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児童福祉司と医療ソーシャルワーカー(MSW)の連携と立場の違い|現場から見えたリアル

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児童相談所とMSWって連携することあるの?

児童相談所で働いていると、医療ソーシャルワーカー(MSW)の方々と関わる機会は多くあります。
でも、日々の連携の中で、「同じソーシャルワーカーでも、見ている景色が違うな」と感じることがあります。

MSWは主に大きな病院や大学病院など、入院病床を持つ医療機関で働いています。
最近は多くの病院に数名のMSWが配置されており、それだけ医療現場でのソーシャルワーカーの存在感が高まっていると感じます。

児童福祉司とMSWが関わる典型的な場面のひとつが、医療ネグレクトに関する通告です。

今回は、現場での医療ソーシャルワーカー(MSW)との連携を、児童福祉司の立場から考えます。

書いた人:ぱーぱす(社会福祉士・精神保健福祉士)
自治体で働くソーシャルワーカー。児童相談所などでの実務経験をもとに発信。
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医療ネグレクトでの連携:通告のきっかけになるケース

例えば、糖尿病を患う中高生が通院を拒否している。
親も十分に関わらず、通院を放置している──。
このような場合、「医療ネグレクト」として病院から児童相談所に通告が入ることがあります。

私はこれまでに複数回経験しました。
本人は反抗期もあって「なんで俺が行かなきゃいけないんだ」と反発し、親もどうにもできずに困っている。
医療の必要性を理解しづらい年頃でもあります。

また、宗教的背景で医療を避ける家庭についての通告もあります。
輸血を受けさせない、命に関わる病気でも受診しない──。
調査すると特定の宗教を信仰していることが分かる。
そうしたケースも、結果的に「医療ネグレクト」として通告されることがあります。
私自身、宗教的背景を持つ家庭への対応を担当した経験もあります。

さらに、自傷行為で入院した子どもの事例では、退院後の再発リスクを心配した病院が、
「親の危機感が薄い」「支援体制が弱い」と判断し、ネグレクトとして通告する場合もあります。

このように、病院発の通告の多くは医療ネグレクトに関するものです。
情報は主治医や看護師からMSWへ、そしてMSWが児童相談所に通告するという流れが一般的です。

一時保護委託での連携

児童相談所では、一時保護委託を病院に依頼することがあります。
この場合もMSWとの調整が必要です。
詳細はこちらの記事でも書きましたが、入院を一時保護の形で実施する際の連携は重要です。

「同じソーシャルワーカー」でも簡単にはいかない理由

MSWも児童福祉司も、社会福祉士や精神保健福祉士といった同じ資格を持つソーシャルワーカー同士です。
それなら、話が噛み合って連携もうまくいく──と思いたいところですが、現実はそう単純ではありません

なぜなら、

組織を背負っていること
組織の使命が違うこと

この2点が大きく影響しているからです。

児童相談所の使命は「子どもの最善の利益」です
一方、病院(MSW)が所属する組織の使命は「患者の治療と回復」。
背後には医師の指示や医療方針があり、それが強く反映されることもあります。

MSWの方々は、決して「病気や治療だけを見たい」と思っているわけではありません。
本来は、患者や家族の生活背景まで視野に入れて支援したいと考えている人が多い。

しかし、医療組織の性質上、医師の治療方針を軸に話さざるを得ない構造があり、
結果的に「治療を最優先にした発言」をしているように見える場面もあります。
かたや児童福祉司は「子どもの生活全体」を見る立場。病気の治療はその一部と考える。

この違いが、価値観のズレや緊張関係を生むことがあります。

現場で感じる「使命のずれ」

たとえば、病院側が「糖尿病だから受診させるべきだ」と明確に主張するケース。
医療的には当然正しいのですが、家庭や本人の状況を考えると、
児童福祉司としては「どう支えるか」を一歩引いて考えることがあります。

また、親が入院することで子どもの生活が立ち行かなくなる場合もあります。
母子家庭の母親が入院し、代わりの養育者がいない。
病院としてもその深刻さは理解しているものの、医療の範囲を超える部分への対応は難しく
結果的に「子どもの生活」は支援の手が届きにくい領域になります。
しかし、生活は明らかに危機的です。

このような時、自治体機関がショートステイ等を手配することがあります。
より緊急性が高い場合には、児童相談所が一時保護を行うこともあります。

病院が患者の治療に集中するのに対し、児童相談所(や自治体の家庭児童相談室)は「子どもの生活を守る」役割を担う。
ここにも、それぞれの使命の違いが表れています。

MSWの立場の難しさ

私の印象では、MSWの裁量や発言力は病院によって大きく差があります。
医師の意向が強く影響する職場も多く、間に挟まれて苦労しているのが実情に思われます。

MSWは、患者・家族・医師だけでなく、看護師やリハビリ職などのコメディカルとも調整を行います。
医療チーム全体の中で、ソーシャルワークの視点をどう発揮するかという難しさがあります。

まさに、「多職種の間での板挟み」という立場に置かれやすい仕事だと思います。
今、MSWとして働いている方々には敬意を表したいです。

私自身の経験から

私も社会福祉士の実習時代、MSWの現場を経験しました。
さらに、精神科の診療所で働いたこともあります。
その中で感じたのは、医療現場の「医師のカラー」が非常に強いということ。

医師によって、ソーシャルワーカーの動き方が大きく左右される。
その環境の中で自分がどう動くか、当時は正直、息苦しさも感じました。

終わりに 連携の鍵は「顔の見える関係」

結局のところ、児童福祉司とMSWの連携とは、それぞれの使命の違いを理解しながら調整することに尽きる。
同じソーシャルワーカーでも、時に気まずい折衝や緊迫した調整が必要になる。
それだけ、社会福祉士や精神保健福祉士の活躍の場が広がっているとも言えます。

どう連携を深めるかの鍵は、「顔の見える関係」です。
できれば、直接会って話す、同じ空間で言葉を交わす
それだけで誤解が減り、関係がぐっと良くなることを、私はたびたび経験しています。

しかし、どうしても対立せざるを得ない時もある。
意見・方針が一致しないことはあります。
それでも、私はソーシャルワーカーとして誠実に働くことを大切にしたい。

私たちは、組織の一員でありながら、ソーシャルワーカーとしての理念を持つ存在です。
その間で葛藤し、もがきながら働いている。

それでもやはり、私は思います。
一番大切にしたいのは、「ソーシャルワーカーとしての立場」。

それをどう現実に落とし込むか。
そこにこそ、ソーシャルワーカーの誇りと専門性があるのだと思います。

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