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福祉職の思考・スキル

ソーシャルワーカーのアセスメント精度は“一次情報”で決まる──事実から始める支援

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支援は、思い込みから始めてはいけない。

目の前の言葉が「事実」なのか、
誰かを通った“解釈つきの情報”なのか。

それを見誤ったまま進める支援は、
どれだけ善意であっても、どこかで歪みます。

私はこれまで、
情報の扱いを甘く見て、判断を誤りかけた経験があります。

児童福祉司の仕事は、ときに人の自由を制限する重い判断を伴います。
だからこそ、「何が本当に起きているのか」を確かめる姿勢が土台になります。

一次情報と二次情報の違いを意識すること。
誰の言葉で、どの層の情報なのかを見極めること。

支援は、事実から始める。
今回は、その原点についてお話します。

書いた人:ぱーぱす(社会福祉士・精神保健福祉士)
自治体で働くソーシャルワーカー。児童相談所などでの実務経験をもとに発信。
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事実を知ることが、支援の出発点

ソーシャルワーカーのアセスメントは、まず“事実を知ること”から始まります。
私自身、おろそかにして失敗しかけたことがあり、その大切さを身にしみて感じてきました。

特に児童福祉司の現場では、正確な事実の把握なくして支援方針や行政判断を行うことはできません。
それだけに、どれだけ丁寧に情報を扱えるかが支援の質を左右します。

一次情報と二次情報の違いについて

一次情報とは、情報源から直接得た情報のことを指します。

たとえば、あなたが母親だとします。
息子が帰宅してこう言いました。

「お母さん、パパがさ、“明日ディズニー行くぞ!”って言ってたよ!」

驚いて夫に確認すると、

「いや、“行けたらいいね”って言っただけだよ」

……このとき息子の言葉は二次情報であり、夫本人から聞いた「行けたらいいね」が一次情報です。

人をひとり挟むだけで、意味も温度も変わってしまう。
現場でも、それはよくあることです。

かつて流行した「伝言ゲーム」は、この違いをわかりやすく示しています。
人を介すたびに情報は少しずつ変わっていきます。

「専門職だから正確に伝えてくれる」とは限りません。
人は誤解し、解釈し、時に都合よく伝えるものです。

感情──動揺、怒り、不安などによっても、伝わり方は大きく変わります。
情報が「0か100か」の極端な形で伝えられてしまうことも少なくありません。
この前提を踏まえてアセスメントに臨むことが大切です。

一次・二次・三次情報とは

現場で扱う情報は、おおまかに次の3種類に整理できます。
例えば、本人・当事者の意向を確認したい場合、次のように整理できます。

種類情報源特徴注意点
一次情報本人・当事者もっとも真実性が高い。実際に確認・観察できる「生の事実」。聞き方や関係性によって内容が変化することがある。
二次情報家族・関係機関など一次情報を聞いた誰かの解釈や要約を含む。無意識のバイアス、意図的な修正が入りやすい。
三次情報噂・SNSなど誰の発言か曖昧。文書であっても真実性は保証されない。誤情報の可能性あり。

今扱っている情報がどの層にあるのかを、常に意識するようにしたい。

二次情報を頭ごなしに否定する必要はありません。
「信じてくれないんですか?」と関係がこじれるリスクがあるからです。

それでもソーシャルワーカーは、二次情報や三次情報だけで判断してはいけません。
アセスメントの精度は、“一次情報にどれだけ近づけるか”で決まる
――それくらいの意識で臨むことが大切です。

情報を軽視した支援は、誤った判断につながる

一次情報の確認を怠ると、判断を誤ることがあります。

児童相談所の業務では、一時保護の継続・入所措置・解除など、重大な決定を行います。
個人の自由を制限する、重い判断です。

子どもを一時保護された保護者が「子どもを引き取りたい」と希望しても、
家庭の実情を隠している場合があります。

たとえば、家庭内で体罰を行っていた加害者である同居人について、
家族が「もう関係ない」「児相が会わなくても大丈夫」「体罰はもうしないと言っている」と伝えてくることがあります。

