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ソーシャルワーク

ケースワークで誰かを悪者にしても課題は解決しない|社会福祉士が大切にしている視点

ケースワークで誰かを悪者にしても課題は解決しない|社会福祉士が大切にしている視点
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ケースワークで、私が大切にしていることがあります。

誰かを悪者にしても、課題は解決しない。

これは、社会福祉士や精神保健福祉士、児童福祉司としてケースワークをしてきた中で、経験として感じていることです。

「あの人が変わってくれたら、うまくいくのに」

「父親が悪いから、このケースは変わらない」

「関係機関がきちんと対応しないから、どうにもならない」

支援をしていると、そう感じることがあります。

私自身も、何度もそう思ってきました。

ただ、誰か一人を悪者にしても、ケースが動くとは限りません。

むしろ、その見立てに支援者自身がはまり込むことで、見えなくなるものがあります。

誰かが変わらないことに腹が立つ。

特定の人や機関に原因があるように感じる。

そのような経験がある方には、この記事がケースを別の角度から見直すきっかけになるかもしれません。

もちろん、責任の所在を曖昧にしてよいという話ではありません。

虐待など、はっきりと「それはしてはいけない」と伝えなければならない場面もあります。

ただ、誰か一人を悪者にして、その人だけを変えようとしても、家族の問題はなかなか解決しません。

筆者:ぱーぱす(社会福祉士・精神保健福祉士)
自治体で働く現役ソーシャルワーカー。児童相談所などで十数年の実務経験あり。
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この記事を書いた人

片方の話だけを聞くと、もう片方が悪者に見えてくる

例えば、夫婦関係について相談を受けることがあります。

  • 夫婦喧嘩が多くて困っている
  • 夫が家事や育児をしてくれない
  • 夫から、こんなことを言われた

相談者から繰り返し話を聞いていると、支援者としても、だんだん夫が悪いように見えてきます。

夫がもう少し変わってくれたら、家庭の雰囲気もよくなるのではないか。

夫が家事や育児をしてくれたら、妻にも余裕ができるのではないか。

そう考えて、妻の話を代弁するような形で、夫に変化を求めることがあります。

「もう少し家事をしてください」

「育児に参加してください」

「奥さんの気持ちも考えてください」

ただ、これがうまくいかないんですよね。

夫には、夫から見た家庭のストーリーがあります。

夫なりの事情や正しさもあります。

妻の話だけを聞いていたときには見えていなかった不満や負担が、夫側にもあるかもしれません。

どちらか一方だけが問題なのではなく、お互いの言動によって、今の関係が保たれていることもあります。

それが、家族のシステムなのだと思います。

「あなたが変われば解決する」では、元に戻りやすい

支援者が夫を説得して、一時的に家事を増やしてもらう。

育児に積極的に参加してもらう。

それによって、一時的に家庭が落ち着くことはあります。

ただ、本人が納得していなければ、長くは続きません。

しばらくすると、また元の状態に戻ってしまいます。

いわゆる揺り戻しです。

支援者から言われたから、仕方なくやっている。

妻が相談したから、自分だけが責められている。

そう感じている状態では、その家庭なりのやり方として定着しにくいと思います。

だから、夫だけに「変わってください」と求めるのではなく、家族としてこれからどうするのかを考えてもらう必要があります。

支援者が正解を提示して、それに家族を乗せればよいわけではありません。

支援者が決めた答えに従わせるだけでは、自分たちで生活を立て直す力にはつながりにくいからです。

それぞれが自分たちの課題に気づき、自分たちなりの方法をつかみ取れるようにする。

そのために質問したり、投げかけたり、一緒に整理したりする。

それがケースワークでの支援だと、私は考えています。

子どもを悪者にしても、親を悪者にしてもうまくいかない

子どもの養育や非行、不登校などの相談でも、同じことが起きます。

親からすれば、

  • 子どもが言うことを聞かない
  • 何度注意しても同じことをする
  • この子が問題を起こすから、家庭が崩壊しそうだ

という話になることがあります。

そこで支援者まで一緒になって、

「子どもが悪いですね」

「本人が反省しないといけませんね」

という方向で進めても、あまりうまくいきません。

子どもには、子どもの事情があります。

子どもから見れば、親に対する不満や怒りがあることも少なくありません。

本人なりに耐えてきた結果として、問題行動が起きていることもあります。

では、親が悪いのか。

親を批判すれば解決するのか。

それも違います。

親にも、これまでの生い立ちがあります。

自分が育てられてきた方法の積み重ねがあります。

経済的な問題や仕事の負担、夫婦関係、孤立など、簡単には動かせない事情を抱えていることもあります。

子どもが成長すれば、子ども自身の課題も出てきます。

親だけが変わればすべて解決するほど、単純ではありません。

親にも子どもにも、それぞれの事情があります。

その結果として、家族全体がにっちもさっちもいかなくなっている。

そういう家庭は、実際にあります。

ただし、虐待の責任まで曖昧にしてはいけない

児童相談所では、虐待について指導しなければならない場面があります。

そのときは、ある意味ではジャッジする立場になります。

どのような背景があったとしても、虐待をした行為については、親の責任です。

そこは言い切ります。

「親を悪者にしない」という言葉を使って、虐待の責任まで曖昧にしてはいけません。

虐待した行為については、親が悪い。

子どもに責任を負わせることはできません。

ただし、虐待には背景があります。

  • 親自身の被虐待経験
  • 親の育ちや家族関係
  • 発達や認知などの特性
  • 経済的な困窮
  • 夫婦関係の不和
  • 周囲からの孤立
  • 子どもの育てにくさ

