
ケースワークを自分で組み立てられない・・・。どうやったら正解がわかるの?
こうした悩みのある方へ向けた記事です。

こんにちは!私は社会福祉士・精神保健福祉士で、現場での経験は10年以上になります。
ケースワークとは、社会福祉士や精神保健福祉士などの専門職が、困っている人やその家族と一対一で関わり、その人のニーズや問題を把握し、解決の支援をすることです。
ケースワークは、作業所やデイケア、相談支援事業所、高齢分野など、さまざまな福祉の現場で行われています。
このケースワークでは、支援者の私たちにも悩みがつきものです。困っている人を支援するのだから当たり前ですね。
クライアントの困りごとに対して、どう支援したら良いかわからないことも多くあると思います。例えば、
- どうしたら良いんだろう?
- どう言ったら良いんだろう?
- 〇〇と言われたらどう答えたら良いんだろう?
このように不安に思うことがあると思います。
私も福祉の仕事を始めた頃は、上司や先輩に「どうしたら良いですか?」と聞きまくっていました。
でも、そうした時に教えてもらえる”答え”は本当に正しいのでしょうか?それが正解なのでしょうか?
ケースワークの正解はない!?【福祉の現場で悩む人へのメッセージ】
ケースワークに正解はない
私がお伝えしたいのは、ケースワークに妥当な道はあっても正解は無いのではないかということです。
なぜなら、ケースワークは人と人との関係性で成り立つものであり、その人の人生に正解が無いからです。
例えば作業所(就労継続支援事業所など)で、
「自分のラーメン屋を開きたいです!」
と言う利用者さんがいたとき。(かなり極端な事例で、情報不足すぎな話ですが)
この場合、次のような応え方が考えられます。
- とにかく応援する
- 「うまくいかなかったらどうするの?」と心配する
- 利用者さんのアセスメント(評価)をする
- ラーメン屋を開きたい理由をもっと聞く
- ラーメン屋を開くために必要なことを一緒に調べたり考える
- 「あきらめた方が良い」と言う
実際は、それぞれをミックスしたり、もっと違う道もあるはずです。それこそ、支援者の数だけあるかもしれません。
では、どれが正しいでしょうか?
それぞれにメリットやデメリットはあります。ちょっと考えてみましょう。
- とにかく応援する
- メリット:利用者さんは喜んでくれるかもしれません。その場を気分よくまとめることができそうです。
- デメリット:利用者さんの現実的な課題やリスクを見落としてしまうかもしれません。利用者さんが本当にチャレンジして破綻したら大変です。
- 「うまくいかなかったらどうするの?」と心配する
- メリット:利用者さんにリスクや課題を意識してもらえそうです。また、利用者さんが自分で考える機会となるかもしれません。
- デメリット:利用者さんは不安や否定感を感じてしまうかもしれません。利用者さんの希望や夢を尊重しないように見えるかもしれません。
- 利用者さんのアセスメント(評価)をする
- メリット:利用者さんの能力や資源、ニーズや問題を客観的に把握することにつながります。利用者さんに合わせた支援計画を立てることにもなるでしょう。
- デメリット:利用者さんは、自分への評価に抵抗感や不信感を持つかもしれません。
- ラーメン屋を開きたい理由をもっと聞く
- メリット:利用者さんの気持ちや動機を知ることができます。また、利用者さん自身も、自らの動機を整理して理解する機会になるでしょう。
- デメリット:利用者さんは、自分の理由を説明しなければならないことに負担感や圧力感を感じるかもしれません。
- ラーメン屋を開くために必要なことを一緒に調べたり考える
- メリット:利用者さんが具体的な行動や目標を設定するのに役立ちそうです。また、利用者さんと協働的な関係を築きやすいでしょう。
- デメリット:利用者さんが自分で調べたり考えたりせず、あなたに依存的になるかもしれません。
- 「あきらめた方が良い」と言う
- メリット:利用者さんに現実的な判断や選択肢を示せるかもしれません。また、利用者さんが失敗した時に責任転嫁するのを防げるかもしれません。
- デメリット:利用者さんはショックや怒り、失望などの感情を抱くかもしれません。支援関係が切れてしまうかもしれません。
私は、どの答えも一概に否定したり肯定したりはしませんが、できるだけ利用者さんの立場や感情を尊重し、利用者さんの自己決定権や主体性を支えることが大切だと思います。
また、どの答えも一度で決めるものではなく、利用者さんとの対話や関係性の中で変化させていくものだと思います。
例えば、「あきらめた方が良い」と言うのは、最初から言ってしまうと失礼ですが、利用者さんと一緒に調べたり考えたりした結果に出た言葉なら違った意味合いが出てくるかもしれません。
そもそも「ラーメン屋を開きたいという希望は、作業所として支援できることなのか?」という疑問を抱く人もいるかもしれません。
ケースワークのコツ
この仕事を10年やって、20年やって、おじいさん・おばあさんになっても・・・
きっと、「絶対の自信」をもったケースワークができることは無いのではないでしょうか。
正解の無いことに、答え続ける。
おそらく多くの方がつきあたるケースワークの苦しみだと思います。
一朝一夕ではできないことですが、あきらめず経験を積むうちにクセづいてできるようになっていくはずです。
私がこれまで学んだケースワークのコツをいくつか紹介します。
- 利用者さんと話すなかで”答え”の方向性を探ってみる
- 「このケースワークの目的地はどこか」を意識する。目的地に向かうために、その場その場での「どうしたら良いか」「どう答えたら良いか」を考える
- 職場にやさしい先輩や上司がいても、「〇〇って答えたら良いよ」「そういうときは○○すると良い」「〇〇って言うと良いんじゃないかな」という”答え”を鵜呑みにしない
- 自分の経験や知識、価値観や信念を振り返り、利用者さんに押し付けていないか確認する
- ケースワークの過程や結果を記録し、振り返りや共有をする
まとめ
以上、『ケースワークに妥当な答えはあっても正解はないだろう』という話でした。その理由は、ケースワークが人と人との関係性で成り立つものであり、その人の人生に正解が無いからです。
しかし、それゆえにケースワークは面白くやりがいのある仕事だと思います。
これから福祉の仕事をする方、ケースワークに取り組んでいる方、ともにがんばりましょう!
余談
ケースワークに正解は無い理由の1つは、人の人生に正解が無いからです。
支援を通して得たこの気づきは、私の人生にまで影響するようになりました。
その気づきとは、私の人生にも正解は無いということです。
しかし日本では、『こうあるべき』みたいな価値観や『普通は〇〇』みたいな圧力が多くて、自由に生きづらいと感じます。
価値観の多様さを認めない、毛色の違う者は排除する向きがありませんか?仕方なく、他人の期待する人生を送ってしまっている人も多いように思います。これじゃ幸せに向かっていかないですよね。
でも、ケースワークに向き合っていると、私たち自身が変わっていくと思います。
例えば私は、ケースワークを通して既存の価値観や生き方、ライフスタイルから解放されていき、「どう生きたいか」を考えて過ごす日々となりました。
これがなかなか刺激的で、楽しいです。
これも「社会福祉士・精神保健福祉士になって良かった」「ケースワークをしてきて良かったなあ」しみじみと思うところだったりします。
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