児童相談所で働く児童福祉司の仕事内容は、外から見ると分かりにくい仕事かもしれません。
家庭訪問、ケース会議、学校との連携、保護者支援など、日々の業務は多岐にわたります。
その中で、子どもたちの卒園式や卒業式に出席することもあります。
単なる式典への参加ではなく、子どもや家族との関係、そして児童相談所としての判断の重さを改めて感じる時間でもあります。
今回は、児童福祉司として卒園式に出席した日の私の気持ちについて書いてみたいと思います。
児童福祉司として、卒園式に出席するということ
児童福祉司として仕事をしていると、担当しているケースの子どもたちの成長に伴い、卒園式や卒業式に出席することがあります。
保護者の代わりとして出席する場合もありますし、保護者のお目付けのような形で出席する例もあります。保護者の様々な対応のためということで同行することもあります。
子どもとの関係性、面会、交流のあり方などによっても、児童福祉司の判断基準や対応方法は様々あるでしょう。
私自身、児童の入所施設で働いていた頃も含めると、世間の保護者さんが経験するより多くの入学式・卒業式に出席してきました。
児童福祉司になってからは、もっと低年齢の子どもたちの卒園式にも出席することがありました。
式典に臨むときの立場
普段はもう少しラフな格好をしていますが、そうした機会ではさすがにしっかりとしたスーツを着て、保護者の皆さんと変わらぬ服装でその場に臨みます。
ある意味、保護者だと思ってもらえるような なり を心がける。
保護者が来ない子どもの気持ち、周りの子どもへの手前を考えてのことです。
ただ、親代わり等と自称するのは、とてもおこがましいと思っています。
そんなことを言えるほどの立場でもありませんし、年数が経てば私はすぐにその子の前から離れていく存在です。
里親や特別養子縁組の立場であれば違うとは思います。
しかし児童福祉司を含め、施設で働く職員の立場というのは、親代わりというには、どこか距離のあるものだと私は考えざるを得ません。
それは私自身がそうした施設で働いた経験があるからこそ思うことであり、決して誰かを批判したいわけではありません。
卒園式で涙を堪えられなかった理由
私がある子どもの卒園式に出席した時のことです。
そのとき、図らずも私は涙を堪えられませんでした。
なぜだろうと自分でも思いました。
もちろん、子どもの成長というのはうれしいものです。
何年か関わっていると、卒園式は「ここまで成長したのか」と思う瞬間です。
また、自分自身の人生としても、「もし我が子だったらどうだろう」と思いを巡らせる機会でもあります。
しかし、私が涙を堪えられなかった理由は、別のところにありました。
「家に帰してあげられなくてごめん」という気持ちでした。
家庭復帰を望んでいたケース
そのケースは、私が家庭復帰に向けて取り組みを続けていたケースでした。
本人もそれを望んでいました。
家族も望んでいました。
私も、望んでいました。
しかし、とある理由があり、それを実現できなくなりました。
だから児童相談所は、私は、冷たい判断をしなければなりませんでした。
「まだ家庭復帰はできない」
そう決めました。
その子は卒園し、来年度から小学校に入学する。
家庭復帰を望んでいる家族も出席している式典。
その家族が目の前にいる。
それでも、その家族のもとへこの子を戻してあげることはできない。
もちろん家族には課題があります。
その時期において、それが大きな課題でした。
しかし現実として、家庭復帰を支援していたはずなのに、実現できなかった。
その自分自身への苛立ちもありました。
そして、大人たちの事情など関係なく、子どもの素直な願いと悲しみと怒りというものは、とても強く胸に響きます。
簡単に受け止めきれるものではありませんでした。
児童福祉司という仕事
児童福祉司というのは、こういう仕事なのだと思います。
時に子どもから嫌われ、憎まれ、
「あなたが悪い」
「どうして家に帰してくれないの!」
と思われることもあります。
家に帰れない理由をありのままに話すことは、はばかられる。
子どもの理解力に合わせて、考える必要があります。
その一方で、
保護者からは、「なぜ引き取れないのか」と責められることもあります。
しかしそれでも、「これでは子どもが安全に暮らせない」と見立てたときには、その現実と向き合い、言葉を返し、対応をしていかなければなりません。
それが児童福祉司の仕事です。
私は、児童福祉司の仕事が笑っていられる仕事だとは思いません。
共感性のある人間であれば、その体験の数々には傷つきが伴うと思います。
これが児童福祉司という仕事の現場であり、リアルな感情の動きなのだと思います。
どなたかの参考になれば幸いです。
私は子どもが健やかに育つことを願っていますし、これからも、そうなるように支援をしていきたいと考えています。



コメント