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運営と本音

取材・講演のご依頼について―顔出し・声出しをお断りしている理由―

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ある程度長くブログを書き続けていると、時に取材や講演のご依頼をいただくことがあります。本当にありがたいです。

ただし、お受けできるものと、お受けできないものがあります。

その基準はひとつで、私の匿名性を保てるかどうか。
この一点なのです。

ご関心のある方は少ないと思いますが、今日はそうしたお話をさせていただきます。

筆者:ぱーぱす(社会福祉士・精神保健福祉士)
自治体で働くソーシャルワーカー。児童相談所などで十数年の実務経験あり。
このブログでは、福祉を学ぶ人・働く人が明日から使える視点を持ち帰れるよう、現場の知見や考察をもとに発信しています。
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匿名性を守る理由

もどかしく、歯がゆい思いをしながら、ご依頼をお断りすることがあります。

私が匿名性を維持しなければならない理由は、まず自分の所属組織の看板を背負うわけにはいかないということ。そして、あくまで「私個人」としての発信である必要があるからです。

また、私が関わってきた方々――支援を受けた側だけでなく、時に介入された側の方々に、不利益が及ばないようにするためでもあります。

もし自分が誰かに支援を受け、その人を信頼して話した内容が、ネット上で広く公開されていたとしたら…。
そんな相手に安心して話せるはずがありません。

それは社会福祉士や精神保健福祉士としての守秘義務違反である以前に、人としての倫理に反することでもあります。

具体性を出せないもどかしさ

だからこそ歯がゆさもあります。

福祉の支援やノウハウの話をしたい。
しかし具体性がなく、抽象化した話だと、正直なところ面白みに欠けます。

福祉の理論書がなかなか広く読まれにくいのは、現場とリンクしにくい感覚があるからではないでしょうか。
理想だけを語られているように感じてしまう。

だからこそ爆発的に売れる本が少ないのだと、私は思っています。

多くの著者が、守秘義務という制約の中で書いています。
個別具体のケースには、試行錯誤や失敗、葛藤、実践の知恵が詰まっています。そこにこそ価値がある。

しかし、個人を特定できる情報は原則として出せない。

このもどかしさは、多くの発信者が感じているのではないかと思います。

同じケースは二つとない

同じ「20代のうつ病の男性」というカテゴリに属していても、背景も性格も家族構成も、悩みも違う。同じケースは二つとありません。

ですから、支援した経験があったとしても、「私は20代男性のうつのケースをたくさん支援してきました」と偉そうに言うものではありません。

いつだって初対面、いつだって「はじめまして」です。

言いたい。でも言えない。

何をどこまで言えるのかは永遠のテーマです。

言いたい。共有したい。
支援者の悩みやノウハウのお話をしようと思うと、具体性は強い力を持ちます。

しかし、それをしてはいけない理由もハッキリしています。
個人情報であり、守秘義務があるから。

結局のところ、具体的な知識や技術は、現場で具体的に共有され、積み上げられ、助言を通して人が育っていく。現場での影響力が最も大きいのが、現状だろうと思っています。

本から学ぶこと、現場で育つこと

抽象的な本から学び取り、今の現場に当てはめるには、思考の段階がいくつも必要です。誰にでもすぐできるわけではありません。

一方、現場では目の前に具体的な事例があります。その中での作業が、人を育てていると思います。

誰と働くかは、やはり大きい。
運もあり、巡り合わせもあり、最後は自分が飛び込めるかどうか。そこに成長があるのだと思います。
▶私のソーシャルワーカー人生を変えた6人のモデル【14年の歩み】

それでも、ブログに意味はある

では、匿名で書くブログには意味がないのか。
そうではないと思っています。(信じています)

現場ではないからこそ、しがらみのない言葉を書けます。
同じ悩みを抱える人が、自分だけではなかったと気づけるかもしれません。

影響力は現場ほど強くないでしょう。
しかし、そこから得られるものもある。価値を感じてくださる方がいるからこそ、このブログは続いています。感謝でしかありません。

二つの積み上げ

私自身、本当は取材や講演に出て話したい気持ちもあります。
しかし、今の仕事を続けている限り、それは難しい。

仕事とブログ。

それぞれで得た評価や実績が、もう一方の世界に反映されることはありません。

仕事での私と、ブログでの私は、匿名性によって切り分けられています。

ゆえに、これは私の承認欲求がちょっと満たされない部分でもあります。

それでも、これは自分で選んだ制約です。
受け止めながら、続けていくしかないと思っています。

改めて、私の立場

取材や講演のご依頼は、本当にありがたいです。

しかし、匿名性を維持できない形ではお受けできません。

歯がゆいですが、これが私の立場です。
どうかご理解いただければ幸いです。

そして、それでもこのサイトに価値を見出してくださる方がいること。
心から感謝しています。

具体性と倫理のバランスという技術

個別具体例を出せないからこそ、逆に具体性を巧みに扱っている著者の本は魅力的に映ります。

例えば、精神科医 岡田尊司さんの本は、とても面白いと感じています。

歴史上の人物や有名人の生い立ちや背景をひもときながら語られるため、抽象的ではなくリアルです。診察した患者を出すわけにはいかない。しかし公開情報をもとに分析するのであれば守秘義務に反しない。

その手法は非常に巧みだと思います。

統合失調症、発達障害、愛着、親子関係、いじめ――福祉に携わる人にとって学びの多いテーマを、具体性を保ちながら掘り下げている。
だから刺さるのだと思います。

私はこのブログでも、岡田尊司さんの本をよく勧めています。

専門的でありながら人間理解が深まる。その魅力は、具体性と倫理のバランスを見事に取っている点にあるのだと感じています。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

関連記事

下記の記事でも、匿名で発信するもどかしさについて書いています。
▶匿名で語る福祉ブログに、どう説得力を持たせるか――「何を語ったか」ではなく「何をやってきたか」

匿名である以上、
「いったい私は何をしている人間なのか」
「本当に現場で働いているのか」
「嘘ではないのか」
そうした疑問を完全に払拭することはできません。

そして、「口だけなのではないか」という疑念も、どうしても残ります。

正直に言えば、私自身が読む側だったとしても、“本当にやっている人間”の言葉を聞きたいと思うはずだからです。

そんなもどかしさを率直に書いた記事です。

この記事を書いた人
ぱーぱす

自治体で働く社会福祉士・精神保健福祉士|現場経験15年、地域・医療・行政の3つの立場を経験。ブログ歴6年、記事約400本。福祉職のキャリアや生活に役立つ実践的な情報を発信しています。

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