さまざまな背景やプロセスを経た結果として、虐待が起きています。

だからといって、「事情があるから仕方ない」とは言いません。

事情は事情としてくみ取る。

虐待行為の責任は責任として伝える。

その両方が必要です。

親に向かって、ただ「あなたが悪い」と言い続けても、虐待が改善するとは限りません。(それだけで改善するケースは、児童相談所にはやってきません)

親を断罪するだけでは、背景にある問題は残ります。

親が孤立したままなら、また同じことが起きるかもしれません。

経済的な困窮や夫婦関係の問題が続いていれば、家庭の負担も変わりません。

行為の責任を親に求めることと、親を悪者にして終わることは別です。

親にも子どもにも、親族や関係機関にも関わりながら、家族として何を変えられるのかを考える必要があります。

人は、ままならない状況の中で生きている

人の生活は、思うようにはいきません。

外から見れば、

  • あの人は手を抜いている
  • もっとできるはずなのに、怠けている
  • 本人にやる気がない

と思うこともあります。

ただ、大人が働きながら家事をして、子どもを育て、日々の生活を回していく。

生活状況によっては、それだけでもう余裕がありません。

それぞれに背景があり、理由があり、どうにもならなさがあります。

だからといって、何をしても許されるわけではありません。

人を傷つけた行為や、子どもの安全を脅かした行為には、責任を求める必要があります。

それでも、本人を断罪すれば生活が立て直されるわけではありません。

「この人さえ変われば、すべてうまくいく」

そう期待すること自体が、現実的ではない場合もあります。

本人を変えるより、環境を変えたほうが早いこともある

本人が自分の課題に気づき、自分から変わろうと思えることは大切です。

ただ、それには時間がかかります。

自分の問題に気づくこと自体が、かなり高いハードルになる人もいます。

気づいていても、変えられないこともあります。

児童相談所の支援では、本人の内面が変わるのを待つよりも、サービスや社会資源につなぐほうが現実的なことも多いです。

家事や育児の負担を減らす。

子どもが家庭の外で過ごせる場所をつくる。

経済的な支援につなげる。

親族や関係機関にも協力してもらう。

家庭の中だけにアプローチせず、環境のほうを変えていく。

本人を無理に変えようとするよりも、そのほうが早く生活が安定することもあります。

クライエントを変える前に、支援者側がやり方を変える

支援がうまくいかないとき、クライエント側の問題にしたくなることがあります。

「話が通じない」

「本人にやる気がない」

「何度言っても変わらない」

そう感じる場面は、実際にあります。

私自身も、そういう見方になってしまうことがあります。

ただ、そこで一度、支援者側のやり方も振り返る必要があります。

伝え方は適切だったのか。

相手が理解できる形で説明していたのか。

こちらが考えた正解を、押しつけていなかったか。

相手に求める変化が、大きすぎなかったか。

別の人から伝えたほうがよかったのではないか。

サービスや環境を変える方法はなかったのか。

クライエントを無理に変えようとする前に、こちらがアプローチを変えてみる。

その姿勢は、ケースワークをするうえで大切だと思っています。

福祉は、誰かを裁いて終わる仕事ではない

警察や司法、裁判では、責任を明らかにし、判断を下すことが必要です。

社会の中には、そうした役割も必要です。

ただ、福祉の役割は、それとは少し違います。

誰が正しいのか。

誰が悪いのか。

それを決める仕事ではありません。

責任を曖昧にするわけでもありません。

必要な指導や注意はします。

虐待行為については、明確に責任を伝えます。

そのうえで、これからどう生活を立て直すのかを考えてもらう。

本人や家族ができることを探し、難しければ、サービスや環境で補う。

支援者側も、自分たちの関わり方を振り返る。

誰かを悪者にすることではなく、何が起きていて、これから何を変えられるのかを考える。

それが、大人を対象にしたケースワークの基本だと、私は考えています。

もちろん、これが絶対に正しいと言いたいわけではありません。

ケースによっては、厳しい対応が必要なこともあります。

ただ、誰か一人を悪者にする見立てになったときは、本当にそれで課題が解決するのか、一度立ち止まって考えたほうがよい。

私は、そう意識しながらケースワークをしています。

この記事を書いた人
ぱーぱす

自治体で働く社会福祉士・精神保健福祉士|現場経験15年、地域・医療・行政の3つの立場を経験。ブログ歴6年、記事約400本。福祉職のキャリアや生活に役立つ実践的な情報を発信しています。

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