はっきり言って、あかんですね。
- 「呼び方」でカンタンに関係操作できる
- 大人の利用者・患者の呼び方【5パターン】
- 自立のためにも「呼び方」は重要
私は社会福祉士・精神保健福祉士として働いています。現場経験は約10年です。
呼び方はどれが良いでしょうか?
- 名字+さん
- 下の名前+さん
- ニックネーム・あだ名
- 〇〇くん、〇〇ちゃん
- 呼び捨て
結論は「名字+さん」です。
例えば明石家さんまさんなら、「明石家さん」です。
「そんなの知ってるわ!」と言われそうですが、なぜ「名字+さん」が良いのか説明するのは難しくないですか?
あるいは「あだ名でも良くない?」というご意見もあろうかと思います。
この記事は色んな呼び方パターンに私の意見をくわえつつ、「名字+さん」がベストな理由を解説していく内容です。
呼び方ひとつにこだわってこそ福祉現場のプロです。それではまいりましょう!
【福祉現場】利用者・患者の呼び方、どれにしてますか?【5パターン】
利用者や患者の方の名前は、どう呼んでいますか?あるいは、どう呼ぶのが良いと思いますか?
社会福祉士や精神保健福祉士、福祉現場ではたらく職員であるまえに、私たちもいち個人。
友達や恋人、夫婦間での関係があって、名前の呼び方も様々あるでしょう。
落ち着く、気持ちの良い呼び方・呼ばれ方は人それぞれですね。
〇〇さん、〇〇ちゃん、〇〇くん、ニックネームやあだ名もあるでしょう。
名前の呼び方・呼ばれ方は、その人との関係性をわかりやすく表しているポイントです。
プライベートでは、双方が納得している呼び方なら自由です。
では、福祉現場ではどのように呼ぶと良いのでしょうか?
プライベートと同じようにして、個人的な好き嫌いで名前の呼び方をかえるのはNGなのはわかってもらえると思います。
「呼び方」でカンタンに関係操作できる
人は呼ばれ方に合わせた立ち振る舞いをしやすいです。
人は環境に合わせて変化する傾向があります。呼び方もそのひとつだからです。
例えば、「〇〇さん」と呼ばれたら「〇〇さん」と呼ばれるのにふさわしい立ち振舞いを意識するようになります。
「〇〇くん」「〇〇ちゃん」と言われる場合も同じです。そういう距離・関係になるわけです。
「〇〇さん」よりは距離感は近くなりますし、仕事やビジネスよりも友達に近い親しい関係になると思います。
「〇〇先生」と呼ばれれば先生らしくなっていく。
先生らしい振る舞いをしたり、あるいは「自分は偉い人間なんだ!」と誤解するようになる・・・。まぁ、そういう弊害もあったりします。
「呼ばれ方なんて気にしてない人もいるんだけど!」という場合もあるでしょう。例外は確かにあります。
けれど、多くの人は、呼ばれ方にふさわしい行動をとりやすいです。
したがって、こうした原理を使うことで、関係性をカンタンにコントロールできます。相手とつくりたい関係性にふさわしい呼び方をすれば良いのです。
しかし「コントロール」とか「操作」と言うと、上から目線で悪い印象があるかもしれません。
けれど、利用者との関係性は、私たち専門職側が意図した形でつくる必要があると思います。
関係性を利用者任せにすると「振り回されている」状態になりやすいからです。
大人の利用者・患者の呼び方【5パターン】
名字+さん
施設や病院によって違いはあると思います。でも、基本は
「名字 + さん」
これが最も対等であり、尊厳に配慮した関わりであり、自立を損なわない最良の呼び方でしょう。
「明石家さんま」なら「明石家さん」です。
日本では、大人同士の関係の常識・マナーだからというのもあるでしょう。
どの福祉現場でも通じるベストアンサーは「名字+さん」です。私自身もこれです。
下の名前+さん
「下の名前+さん」で呼ぶと親密に見えるかもしれません。「名字+さん」よりも友達感がアップして、距離感は近くなるイメージでしょう。
「明石家さんま」が「さんまさん」と呼ばれるわけです。「明石家さん」よりも距離感が近づいた気がしませんか?
原則は「名字+さん」で呼ぶことになっている現場でも、施設内や病院内に同じ名字の方がおられる場合で、やむなく「下の名前+さん」で呼ぶことがあると思います。
ニックネーム・あだ名
てやんでい!
