

役立てるかどうかは、それぞれの専門力次第だ。
需要は高まっているし、資格はあると役立つ。
こんにちは!社会福祉士・精神保健福祉士のぱーぱすです。いつのまにか資格取得してから10年が過ぎました。
この記事は「精神保健福祉士は役に立たない?」というギモンに答えた後、需要・将来性がある理由5つを徹底解説する内容です。次のようなギモンのある方に役立つでしょう。
精神保健福祉士へのギモン・資格は取る価値あるの?意味ないんじゃない?
・役に立つの?
・需要、将来性はあるの?
・仕事はあるの?
・資格のメリット、デメリットは?
こうしたギモンがあるまま資格取得をめざすと「こんなはずじゃなかった」と後悔するかもしれません。
すでに精神保健福祉士という方にとっても、「役に立たない」と悩むのは辛いことですから放置は危険です。
この記事を読んでいる方は精神保健福祉士についてしっかり調べている方でしょうから、精神保健福祉士として活躍する力をもっているに違いありません。しかし、力を発揮するには、知っておくべきポイントがあるんです。
いまから徹底的に解説していきます。ではまいりましょう!
精神保健福祉士は役に立たない?需要・将来性は?PSWが徹底解説
これは精神保健福祉士の価値そのものを問う疑問ですので、ハッキリと辛口で解説します。
資格を取れただけでは役に立たないのは正解
認めたくありませんが・・・、精神保健福祉士は資格を取れただけでは役に立たないのは当たっているでしょう。
そもそも精神保健福祉士の仕事は「質さえ問わなければ誰がやっても良い仕事」という特性があります。これは、精神保健福祉士が名称独占の資格であるがゆえの特性ともいえます。
名称独占の資格というのは、資格をもっていない者は名乗ることを禁止されている資格です。その名のとおり、名前を独占する資格なのです。
対して、業務独占の資格というのがあります。これは、その資格をもつ者だけがその仕事をできるということです。業務独占の資格もその名のとおり、業務を独占する資格です。
例えば精神の分野でいうと、医師の役割は、診察・診断・投薬の調整・診断書作成などです。看護師の役割は、診察の補助、病気や怪我の介助、体調・服薬の管理、注射などの医療行為を行います。
じゃあ、精神保健福祉士は何をするのか?
一文で表現すると「精神障がいのある方の生活のしづらさを支援する仕事」といえます。


そのとおり。
だが、その誰でもできる仕事を高いクオリティでするのが精神保健福祉士だ。
学習し続けないと、自他ともに「精神保健福祉士は役に立たない」と感じてしまう
精神保健福祉士がするのは、業務の質さえ問わなければ誰がやっても許される仕事。精神保健福祉士は雑用だってよくします。
なので、「精神保健福祉士は何をしてくれるんだ?」「何が得意なんだ?」と周りの目に映ることがあるわけです。こうした目線の中で、「精神保健福祉士は役に立たない」と周りに思われたり、自分自身もそう感じてしまうことがあるのでしょう。
精神保健福祉士の無資格者との違いは知識・技術・価値といった専門力にあります。しかし悲しいことに、資格をとるだけではこれらの専門力は全く不十分なのです。
資格をとれただけの精神保健福祉士では、誰でもできることを誰でもできるくらいのレベルでしかできないのが普通です。現場で「精神保健福祉士は役に立つ」と思われるような実績をしめせないのです。
その理由は、資格知識はあくまでも理論だからです。理論を実際の支援で活かすには、経験が必要です。数年レベルの時間がかかるということです。
例えば「個別化」が支援の原則ときいて、これを実際にするのはカンタンでしょうか?「個別化」をするには、例えば各利用者の背景・思い・障がいへの理解、自己覚知などができていないとカンタンではありません。これらに熟練するには、かなりの経験や時間がかかるのが普通なのです。
さらに、国家試験でもとめられる知識は「どの現場の精神保健福祉士も最低限必要」というレベルの知識です。各現場で役立つ知識は、もう少し狭くて、もっと深い知識です。各現場とは、例えば精神科病院・精神科クリニック、障害福祉サービス事業所、行政機関などのことです。
各現場に合わせた知識をさらに学ばないと、役に立つ精神保健福祉士にはなれないでしょう。なので、資格を取れたての精神保健福祉士が役に立つまでは時間がかかります。
ところが、精神保健福祉士は熟練しないうちから利用者や患者の人生を支援することになります。人の人生には正解がありません。どんな生活が良いか、どんな人生にしたいのかは人それぞれです。
したがって、支援にも正解は見つかりません。自らの仕事による結果や変化がわかり辛いし、できたのかできていないのかもわからない。言葉で周りに説明することも難しい。
こうした状況の中で精神保健福祉士は、2つの落とし穴に落ちてしまうのです。
・周囲から「精神保健福祉士は役に立たない」と評価される
・自分自身も「精神保健福祉士は役に立たない」と評価してしまう
厳しいことを言ってしまうと、精神保健福祉士として役に立てるかどうかは、現場についてからも学習・実践を繰り返せるかどうかにかかっているのです。資格をとっただけで役に立つレベルの業務ができるわけではないのです。

