社会福祉士や精神保健福祉士として働く人なら、一度は感じたことがあると思います。
「同じ福祉職なのに、なぜ民間と公務員でこんなに年収が違うのか?」と。
福祉の現場では、民間の職場は年収300〜400万円台で推移するのが一般的です。
一方、公務員として働く福祉職は、安定した給与と手当がつき、同じ資格でも年収に100万円以上の差が生まれるのが普通です。
この年収格差は、単なる数字の問題ではなく、福祉職全体の構造と未来を映す鏡かもしれない――。
この記事では、私自身の経験をもとに、社会福祉士・精神保健福祉士の民間と公務員の年収格差のリアルと今後を考えていきます。
そもそも福祉職の給与水準はなぜ上がらないのか

根本的には、「福祉の仕事の賃金を上げるべき」という国民的な意思がまだ弱いのだと思います。だから、改善につながる政策もなかなか進まない。
政治の世界では、国民の理解を得られない政策を打ち出した政治家は当選しにくい。
「余計な金をバラまいている」となれば糾弾され、落選する。
言ってしまえば、それが現実であり、単純な構造です
現状を見ると、高齢、障害、児童のいずれの分野でも、特に民間の福祉職場では年収300~400万円台が一般的です。(※詳しくは下記記事)
一方で、「やりがいを美徳とする文化」や「自己犠牲を求める風土」も残っています。
その結果、有給が取りにくい・サービス残業が多い・私生活を犠牲にせざるを得ない
――そんな現場も少なくありません。
奨学金を借りている大学生は二人に一人。
卒業・就職後も奨学金(借金)の返済に追われます。
この構造を、私は以前「やりがい搾取と労働組合」という視点からも書きました。
公務員福祉職として働いて分かった「リアル」
私自身、民間の福祉職場で働いた後、今は自治体の公務員として勤務しています。
正直に言えば、公務員=安定・ホワイトというイメージは、半分は誤解です。
公務員福祉職、行政処分など人の権利を制限する重い仕事を担うため、責任は増します。
そして、想像以上に泥くさい。残業も多く、休暇も簡単には取りづらい。
それでも、給与や年収は民間時代より格段に上がりました。
自治体の福祉職は、平均的に見ても上位水準に入ります。
また、残業の申請もきちんとできるようになりました。
(民間時代は「残業申請書を見たことがない職場」もありました…)
背負う責任・権限が大きいからこそ感じられる、第一線の緊張感とやりがいはあります。
それでも人が集まらない「公務員福祉職場」
とはいえ、公務員福祉職の人材不足は深刻です。
その代表が、児童相談所の児童福祉司。
国は増員を進めていますが、実際には定員割れが多発しています。
では、なぜ人が集まらないのか?
まず、児童相談所の仕事の過酷さは周知の事実です。
その負担の大きさは、自然と人を遠ざけてしまうほどのレベル。
給与が民間より高いからといって、気軽に飛び込める仕事ではありません。
さらに、自治体側も「誰でもいい」というわけではありません。
採用試験では、一定の水準・能力・経験が求められます。
現場では、正直なところ、
「扱いに困る人を採用するくらいなら、採らない方がいい」という声もあります。
冷たい言い方に聞こえるかもしれませんが、これが現場のリアルです。
だからこそ、定員割れでも“不採用”が起こる。
そして、その結果、ますます人が集まらない状況が続いているのです。
民間福祉職場のリアル:人が育たない、続かない
一方の民間福祉職場では、さらに人の入れ替わりが激しい。
例えば私の知る児童養護施設などでは、情報共有・スキルアップ・子どもとの関係形成のすべてに影響が出ています。
私もそうした現場で働いてきました。
”3年働いたらベテラン”なんでいう職場もありました。
3年も人が続かないのです。
加えて、私が辞めた民間の福祉職場のその後を聞くと、人材の流出に歯止めがかかっていないようです。
民間福祉職場では、「人が育つ前に辞めてしまう」ことが重大課題です。
だからこそ、給与・年収の改善は欠かせません。
福祉の仕事はボランティアではなく、労働契約のもとにある専門職です。
正当な対価を得るべき、というのが私のスタンス。
もっと声を大にして良いと思うんですよね。
もし民間福祉職の給与が公務員福祉職並みに上がったら?