オレはカピバラでい。
ニックネームは「下の名前+さん」よりも、より一層、親密感・友達感がアップして、距離感が縮まる傾向です。
これを嬉しく思う人もいれば、「なめてるのか?」「馴れ馴れしいな」と腹を立てる人もいるでしょう。
例えば施設内では、支援者がニックネームで呼ぶ利用者と、苗字で呼ぶ利用者という違いが起きることがあります。
ニックネーム、あだ名には個人的な親しみ、好き嫌いが出やすいんですね。
これは平等性に欠けるので原則NGです。
加えて、人間関係に良い影響を与えません。カンタンに言えば、嫉妬や妙な力関係が発生します。
例えば、利用者さんが「A職員は”明石家さんま”のことを”さんちゃん”って呼ぶのに、私のことは苗字で呼んでる・・・。私のこと嫌いなのかな?」と受け止めてしまうことがあります。
呼び方は、施設内や事業所内で統一した方が良いと思います。
〇〇くん、〇〇ちゃん
大人がこのように呼ばれると、「子どもあつかいされた」と受け取る方もいるでしょう。
お互いをどう呼び合っているかにもよりますけど、職員は「名字+さん」で呼ばれているなら利用者さんと上下関係をつくることになります。
職員が上、利用者さんが下、みたいな。
これも原則NGでしょう。
呼び捨て
呼び捨ては、おそらくどの現場でもNGでしょう。
子どもの間は、呼び捨てで呼び合うのはよくあることだと思います。
でも、大人の関係で呼び捨てが使われるのは、とても親密な関係や、上下関係がある場合、怒られる場合(感情的な時)くらいではないでしょうか。
呼び捨てで利用者・患者のことを呼んでいるところがあったら、強烈な上下関係があるのでしょうから、虐待などが起きてはいないか心配です。
自立のためにも「呼び方」は重要
「利用者自身ができることは自分でしてもらう」くらいの距離感は保った方が良いです。自立を促すからですね。
この一定の距離感が相手の自立を促すし、振り回されることを回避できるポイントなのです。友達や親子関係とは違って、一定の距離感があるイメージですね。
良くないのは、相手が自分でできることも支援者がすることです。このようにしていると依存関係になったり、支援者が代行しきれなくなって断った時にクレーム等へと発展しやすいです。
一定の距離感は必要です。
一定の距離感を保つのに誰でもできるテクニックが「呼び方を変えること」です。
「名字+さん」はまさに最適なのです。
そんなに「名字+さん」じゃないとアカン?
ニックネームで呼んだ方が喜んでくれるし、心を開いてくれるやん?
その場は喜んでもらえるかもしれない。
けど長期的には依存関係をつくってしまうかも・・・。
確かに、ニックネームなどで呼べば、喜んでくれる方はいるでしょう。
周りから見ても関係性に特別感があるように見えて、うまく支援関係がつくれているように見えるかもしれません。
しかし、喜んでもらうのは名前の呼び方以外ではできないでしょうか?心を開いてもらう方法は、呼び方以外に無いでしょうか?そして、その先にどんな目標・ゴールがあるのでしょう?
私自身の経験によりますが、ニックネームや○○ちゃん等と呼んでいると「その場が良ければOK」という支援に陥りがちです。
関係性に節度が抜け落ちたり、意図しない依存関係になったり。支援者自身の心が制御しにくくなるリスクもあるでしょう。なので、よろしくないと思います。
社会福祉士も精神保健福祉士も、先を見すえた支援をするわけで。
究極的には「私たちが支援しなくても生活できる」というのが支援の到達点です。
そのためには、「ご自身でできることは自分でしてもらう」ということが必要です。
「名字+さん」であれば、お互いに節度を保ちやすい。
過度な甘えが起きにくいし、心理的にも巻き込まれにくくなる。
「自分でできることは自分でする」自立を目指した関係性にしやすいのです。
とくに、日々顔をつきあわせる環境(作業所・デイケア・病棟など)では、どうしても距離感が近づきすぎてしまいます。
接触回数が多いと親密になりやすいのは、心理学的にわかっていることです。「名字+さん」と呼んでいても、近づきすぎてしまうでしょう。
だからこそ、より一層、ニックネームやあだ名、「下の名前+さん」で呼ぶ必要性は無いのです。
【福祉現場】利用者・患者の呼び方 まとめ
大人の利用者・患者の方の呼び方は「名字+さん」がベストでしょう。理由は
① 尊厳や敬意がある
② 節度ある関係にしやすい
③ 自立を目指した関係にしやすい
といった具合です。
他にもいろんな視点のご意見あろうかと思いますが、現時点で私が思いつくのはこんな感じです。ご参考くださいね。
なお、利用者・患者さんとの関係性を意図的にあつかうには、自己覚知が必須です。詳細は社会福祉士の自己覚知【必要な理由・やり方を社会福祉士が解説】で解説しています。
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