児童養護施設で育った20歳の人たちを祝う記事が、WAMNETというサイトに載っています。
※WAMNETはもう見られなくなっちゃったので、代わりに↓は熊本日日新聞です(全部は読めません)
記事では「坂田さん」という女性の話が出てきます。
私は昔、児童の入所施設で子どもたちの支援をしていたことがあります。だから、この記事を読んで感じたことを書いてみます。
「施設育ち」と呼ばれる|児童養護施設で育つ人生を知っていますか?
0歳から児童養護施設や里親の家で暮らすってどんなこと?
坂田さんは0歳から施設で暮らし、児童養護施設や里親の元などを転々としてきた。(熊本日日新聞 2021.2.16)
わたしの想像を絶すると感じます。親と暮らしたご記憶はまったく無いことでしょう。
「普通」は「子どもはお父さんやお母さんが育てるもの」と思う人が多いと思います。でも、そうじゃない場合もあって、例えば児童養護施設や里親という制度があるんです。
言葉で説明するのは簡単ですが、本人にとってはその人生は「普通」とは違うことばかりだったと思います。
小学校の授業参観では、クラスメートの親の顔が並ぶ中、自分だけは「施設の先生」で寂しい思いをした。(熊本日日新聞 2021.2.16)
やっぱり寂しかったでしょうね・・・。
私も、入所施設の子どもたちの授業参観や、入学式・卒業式に「施設の先生」として、お父さんやお母さんの代わりに出席したことがあります。
一生に一度の機会なのに、親ではない私だけがつきそって。何とも言えない複雑な気持ちになりました。
「どう思っているのかな・・・」と気になっても、子どもには聞けなかったんですよね。
「施設の先生」として入学式に行ったこと
私が30歳過ぎの時、児童の入所施設で子どもたちの支援をしていました。
ある4月初旬。私が新しく担当することになった子どもの入学式に、「担当だから」ということで出席することになりました。
入学式の前日に、私はその子と初めて会いました。そして翌日の入学式を迎えたのです。
「普通」のお父さんやお母さんは、今までの子育ての喜びや苦労を振り返って、感動したり泣いたりすることでしょう。実際、涙を流す人もいました。
でも、私は「施設の先生」でした。その子と一緒に過ごしたこともなく、子育ての喜びや苦労もありませんでした。
泣いたり、笑ったり、喜んだり。心が動く人の多い入学式の場内で、私はとても冷静にその子を見ていました。
このような私が、その子の「人生で一度の入学式」を見守っていること。その子の人生を考えると、かわいそうな気持ちになりました。ごめんね、と思いました。
「施設の先生」はすぐいなくなる
「施設の先生」は仕事なので、担当が変わったり、異動や転職や退職したりすると、すぐに関係が切れてしまいます。
子どもが施設を出るときも、関係は切れやすいです。施設を出た後の子どもにも相談に乗ったりすることはありますが、「なじみのある施設の先生」がずっとその職場にいるとは限りません。
施設を出た子どもが大切に思うのは、「施設そのもの」ではなく、「なじみのある施設の先生」です。「久しぶり!」って言える人が必要なんです。
世間では年末年始・グールデンウィーク・お盆には、「帰省ラッシュ」がいつも起こりますが、彼らには帰る場所が無いこともあります。
施設という「入れ物」は残っていても、中にいる人はカンタンにかわってしまうからです。
「20歳まで生きててよかった」の意味
「20年間、つらいことばかりだったけど、こんなに多くの人に祝福されて、本当にうれしい」(熊本日日新聞 2021.2.16)
この言葉から、彼女の今までの人生の大変さが伝わってきます。どれだけ、「生きる」ということが苦しくて、辛くて、孤独だったかがわかります。
「生きる」ということに疑問を持たない人は多いと思います。でも、愛情や関心を十分にもらえないと、「生きる」はとても厳しいミッションになります。
そんな環境でも、強く「生きる」ことを選び続けてきたんだと思います。
記事は成人式という、普段と違う特別な日を切り取ったものです。「愛に包まれ」と祝福されていますが、普段はそんなに華やかじゃなくて、”愛”を疑うこともあったでしょう。
これからもまた、苦しいことや辛いことや孤独なことがあるかもしれません。(私の人生も同じです)
でも強く生きていく、新成人になった彼ら・彼女らのこれからの人生に応援を送りたいです。どうか元気でがんばってください!
関連記事コーナー
児童指導員とは、親の代わりに子どもたちの生活や心を支える仕事です。でも、その仕事はとても大変です。この記事では、児童指導員の仕事が厳しい12の理由を紹介します。例えば、給料が安い、残業が多い、人間関係が複雑などです。児童指導員に興味がある人は読んでみてください。
児童指導員の仕事は大変ですが、やりがいもあります。この記事では、児童指導員のやりがい・魅力TOP5を紹介します。例えば、子どもたちの成長を見守ること、子どもたちから感謝されること、自分自身も成長できることなどです。児童指導員になりたい人や悩んでいる人は参考にしてくださいね。
コメント