しかし、それらはあくまで二次情報であり、本人の意向とは限りません。

私もこれまで、直接本人に会って話したところ「まったく違う答えが返ってきた」という経験を何度もしてきました。
情報操作の意図がある場合ほど、児相との面接を拒むこともあります。

人は嘘をつき、情報を隠し、時には操作します。
それは悪意からとは限りません。
子どもや親だけでなく、関係者や学校の先生でも同じことが起こります。

ソーシャルワーカーは「事実を積み上げる」仕事

ソーシャルワーカーの仕事は、事実を積み上げること
それは児童相談所に限りません。

私がかつて働いていた相談支援事業所で、上司からこう言われたことがあります。

「精神保健福祉士は、事実を積み上げる仕事ですよ。」

この言葉はいまの児童福祉司としての仕事にも生きています。

実際に何が起きているのかを把握するためには、
クローズド・クエスチョン(はい・いいえで答える質問)を重ねるよりも、
オープンな質問で話を引き出すことを意識しています。

たとえば、

「何があったのか、最初から最後まで教えていただけますか?」
「それから?」
「そのあとどうなりました?」

このように尋ねることで、情報量が増えるだけでなく、こちらの質問意図に相手が引きずられて内容がねじ曲がるリスクも減らせます。
十分に語ってもらったあとで、必要な部分だけをクローズド・クエスチョンで確認します。

事実を確認したいからといって、こちらのペースで取り調べのように進めてはいけません。

「お前がやったんだろう! 吐け!」

そんな、昔の刑事ドラマで見たようなシーンの再現はいらないのです。

私たちが行うのは、尋問ではなく対話
その対話の中から、事実を見つけていくことが支援の第一歩になります。

一次情報に触れる労力を惜しまない

一次情報に触れることは、手間も時間もかかります。
しかし、アセスメントの精度を高めるうえで欠かせないものです。

今、あなたが得ている情報が一次か、二次か、三次か――。
それを意識しておくことが、支援の土台を守ることにつながります。

二次情報・三次情報を鵜呑みにして支援を進めると、
後から「話がまったく違った」という事態になりかねません。
“本人の意思を直接確認したら、まるで違う内容だった”ということも、決して珍しくありません。

見立てる人を見立てる――アセスメントは関係者や情報提供者にも及ぶ

私たちはクライエントだけでなく、関係者や情報提供者そのものを“見立てる”必要があります。

「この人の見立て力はどのくらいあるのか」
「どんな立場や思惑があるのか」
そうした視点をもって情報を読むことが求められます。

つまり、“見立てる人への見立て”もアセスメントの一部なのです。

学校、医療、親族、関係機関――。
それぞれの立場や関係性を想像する力が、ソーシャルワーカーの強みになると思います。

目に見えない壁や緊張関係、空気の重さを感じ取り、
その背後を想像力で描いていく。

正解でなくてもかまいません。
その思考と試行の積み重ねこそが、アセスメント精度の上達につながると思います。

支援は「事実」から始める

事実を軽んじた支援は、どれだけ進めても土台から揺らいでしまいます。

事実から始めない支援は、砂上の楼閣にすぎず、いずれ崩れ去る。

だから、支援は、事実から始めること。
事実にこだわること。
二次情報・三次情報はうのみにしない。一次情報を取りに行く。

これは、私が現場で何度も痛感してきたことであり、今も大切にしている視点です。

参考・関連リンク

この原稿を書いたあと、ソーシャルワーカーのアセスメントについて検索していたところ、
横山北斗さんのnote記事
アセスメントの根拠となる“情報”について考えてみた
に出会いました。

拝読してみると、私が言いたい内容と近い部分が多く、驚きました。
横山さんの記事はとても示唆に富んでおり、アセスメントを深く考えるうえで参考になると思います。

この記事を書いた人
ぱーぱす

自治体で働く社会福祉士・精神保健福祉士|現場経験15年、地域・医療・行政の3つの立場を経験。ブログ歴6年、記事約370本。福祉職のキャリアや生活に役立つ実践的な情報を発信しています。

詳細プロフィールはこちら

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