるので便利です。
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