えー、資格勉強だけでも大変やったのに~
まだやらなアカンの?

気持ちはわかる。
できる範囲でコツコツ続けてな。
役に立つレベルの仕事をするために必要なことは何か。
例えば、利用者・患者の方の精神疾患はどんな病気で生活にどんな障がいをもたらすのか、どんな生活をしたい人なのか、何ができて何ができない人なのか、精神保健福祉士・所属機関として支援できることは何なのか、今の支援はどういう段階にあるのか。
こういったポイントを確認しながら、意図的に関わっていけるようになることでしょう。しかし、熟練するまでには時間が必要です。
現場についてからは分かれ道があります。
経験と理論の学習を続けられる精神保健福祉士と、資格をとった後は学習をやめて自己流にハマっていく精神保健福祉士に分かれていきます。精神保健福祉士の質がピンキリなのもそのためです。
大切なのは、誰にでもできる支援を、精神保健福祉士ならではの一味違うクオリティで実践することです。これができれば「役に立たない」とは言わせない精神保健福祉士の仕事ができるでしょう。
そのためには、研修参加でも読書でも仲間との議論でも、何でも良いので学習しつづけることが大切です。私自身も日々学習してこのブログで発信しているので、活用してもらえるでしょう。
精神保健福祉士は需要も将来性もある理由TOP5
精神保健福祉士の実態は、ピンキリということでした。その一方、精神保健福祉士の需要は高まっており、将来性があるといえます。理由を5つご紹介します。
精神疾患が5大疾病の1つに
精神疾患は4大疾病に追加されて5大疾病の一つになりました 。2013年度の医療計画からのことです。5大疾病というのは、厚生労働省が対策に重点的に取り組むべきとしている疾病です。精神疾患のほかには、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病があります。

ガンとか脳卒中の仲間になったん?

そうだ。5大疾病は誰もが知ってる病気。
それだけ精神疾患もメジャーになったんだ。
精神疾患に特化した国家資格は精神保健福祉士です。厚生労働省が重点的に対策するにあたり、精神保健福祉士の需要は高まっていくでしょう。
精神疾患の患者数は400万人を突破
2017年、精神疾患患者数は400万人を超えて419万人となりました。2017年の日本人人口は1億2680万人でしたから、精神疾患患者の人口比率は約3.3%です。 30人に1人ということです。
精神疾患はとても身近な病気になっています。5大疾病の1つになるのも当然です。
2002年の精神疾患患者数は258万人でした。つまり、15年間で約60%増です。しかも、近年も増加し続けています。
特に、うつ病・認知症患者の増加が目立っています。じっさい、精神科病院では認知症の入院患者割合が増えています。(参考:厚生労働省『みんなのメンタルヘルス総合サイト』精神疾患のデータ)
精神保健福祉士の支援を必要とする方はますます増えているのです。
職域が拡大し、求人もある

精神保健福祉士って求人少ないし就職できんのちゃうん?

