
ソーシャルワーカーに必要なコミュニケーション能力ってなんだろ?
社会福祉士や精神保健福祉士の仕事は、相手に誠実であることが前提だと私は考えています。
自分の利益のために騙す、利用する――そんな関わりは論外です。
支援者が誠実であることは、この仕事の土台です。
ただ、ここでひとつ厄介な真実があります。
誠実でありたい。
でも、“全部を真正面からそのまま伝える”だけでは、現場でつまずく。
私は、これを仕事の中で痛いほど経験してきました。
だからこそ、この記事ではあえて言い切ります。
結論
- 社会福祉士・精神保健福祉士にとって「方便」はコミュニケーション能力の1つ。
方便というと「ごまかし」「嘘」というイメージを持つ人がいるかもしれませんが、私が言いたいのはそうではありません。
ここで言う方便とは、“相手の利益のために、伝え方を調整するコミュニケーション能力”です。
誠実さだけでは関係が壊れる理由
私は、真正直すぎる伝え方をして、関係性が悪化した経験をたびたびしてきました。
- 本心そのままをぶつける
- 相手の受け皿を考えない
- 「100の事実」を100の強度のまま伝える
- 上司から聞いた言葉をそのまま伝える
こうした関わり方では、摩擦や対立が一気に増えます。
ソーシャルワーカーは毎日のように交渉・調整・連絡の渦中にいる職業です。
だからこそ、言い方・順番・強度を調整するコミュニケーション能力が必要になる。
誠実さは前提だとしても、“そのままの言葉で渡す”だけでは現場は動かないし、摩擦によって支援者の心ももちません。
震度10をそのまま伝えない

私は長いあいだ、ひとつの疑問を抱えていました。
「誠実さと方便は矛盾しているのでは?」
正直でないことは、悪ではないか
――そう思っていました。
とても、むず痒く感じるのです。
しかし、現場で働き続けるうちに、この考えだけではやっていけないことに気づきました。
あるとき、道路や橋の構造を見てハッとした瞬間があります。
橋の両端には、硬い部分と硬い部分をつなぐ“クッション材”があります。
このクッションがあることで、橋は壊れずに機能し続ける。
電車のレールにも同じ仕組みがあります。
つなぎ目にわずかな遊びがあるから、揺れや衝撃を吸収できる。
そのとき私は、ふと思いました。
「あぁ、ソーシャルワーカーって、この“つなぎ目”なんだ」
支援者が震度10の事実や感情を、そのまま利用者へ、家族へ、関係者へ伝えてしまえば、どこかが崩れます。
人も、関係性も、支援そのものも壊れかねない。
だから私たちは、震度10を3・4・5へと変換して届ける役割を担っています。
そのために必要なのが、私の言う“方便”です。
嘘をつくわけではありません。
相手が受け取れる形に取捨選択し、変換して届ける技術。
これができないと、ソーシャルワーカーは続けられない――私はそう思っています。
私たちが担う「調整」という仕事は、この点に凝縮されているのではないでしょうか。
「方便=調整、翻訳、クッション」

「方便」という言葉には、“うそも方便”のように、嘘を肯定するニュアンスがあり、抵抗感があるかもしれません。
そこで言い換えるなら、次のようにも言えます。
- 調整
- 翻訳
- クッション
どれも核心は同じです。
大事なのは、
「相手の利益のために、何をどこまで、どの強度で伝えるか」
を考えること。
判断軸は、やはりクライエントの利益です。
震度10をそのまま伝えて問題が起きないのであれば、そもそも私たちが間に立つ必要はありません。
現場で私たちが“ケース”として関わることもなかったでしょう。
しかし現実には、何らかの支障があるから依頼が入り、相談が生じ、調整が必要になる。
だから、私たちは“間”に立つ。
取捨選択し、変換し、クッションとして衝撃を吸収し、
ときに心情を代弁しながら届ける。
その営みこそが調整であり、私たちが存在する理由だと思っています。
まとめ
- 誠実さは前提
- 方便はコミュニケーション能力のひとつ
- ソーシャルワーカーは“つなぎ目のクッション材”のような役割
- 震度10をそのまま伝えないことが、“調整”の中身である
誠実さと方便は、一見すると矛盾しているように感じられます。
しかし、方便は現場の実務において間違いなく必要な技術です。
そしてこれは、社会福祉士・精神保健福祉士に不可欠なコミュニケーション能力のひとつだと私は考えています。
関連記事
▶社会福祉士・精神保健福祉士は、“コミュ障”でもやっていけるのか? 苦手でも大丈夫か?
基本的には、経験で補っていけるものだと思います。
多くの人は仕事をしながら伸ばしていけます。
ただし、「伝え方がうまい」「コミュニケーション能力が高い」と言われるようになるには、経験だけでなく、知識の吸収と実践も必要です。
▶社会福祉士ってどんな仕事なのか? 全体像をざっくり知りたい方へ
社会福祉士の役割や働く場所、業務の幅などをひと通りつかめる記事です。
▶社会福祉士になるにはどうしたらいいのか? 国家資格の受験資格の取り方を解説
受験資格ルートの違いを知りたい方に向けて、最短ルート・一般的なルート等を整理しました。





コメント