ここで少し想像してみたい。
もし民間の福祉職場の給与・年収が、公務員と同じレベルに上がったら――?
私は、公務員職場から民間への流出が起こると思います。
なぜなら、「給与が同じなら、自由に職場を選びたい」と考える人が多いからです。
そしてそれは、行政側にとって不都合な現象です。
公務員福祉職も人手不足。そこへ民間が本気で人を取り始めたら、公務員の人材確保競争に負ける可能性がある…。
もしかすると、「民間の給与を上げづらい空気」には、そうした政治的・構造的な背景があるのかもしれません。
民間福祉職の給与を上げるなら、公務員福祉職の“別の魅力”が必要
民間が同等の報酬水準になったとき、福祉職公務員の採用はどうあるべきか?
私は、仕事内容以外の魅力(働き方・福利厚生・学びの機会など)を磨く必要があると考えています。
でなければ、行政サービスの質が低下するリスクすらあるでしょう。
看護師との比較から見えてくること
看護師は、民間の医療法人でも、公立病院でも働くことができます。
これは、私たち社会福祉士・精神保健福祉士と同じ構造です。
ただし、看護師が公務員として働く場合と民間で働く場合の格差は、福祉職ほど大きくありません。
(公社)日本看護協会が実施した調査では、次のような結果が示されています。
看護師:初任給
看護師:勤続 10 年、31~32 、非管理職の給与(モデル賃金額)
確かに、国・公立・公的医療機関の給与水準はやや高めですが、
それ以外の医療法人や施設との格差は福祉職と比べると小さいのが現実です。
一方で、社会福祉士の場合、民間と公務員で年収に約144万円の差があります。
精神保健福祉士でも、約143万円の格差です。
この数字を見ると、福祉職の世界では“構造的な給与格差”が依然として大きいことがわかります。
福祉職も「選ばれる職場」へ
看護師や医師にとって「公務員」という立場は、給与だけでなく、安定・労働環境・使命感など複数の要素で選ばれていると考えられます。
福祉職公務員も、この構造を目指せるのではないでしょうか。
もちろん、看護業界にも課題は多く、「前に習え」と単純に言うことはできません。
それでも、見習える部分はあると思います。
民間福祉職の給与水準を上げるだけでなく、働く意義や環境面での魅力をセットで高めることが重要です。
公務員福祉職の現場にも課題がある
たとえば、公務員福祉職の代表である児童福祉司の現場。
給与面では恵まれていても、過酷さや心理的負担が大きく、魅力を感じにくいという声は少なくありません。(私のネガティブな声がこちらの記事)
この厳しさこそが、人材確保を難しくしている最大の要因だと思います。
おわりに:課題は長く、でも無関係ではいられない
もしかしたら「あなたは公務員だから、どこ吹く風じゃないの?」と言われるかもしれません。
でも私は、この構造の中で公務員を選ばざるを得なかった一人です。
転職理由の1番は、給与や年収の不安・不満にありました。
もし今でも民間の福祉職の給与が公務員並みになったら、正直「転職」という言葉が頭をよぎるでしょう。民間の仕事に魅力は相当あったのです。
長年指摘されながらも改善の乏しいソーシャルワーカーや福祉職の年収問題。
そして生じる民間と公務員福祉職の年収格差。
これは、業界全体の信頼や持続可能性に関わるテーマだと思います。
関連記事:自分に合う職場を見つけたい人へ
「私たちの人生は待ったなし」
不合理な社会。
その構造の改善を待っているあいだにも、私たちのライフステージは進み続けます。
後戻りはできません。
ここまで読んで、「自分に合った働き方をもう一度考えたい」と感じた方もいるかもしれません。
ソーシャルワーカーの仕事は、職場によって給与・人間関係・ステップアップの機会が大きく変わるのが実情です。
私自身も、これまでに2回の転職を経験しています。
その経験を踏まえて、転職をどう考え、どう進めていけばいいのか。
次の記事で、私の考えをお話しします。












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