求人、検索してみたことあるか?
検索するといろいろ出てくる。人手不足のところも多い。
「精神保健福祉士には仕事がない」 「働き口がない」「取っても意味がない」
精神保健福祉士にはネガティブなイメージが広まっており、求人の無いイメージをもつ方が多いように感じます。
ところが実際には、精神保健福祉士に期待される役割は増えていると言えます。従来は行政・医療機関・地域施設がメインの職場でしたが、現在はもっと多様な現場で精神保健福祉士が求められています。
「ほんとに?」という方は、一度、求人をチェックしてみてください。例えば、Indeedで精神保健福祉士の求人を調べるといろいろ出てきます。お住いの地域等を入力してもらうともっと絞れます。
私がサラッと調べてみただけでも、以下のようにたくさんの求人がありました。
・地域施設(障害福祉サービス事業所など)
・行政機関(精神保健福祉センター、保健所、精神医療センター、MSWの現場など)
・社会福祉協議会
・市役所(家庭児童相談員など)
・高齢者向け住宅の相談員、生活相談員、デイサービスの相談員
・メンタル相談、いじめ相談
精神保健福祉士の求人は無いとウワサされますが、果たして本当か。確認せずに決め込むとチャンスを失いかねません。こちらでもくわしく解説しています。

AIで代わりにくい
近年、発展がすさまじいAI技術。しかし、AIでも、精神保健福祉士の仕事は代わりにくいと言えます。さまざまな研究で報告されていることですが、例えば野村総合研究所が2015年に発表したレポートによると
創造性、協調性が必要な業務や、非定型な業務は、将来においても人が担う
引用元:野村総合研究所「日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に」
とされます。これ、まさしく精神保健福祉士の業務です。精神保健福祉士の仕事は創造性・協調性が必要で、非定型な仕事です。
精神保健福祉士の仕事は正解のない人生をあつかうので、型にはまりません。どのような支援が良いかは百人百様です。また、様々な機関と協力する必要がありますし、新たな支援・ネットワーク・制度などをつくる役割もあります。
精神保健福祉士の仕事はAIで代わりにくい特性があると言えます。精神保健福祉士は将来性があると考えられる理由です。
精神病床の平均在院日数はダントツで長い
精神病床の平均在院日数は266日です。約9か月間です。平均在院日数とは、入院してから退院するまでの期間の平均です。(参考:厚生労働省「病院報告」)


9か月入院したことのある方はおられるでしょうか?ほとんどおられないと思います。
9か月間も入院すれば、学業・職業・生活に甚大な影響を与えるでしょう。休学・休職したとして戻れるのかどうか。夫婦関係・親子関係はどうなるのか。人生に取り返しがつかないレベルのダメージを受けるでしょう。
平均在院日数を比べてみると、一般病床では16日、療養病床でも140日です。精神病床は不名誉なぶっちぎりの1位です。
じっさい、私が関わった患者さんには、入院が10年以上となって「もう帰る家が無い」「病院が住所になっている」という方がおられました。
OECD加盟国のうち、精神科病床の平均在院日数の1番長い国は日本です。2番目に長いポーランドと半年以上の差をつけて圧勝(皮肉)です。(厚生労働省 第8回 精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会 参考資料より)
しかも、人口あたりの精神科病床数が一番多いのも日本です。
入院期間については、こんな記事も書いています。入院40年となった方の話です。

精神疾患や精神障がいがあっても、地域であたりまえの暮らしができる社会をつくる。この役割が精神保健福祉士にはあります。精神保健福祉士の役割・使命は、日本でいまだ残る長期入院・社会的入院の解消にあるのです。
精神保健福祉士の資格メリット・デメリットは?
ここからは、精神保健福祉士という資格は役に立たないのか?というギモンに答えるべく、取得するメリットとデメリットをまとめてカンタンに答えていきます。
精神保健福祉士の資格メリット
資格手当をもらえる
精神保健福祉士の資格があれば、資格手当のもらえる職場があります。手当がもらえるのは職場の27.6%ですが・・・。もらえる場合の平均手当額は13,147円です。
(参考:精神保健福祉士就労状況調査結果)
精神保健福祉士資格が必須の現場で働ける
精神保健福祉士資格を採用要件とする求人があります。例えば、行政や精神科の医療機関です。そういったところで働きたい場合、精神保健福祉士の資格は役に立ちます。
専門性の証拠
精神保健福祉士と名乗れるので、名刺に堂々と精神保健福祉士の肩書きをかけます。
精神保健福祉士は国家資格ですから、国が専門的知識を保証しているということになります。
とうぜん、専門性はある方が(あると思ってもらえる方が)、利用者や関係者から信頼を勝ち得やすいです。とくに相談支援関係では信頼感はとても大切ですから、精神保健福祉士資格はあった方がスムーズに支援しやすいでしょう。
精神保健福祉士の資格デメリット
無資格でも働ける現場か多い
精神の分野の福祉現場では、精神保健福祉士の資格が無くても働ける現場がけっこうあります。資格を取れなくても働けてしまうので、「せっかく精神保健福祉士を取ったのに役に立たない」と感じることがあるかもしれません。
資格難易度の割に給料・年収が見合っていない
国家資格であり、取得難易度もなかなかの精神保健福祉士資格。
「年収や給与は見合っているのか?」と聞かれたら、全力で
見合ってない!
と答えます。民間だと大学生初任給レベルに毛が生えた程度でとどまります。


精神保健福祉士の平均年収は347万円です。調査と同じ年の全産業の平均年収は415万円でしたから、少なめという感じです。(精神保健福祉士の年収について詳しく知りたい方はこちらの記事へ)
このような低収入のなかで私たちはどうやってお金を貯め、増やしたら良いのか?私たちができるお金の貯め方や増やし方をまとめました。

まとめ
結論をまとめます。
精神保健福祉士は名称独占資格なので、精神保健福祉士じゃないとできない仕事はありません。無資格や素人との違いは専門力です。なので、役に立つレベルの仕事をするには専門力が必要です。
専門力を鍛えるには、就職後も学習しつづけることが最重要ポイントです。
誰もが、役に立つ精神保健福祉士になる力をもっています。でも、役に立つ精神保健福祉士になるには年月と、継続した学習が重要なのです。
学習方法は研修、読書、仲間との会話、なんでも良いので、少しでもプラスし続けて、誇れる精神保健福祉士になりたいですね。このブログでも実践ノウハウ等を発信しています。もちろん、どの学習スタイルが合うかは人それぞれです。
というわけで、めちゃくちゃ辛口表現ですが、ハッキリ言うとこうなります。
・学習しつづける精神保健福祉士は役に立つ!
・学習をやめた精神保健福祉士は役に立たない!
とても辛口になりましたが、利用者や他職種からの視点はこれくらいシビアなものではないでしょうか。
そのいっぽうで、精神保健福祉士の需要は高まっており、将来性もあるでしょう。働き口に困ることはそうないと思われます。福祉現場はどこもが人材不足になげいていますから。
最後にちょっと余談です。
名称独占資格では「役に立たない」という疑問が起きがちのようです。精神保健福祉士だけじゃないんですね。なので、精神保健福祉士が役に立たないと感じられるのは、名称独占資格ゆえの悩みともいえます。
名称独占資格の一覧はこちらです。見ていただくと「知らない資格が多い」と気付かれるでしょう。
(業務独占にすれば良いという話ではありません。業務独占にすると、精神障がいのある方の相談支援は精神保健福祉士しかやってはいけないなんてことになります。当事者にとってはかえって不利益でしょうから。)
以上、精神保健福祉士は役に立たない?需要・将来性は?PSWが徹底解説という話題でした。
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